それも1つのLOVE Vol.4

それも1つのLOVE:突然婚約した”特別”な女性。それでもなお抗えぬ、彼女からの誘惑

恋人という存在が、2017年現代の東京では、曖昧になってきている。

その人とオフィシャルな関係になる気がなくとも、その人に「彼氏・彼女」ができると、少しだけ胸が苦しくなる。

愛してるとは違うけど、愛していないとも言えない。

あなたの身にも、覚えはないだろうか?

そう、それもまた1つのLOVEである。

浜松の公立高校を卒業し慶應義塾大学に進学した翔平は、キャンパスでS級美女・衣笠美玲、(きぬがさ・みれい)と出会い、いつしかふたりは友達でも恋人でもない、しかし“特別”な関係となる。

翔平、27歳の誕生日。美玲とともにディナーを楽しんだ帰り道に高校時代の同級生・奈々と再会する。この出会いは、偶然か、運命か?


渇いたら水を欲するように


―昨日は本当にびっくりした!ご飯、行きたいね♪

赤坂の自宅に戻り、缶ビール片手にソファに倒れ込んだ翔平は、スマホに届いた奈々からの返信に口元を緩ませた。



地元・浜松の同級生と、渋谷のスクランブル交差点ですれ違う

昨夜、そんなドラマのような再会があったが、信号が赤に変わるまでの数秒では「偶然だね」「びっくりだよなぁ」など表面を撫でるような会話しかできない。

赤になっちゃうから…と足早に立ち去る奈々の背中にまたな、と声をかけた後で、翔平は彼女の連絡先すら知らないことを思い出した。

奈々は今、東京で暮らしているのだろうか?Facebookで探せば見つかるだろうか?

都会の雑踏に消えて行った彼女の頼りない背中を案じていたら、さっきまで翔平の腕を掴んでいたはずの美玲の姿が、見えなくなっていた。

見渡すと、どういうわけか自分だけタクシーを拾っている。

「翔平、私行くところがあったわ。」

涼しい顔で、彼女は手をひらひらと振る。

―この時間から、どこ行くんだよ?

振り返りもせずタクシーに吸い込まれる美玲に、心の中で問いかけるが、実際に口から出るのは溜息だけだ。

そうやってひとり残された翔平が、奈々に繋がる糸を探し始めたのはほとんど無意識だった。

渇いたら水を欲するように。そこに深い意味は、ない。

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