上京10年目 Vol.1

上京10年目:28歳。東京にいる意味が見いだせなくなった時、思い出すのはあの景色

―東京にいる意味って、何だろう―。

仕事のため、夢のため、欲望のため……?

上京10年となる節目の年に、人はあらためて問う。

自分が東京にいる意味と、その答えを。

28歳の朝子もその一人。朝子が抱える東京への固執と葛藤は、どこに着地するのだろうか。


小さくなる故郷のことなんて、まったく見ていなかった


18歳で上京した私は、10年後にこんなことで悩むなんて思いもしなかった。

両親と一緒に車で福岡空港まで行き、上京したのがちょうど10年前の3月、18歳の時。

心配症で飛行機慣れしていない父のお陰で、空港に着いたのは、フライトの2時間以上前。

時間潰しに入った空港内の喫茶店で、当時はまだタバコを吸っていた父が、いつも以上にタバコをふかしていたことを、よく覚えている。

私はというと、カフェラテを飲みながら携帯で友達とのメールに返信するので忙しかった。

その日に上京することを知っている友人たちからの、「頑張ってね」「写真送ってね」「彼氏できたらちゃんと報告してね」などの応援メールがたくさん届いたから。

フライトの時間が迫ると父はそのまま車で帰り、最初の1週間だけ東京に滞在する母と二人で飛行機に乗った。

ANAの福岡―羽田便。時刻は13時をまわった頃。飛行機に乗って、小さくなる福岡の街を見下ろしながら私は東京のことばかりを考えていた。

一人で車を運転して帰る父の気持ちなんて、あの日の私はろくに想像していなかった。

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