上京10年目 Vol.12

見失っていた「東京にいる意味」。母に言われた言葉が、ずっと探していた答えだった

―東京にいる意味って、何だろう―。

仕事のため、夢のため、欲望のため……?

上京10年となる節目の年に、人はあらためて問う。

自分が東京にいる意味と、その答えを。

28歳の朝子もその一人。朝子が抱える東京への固執と葛藤は、どこに着地するのだろうか。

18歳で上京した朝子だが、このまま東京にいていいのかという迷いが芽生え、東京と故郷の間で気持ちが揺れていた。ある土曜の朝、突然父から電話があり、母が入院したことを知らされた。


15時過ぎの羽田空港。落ち着かない気持ちでチェックインを済ませ、搭乗ゲートが開くのを待っていた。

初めて良太くんの家に泊まった翌日、母が入院したことを知らされ、いてもたってもいられなくなった。

「大丈夫やけん、わざわざ帰ってこんでいい」

いくら父に言われても、私はもう飛んで帰ろうと決めていた。

まだ寝ていた良太くんを起こして簡潔に伝えると、「大丈夫?空港まで一緒に行くよ」と言ってくれた。

心細かった私は素直に甘えることにして、一旦自宅に戻り荷物をまとめて良太くんと一緒に羽田へ向かった。

「きっと大丈夫だよ」

良太くんは、手荷物検査場で別れるまで何度もそう言ってくれた。

こんなに不安な気持ちで飛行機に乗るのは初めてだった。

東京から福岡までの、約2時間。果てしなく長い時間。

母のことを、ずっと考えた。

心臓が、うるさいくらいにドクンドクンと音を響かせていた。

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