港区内格差 Vol.9

かつてタワマンに住んだ港区の男たち。その反動で増える引っ越し先とは?

港区であれば東京の頂点であるという発想は、正しいようで正しくはない。

人口約25万人が生息するこの狭い街の中にも、愕然たる格差が存在する。

港区外の東京都民から見ると一見理解できない世界が、そこでは繰り広げられる。

これはそんな“港区内格差”を、凛子という32歳・港区歴10年の女性の視点から光を当て、その暗部をも浮き立たせる物語である。

港区内で頂点を極めた者に与えられるキングとクイーンの称号。クイーンとなり、港区女子を卒業した凛子は、“ギャラ飲みする女性”と出会い、白金で生まれ育ったお嬢様の格の違いを思い知った。


木より高いところには住まない男


今にも梅雨が始まりそうな、ねっとりとした空気に包まれながら、凛子は市原と、広尾ガーデンヒルズにある『セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ』のテラス席にいた。

都会の中心にいながら、緑豊かで静かなこのエリア。

少し坂を下ればもう港区なのに、この渋谷区広尾の独特な空気の流れ、そして人の雰囲気が、凛子はたまらなく好きだった。

ショットを追加したエスプレッソを飲みながら、目の前の道をぼんやり眺める。

優雅に犬を連れて散歩している老夫婦と、バギーを押している同じ年くらいの若いママが通っている。

「本当、このあたりは素敵ですよね...」

独り言のように呟いたつもりだったが、市原の耳にはしっかり入っていたらしい。

「凛子さんのおっしゃる通りです。この辺りは無機質なタワーマンションなどもなく低層マンションが多いから、ゆったりとした雰囲気が感じられるんでしょうね。」

夏のような日差しを浴びて、きらきら光りながら揺れる葉っぱを眺めて、市原が言った。そして、付け加えるように言葉を続けた。

「凛子さん、ご存知ですか。港区で一度栄華を極めた人は、タワーマンションには住みません。ちなみに僕も、木より高いところには住みたくないと思っています。」

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