SPECIAL TALK Vol.34

~最先端医療とともに既存のルールを破り続け、難病患者の希望になりたい~

「優等生」に違和感を覚え、軽音楽部でロックバンドを組む

金丸:中学はどちらに?

高橋:豊中の隣の池田市にある大阪教育大学附属池田中学校に行ったんですが、すごいカルチャーショックを受けまして。

金丸:それは、どんな?

高橋:言葉が全然違ったんですよ。みんな上品で。最初は新しい環境に緊張してるのかなと思っていたんですけど、いつまでたっても丁寧語で(笑)。

金丸:ほかの子にとっては、それが普通の話し方だったんですね。同じ大阪でも、地域で言葉が全然違いますから。ところで、中学校ではどんな生徒だったのですか?

高橋:優等生ですよ。品行方正で、先生の言うことをちゃんと聞いて、勉強もして。

金丸:私と真逆だ(笑)。

高橋:でも中学の後半あたりから疑問が出てきたんです。これ、自分の中身とちょっとズレてるぞと。

金丸:自分に正直じゃない部分があることに気づいた。

高橋:そうですね。私だって、そんなにいいとこばっかりじゃないのに、優等生を演じているんじゃないかって。

金丸:優等生の人って、自分を出すんじゃなくて合わせていくじゃないですか。先生の言う優等生像に適応させていく、みたいな。僕は自分に正直だったから、いつも怒られてたわけだけど…。

高橋:中学ではバスケットとブラスバンドをやっていたんですけど、そのまま附属の高校へ進学したとき、「今の私は本来の私と違うから、悪くなってやろう」と思って、軽音楽をやったんです。当時流行っていたガールズバンドを組んで。

金丸:だんだん僕に近づいてきましたね(笑)。どんな曲をやっていたんですか?

高橋:レッド・ツェッペリン。

金丸:高橋さんにとっては「悪の道」=「ツェッペリン」だった。ちょっと優等生にありがちな…。

高橋:かわいいもんです。

金丸:楽器は何を?

高橋:ギターです。

金丸:ジミー・ペイジだ。

高橋:あんまりそこは突っ込まないで。サラッといきたい(笑)。大したことないんで。

金丸:でも高校はバンド一筋だったんでしょう?

高橋:3年間ずっとツェッペリンでした。

数学と物理が好きで理系の道を選択

金丸:ちなみに勉強のほうは、どうだったんですか? 〝悪の道〞に逸れながらも成績は上位にいたんですよね。

高橋:そうですね。卒業後は、京都大学の医学部に進みました。

金丸:小学校のときは文学少女だったのに、いつから理系好きに?

高橋:中学のときです。数学や物理が好きになって、高校では迷わず理系を選びました。

金丸:あの頃、理系女子は今よりずっと少なかったですよね。私は鹿児島の県立高校なんですけど、理系クラス50人のうち、女子はたったの6人でしたよ。

高橋:そうなんですね。うちの高校は3分の1が女子でした。

金丸:そんなにいたんですか。だけど最近、理系離れが進んでいるじゃないですか。

高橋:悲しいことですよね。

金丸:日本は理系の生涯賃金が文系よりも低い。そんな状況は、先進国で日本だけだと思うんです。しかも、理系の人は自分のやりたいことを夢中でやっているから、その自覚もない。もうちょっと関心を持つべきじゃないかと。シリコンバレーでは理系の起業家が主流ですから。

高橋:それこそ技術に理解がないと、ビジネスはできませんよね。

金丸:そう。最先端の技術にふれている理系の人が、その専門性を生かすから、イノベーションが起きる。

高橋:私もそう思います。

金丸:だから私は「イノベーションを起こせるのは、理系のあなたたちなんですよ」と呼びかけているんですけど、それがなかなか伝わらない。

高橋:そういう意味では、ビジネスをしている人が技術を勉強するより、技術を知ってる人がビジネスをするほうがいいんだろうな、と思います。

金丸:そうそう。技術屋こそ社会のエンジンなんです。

高橋:私、最近はビジネスにもすごく興味があって、ベンチャーを作ったり、医療機器メーカーの社外取締役をさせていただいたりしています。iPS細胞に携わっていると研究者と思われがちですけど、自分では研究者という肩書が当てはまらないと感じてて。理研にも「研究者じゃなくて、社会活動家になりましたから」って宣言して、認めてもらっています。

金丸:そうなんですね。高橋さんのような、既存の枠を飛び越えて活躍する人が、どんどん増えていってほしいです。

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