2017.09.29
私たち、騙された? Vol.1美貴は、都内の中高一貫の女子校を卒業後、慶應の経済学部に進学した。父は商社マン、母は専業主婦だ。父の仕事の関係で幼いころはアメリカにいたので、英語も不自由なく喋れる。
美貴の勤める商社の一般職の女性たちは大抵こんな経歴で、いわゆる“良家のお嬢様”という人種が多い。
派手さはないが落ち着いた物腰は、そこらの“にゃんにゃんOL”には到底及ばない、知的で楚々としたオーラを醸し出している。
美貴は就職活動のとき、当然のように大企業以外は受けなかった。
そして“大企業”という前提のもと、有名企業・人気企業であればあるほど良いと考えていた。
数社内定が出たあと、最終的には2社で悩んだ。大手電機メーカーの総合職と商社の一般職だ。
商社は総合職ではなく、一般職でエントリーした。商社の総合職の女性比率は当時、10%から15%ほどの狭き門だったのである。
今でこそWLBを声高に謳っているが、美貴が就職活動していた5年前、商社の総合職は男社会でハードワークというイメージが強かった。
一方、大手電機メーカーは「仕事と家庭の両立」をアピールしていたし、女性比率も商社より高かった。
しかし最終的に決め手となったのは、両親の反応だ。今の商社に内定をもらったとき、両親は大喜びしてこう言った。
「ここの商社に内定が出るなんて、さすが私たちの娘だわ」
ブランド力がBランクのメーカーより、Sランクの商社を選んだ方が正解だ。両親の反応を見て、美貴はそう受け止めたのだった。
昔から両親の期待に応えて人生を決めることに、あまり疑問を抱かなかった。
そして当時の選択は、今でも決して間違ってはいなかったと思う。
一般職だが安定した給料をもらい、同じような経歴を持った優秀な同僚に囲まれている。
それに何より「大手総合商社勤務」という肩書きは、自分のプライドを存分に満たしてくれるのだ。
だから当然のように、恋愛対象になる男性の勤務先は、ブランド力のある大企業に絞られてくる。
誰もが知るメガバンク勤務である優太は、その点パーフェクトだ。
―今日もまた、上司から飲みに誘われた。。行ってくる。
優太からのLINEが立て続けに届く。彼の勤める銀行は、年功序列が厳しいことで有名だ。特に今の上司は体育会系で、基本的にはその誘いを断れないようだ。
出会ったとき、基幹店の法人営業に異動したての優太は生き生きと働いているように見えたが、最近は会社への愚痴が多い。
―今日も大変だね。がんばって。
美貴はそう返信し、杏奈との会話に戻った。
◆
翌日の土曜日、美貴は表参道に向かっていた。
大学時代の友人であるエミリと、表参道の『ラス』でランチの約束をしていたのだ。
美貴は、エミリに会うのを楽しみにしていた。エミリは美貴とは正反対の“自由人”で、大学卒業後はベンチャー企業に就職。つい最近、赴任先のシンガポールから帰ってきたばかりで、久々の再会なのだ。
大企業=一生安泰という神話が崩れ出したのも最近の話ではないと思いますが。
一体いつの時代のお話なのでしょう。
皆さん、21歳、22歳の大学卒業生が、どれだけ安定志向で、有名企業、大企業にはいりたがるか、わかっていらっしゃられない。
昔より悪化してますよ?
既に社会人生活を長く送られてる皆さんの言っていることは、正論ですが実態と離れてる。
一流大学の若者の就職活動の現場は、地獄の安定志向、護送船団ムードです。
私は、教育に携わるものとして、危機感を感じ...続きを見るている中、この連載が始まったのは、実にリアルで期待をしました。
東カレで、東大の松尾先生と対談した記事を拝見しましたが、松尾先生も警鐘を鳴らされていたと記憶しています。
長文失礼しましたが、改めて、いまの若者は、安定志向、リスク回避型がマジョリティーで、
そんなのいつの時代?と言っている人は、現実が見えてないと思います。
【私たち、騙された?】の記事一覧
2017.12.01
Vol.11
「これが私の生きる道。」刷り込まれた価値観を捨て、自分の人生を勝ち取った元商社OLの未来
2017.11.30
Vol.10
“大企業に入れば、一生安泰”は嘘だった…?「私たち、騙された?」全話総集編
2017.11.24
Vol.9
20代での新しい仕事への挑戦は、婚期を逃す…?キリのない「タラレバ」話に終止符を打った女
2017.11.17
Vol.8
「商社マンである」前提のもと選ばれた男の苦悩と、他人に“理想”を押し付けるのを辞めた女
2017.11.10
Vol.7
エビの輸入に、一生を捧げていいの…!?大手商社に潜む、“背番号制”という配属リスクの罠
2017.11.03
Vol.6
大企業ブランドは、通用しない。“転職=年収ダウン”の厳しい現実に戸惑う大手商社OL
2017.10.27
Vol.5
「“とりあえず”今の会社にいるよ」とくすぶり気味の男を目前に、気づいてしまった本当のキモチ
2017.10.20
Vol.4
女は、ツラいよ。“一般職=お嫁さん候補”時代の3年間を生き抜いてしまった、女達の末路
2017.10.13
Vol.3
逃した魚は、大きかった・・・!?3年で変貌を遂げた元彼に、焦りを感じた商社OL
2017.10.06
Vol.2
私たち、騙された?:年功序列はまだ消えない。雑務を押しつける、40代"お姉さま"の超えられない壁
おすすめ記事
2016.09.15
バルージョ麗子
いよいよ明日で最終話!「バルージョ麗子」全話総集編
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2023.04.11
二世お受験物語
幼児教室を見学した父親が、3歳の息子の様子を見て感じた、ある違和感とは…
2017.10.07
デートの答えあわせ【Q】
2軒目のデート開始30分。彼女が「明日朝が早い」と突然帰宅したのは、ナゼ?デートの答えあわせ【Q】
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2020.12.27
復讐
復讐:音信不通になって3週間。偶然街で見かけた親友の信じられない状況
2021.11.09
推す女
推す女:世帯年収2,500万・豊洲在住のDINKS妻。ある日、結ばれることのない年下男に恋をして…
2018.07.19
東京離婚事情
東京離婚事情:「子供ができない」。残酷な現実に直面した夫婦が下した、苦渋の決断とは
2015.12.19
崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら
崖っぷちアラサー奮闘記:芸能界から捨てられた女の「これが私の生きる道」
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
この記事へのコメント