東京イノセントワールド Vol.3

東京イノセントワールド:いつの日もこの胸を狂わせる嫉妬。切なくて恐ろしくて心が壊れる

欲望が渦巻き、誰もが成功を願う街、東京。

この大都会に長く住めば住むほど、大切な何かを失っていく気がしないでもない。

東京の独特な空気に飲まれて心の純粋さを失い、幼い頃に描いていた夢を失い、そして本来の自分らしさも徐々に消え失せていく。

長野県から上京してきた美穂と慎吾。大都会に揉まれながら、東京に染まっていく二人は都会の片隅でイノセントさを失わずにいられるのだろうか?

東京出身のマリエに対するコンプレックスから医者と一夜を共にした美穂、そして後から上京してきた慎吾も東京に染まっていく...


東京に染まった私を見ないで下さい


目の前にいた慎吾の顔を直視できなかった。こんな変わり果てた自分の姿を慎吾に見られるのが恥ずかしくて、お店を飛び出した。

「美穂...」

そう言って手を伸ばしてくれた慎吾は変わってなくて、でも一度その手に触れると東京で頑張って築き上げてきたものが音を立てて、一気に崩れる気がした。



「美穂ちゃん、聞いてる?」

「あ、すみません。えっと何のお話ししてましたっけ?」

目の前には42歳のバツイチで、元々マリエが狙っていたアパレル系の会社を経営している優一が座っている。少しお腹が出ているところが気になるが、毎回素敵なお店に連れて行ってくれるので最近デートを重ねている。

「今月末に箱根でも行かない?温泉でゆっくりしようよ」

そう言えば、マリエも先週末箱根へ行っていた。宿泊先はエクシブ箱根離宮と言っていた。行くならそれ以上の宿がいい。そうでないと、マリエに勝てないから行く意味がない。

「優一さん、私せっかく行くなら強羅花壇がいいな〜」

「も〜美穂ちゃんそう言うと思ったよ。予約しとくね」

優一の目尻が下がった笑顔を見ながら、これでまたマリエよりワンランク上の経験を積めることが嬉しくて思わず顔が綻ぶ。

一つ一つ、確実に。いつかマリエより上に行くために...

【東京イノセントワールド】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ