亮介は、都内の中高一貫校を卒業後、東京大学理科一類から大学院まで、全てストレートで進学した。
高身長、高学歴、そして社交性はあるので、女性関係は恵まれてきた方だと思う。
就職活動では、同級生たちが外資系投資銀行や大手商社などに就職を決めていく中、亮介はAIの開発を行うドイツのITベンチャーへの就職を決め、ドイツで働くことに決めた。
「海外行きたければ、日本の会社に就職して数年待てば?」
周囲の友人たちは口々に言ったが、亮介は「早くから国外で働きたい」という思いが強かったのである。
しかしその時、思いもよらぬ出来事が起きた。
周りの女性たちの亮介に対する見方が「将来有望な男」から「将来性のない夢見がちな男」と一気に下落し、当時付き合っていた彼女とも気まずくなってしまった(その彼女とはドイツに行ってすぐ、別れてしまった)。
―女性って、分かりやすいスペックしか見てないんだな・・・。
その経験は、当時25歳だった亮介の心に深く刻まれたのであった。
その後、ドイツに行ってからも何人かの女性と付き合ったが、なかなかうまくいかなかった。
ヨーロッパの女性たちは自立している分、自己主張が激しい。また付き合っている間は、彼女を何よりも優先しなければいけないという感覚が亮介には合わなかった。
一方、ドイツにいる独身の日本人女性は、商社マンの豪華な暮らしを知っているため、駐在への憧れが強く、亮介のことは眼中にない。
そんなドイツでの生活を5年送ったあと、亮介はシリコンバレーに本社がある大手IT企業に転職が決まった。そしてビザが下りるまでの半年間、日本支社でのプロジェクトに関わることになったため、一時帰国しているのである。
この半年間が終われば、30代は恐らくアメリカで過ごすことになるだろう。そう考えていた亮介は、あることを決意していた。
―結婚相手を見つけよう。スペック重視じゃない、日本の女性と。
亮介は女性に対してトラウマはあったものの、結婚願望はあった。家庭を持って落ち着き、仕事に集中したかったのだ。
シリコンバレーに行っても、そこで身を埋めるつもりはなく、やがて自分で起業したいと思っていた。“大手IT企業勤務”のステータスはいつか終わる。そのときに、「不安定なのはいや」と離れられては困るのだ。
しかしこの女性に対するトラウマと、半年限定という期間の中で、亮介の「嫁探し」は困難を極めることになる。
この記事へのコメント
そもそも性格や信念やらを深く知り合う時間なんかなく結婚しようとしているじゃないか、亮介。無理だよ。
でもどの連載も朝早くから沢山の人がコメントしてて盛り上がってますね。