それも1つのLOVE Vol.9

2017年の東京。純粋に恋愛感情だけで結婚したカップルはどれだけ存在するだろう?

それもまた1つのLOVE。

愛してるとは違うけど、愛していないとも言えない。

あなたの身にも、覚えはないだろうか…?

女性誌でライターをしている奈々は、高校時代に淡い恋心を抱いていた翔平と渋谷で再会する。

しかし彼は同年代の女性から羨望と嫉妬を集める美女・衣笠美玲と特別な関係にあることを知り心乱されるのだった。

奈々にはステディな彼・優一がいる。結婚を前提に同棲を提案され心を決めたはずだったが、翔平が気になる気持ちを止められない。

ある夜、仕事で用があり翔平に電話をかけると、彼から「今から逢おう」と誘われる


背徳の朝帰り


− 優一に、なんて言い訳しよう...

夜が明けて、赤坂にある翔平のマンションから、優一とともに暮らす神泉の家に戻る道中、奈々はずっとそればかりを考えていた。

やはり「仕事が終わらず徹夜になってしまった」と言うのが、苦しいながらも一番当たり障りがないだろう。そう結論づけて、LINEを送る。

スマホ画面には、7時42分と表示されていた。優一はいつも8時前に家を出る。奈々は10時までに出社すれば良いから、とりあえず今朝は、うまく顔を合わせずにやり過ごせるはずだ。

奈々が今、一番に考えなければならないのは、優一のことだ。

正式なプロポーズを受けたわけではないにしろ、優一とは事実上婚約状態にある。昨夜のことは絶対に知られてはならない。このまま彼とうまくやっていくためには、墓場まで持っていく覚悟で臨まなければ。

そして、翔平とはもう二度と、会うべきではない。

少しでも気を抜くと支配されてしまう翔平の残像を、息苦しいほどに胸を高鳴らせる甘美な余韻を、必死で脳内から追いやる。

しかし渋谷駅の改札を出て、スクランブル交差点を渡るとき、奈々はそんな努力が無駄であること、そして自分が自分で思うより浅はかでバカな女であることを、悟った。

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