部屋見るオンナ Vol.1

部屋見るオンナ:年収700万の32歳。東麻布での同棲解消後、苦難の部屋探しスタート!


思い出の詰まった麻布十番を去り、向かったのは・・・?


彼に連絡を入れると、今日はちょうど打ち合わせで自宅に居ないと言われ、合い鍵で入る許可を貰い荷物をまとめた。こうしてあっけなく、サトコの4年に渡る恋愛は幕を下ろしたのだ。

その日の夜急遽、千晶と一緒に恵比寿の『ブリックエンド』にある『賛否両論KAKUUCHI』で食事をすることになった。千晶は「引っ越し祝いだね!」と明るく言いながら、なぜかこの会には千晶の会社の後輩だという男性もいた。
(※『賛否両論KAKUUCHI』は、現在閉店しております。)

「ごめんね~。サトコの話をしたらやたら食いついてきて、一度会わせろってきかなくて。でも、話半分に聞くくらいでいいからね」

そう紹介されたのは、編集者らしく垢ぬけた雰囲気を放つ男だった。

「初めまして、健太っていいます。サトコさんにはぜひ、五反田ラバーになっていただきたいなと思って、今日は無理言って参加させてもらいました」

そう言って屈託なく笑う彼は、人の良さが滲みでている。だがサトコが遠慮がちに

「正直、住む場所にそんなにこだわりないけど、五反田はあまり知らないし、いいかな」

と言っても、健太はめげずに食い下がってくる。

「サトコさん、五反田の良さを知らないだけですよ。僕も前は恵比寿に住んでいたんですけど、あることをきっかけに五反田ラバーになったんです。あ、ちなみにサトコさんの部屋探しの条件って何ですか?」

「えっと、赤坂の会社まで30分以内で通えて、家賃は15万円以内。特にここに住みたい!っていう強いこだわりはないかな」

「へえ、家賃15万まで出せるって、さすが代理店ですね」

「いえいえ、3万は会社の家賃補助が出るから、実際自分で払うのは12万だけどね」

それを聞いて、健太はさらに五反田を勧めようとしてきたが、千晶がうまく話を変えてくれた。

「じゃあさ、私がお世話になった不動産屋を紹介するよ。ちょっとクセのある人だったからすごくお勧めはできないんだけど。まあ、良く言えば真面目すぎる人だから、部屋選びでは信頼できると思うんだ」

「本当に?!千晶、何から何までありがとう!その人、なんていう方なの?」

サトコが聞くと、千晶は僅かに不敵な笑みを浮かべて言うのだった。

「石神さん」

この時、千晶が浮かべた不敵な笑みの理由を、サトコはこの後イヤと言うほど身に沁みて知ることになるのだった。


Next:1月20日配信予定
石神との対面!サトコの波乱の部屋探しが始まる!

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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