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いつものように、女性陣と盛り上がる崇を横目に黙々とワインを飲んでいると、隣に座っていた瞳という女が亮介に話しかけてきた。
「亮介さんって、どんな人がタイプなんですか?」
一目で高価だと分かるアクセサリーにノースリーブのワンピース、分かりやすくモテそうな女だと思った。
「好きなタイプか…」
聞かれて答えに困った。
―スペックだけで判断しない女性。
それが本心だったが、そのまま伝えるわけにはいかない。
「常識があって、気配りのできる女性。でもそんなに明確なタイプってないな 」
その場を乗り切ろうと当たり障りのない答えをすると、瞳は「そうなんだ」と呟いたあとにこう言った。
「私は、頭が良くて優しい人。顔は、切れ長の目の人が好き。亮介さん、私のタイプかも」
瞳は亮介の目を覗き込むように見上げ、にっこりと微笑んだ。
自信がありそうな大きな瞳で見つめられるとドキッとしたが、もちろん真には受けない。儀礼的に「ありがとう」と微笑んだ。
すると瞳は意地悪そうな口調で、こう言ったのだ。
「・・・信じてないでしょ?亮介さん、目の奥が笑ってないよ」
そう言って彼女は、涼やかな顔で残っていた白ワインを飲み干した。
◆
マンションに戻り、ぼんやりと考え事をしていると、携帯の通知音が鳴った。瞳からのLINEだった。
―今日はありがとうございました。 海外が長かったみたいですし、良かったら和食でも食べに行きませんか?
瞳は美人で愛嬌があり、印象として悪くなかった。文面からも、それなりに気遣いができる女性なのだろう。
何より「目の奥が笑ってない」と言われたとき、核心を突かれたと思ったのだ。
―こちらこそありがとう。
一瞬考えたのち、続けてこう送った。
―再来週の水曜日は空いてるけど、予定どうかな?
亮介の半年限定の“嫁探し”は、こうして幕を開けた。
▶NEXT:10月19日 木曜更新予定
亮介と瞳とのデートの行方は?瞳は亮介の花嫁候補となるのか?
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この記事へのコメント
そもそも性格や信念やらを深く知り合う時間なんかなく結婚しようとしているじゃないか、亮介。無理だよ。
でもどの連載も朝早くから沢山の人がコメントしてて盛り上がってますね。