SPECIAL TALK Vol.16

~ITの力を駆使して日本の高品質な化粧品で世界を制す~

クチコミサイトの第一人者「@cosme」の誕生

吉松:大学時代の友人が、化粧品メーカーに勤めていて、いつも「化粧品のクチコミ情報って、あんまりないよね」っていうことを言っていたんです。ちょうど1999年あたり、女性のインターネット利用率が1、2%と非常に低かった時代です。そこで、友人が趣味で化粧品のクチコミ情報のメルマガをはじめたところ、予想以上に読者が増え、同時に商品を試した感想なども寄せられるようになりました。これをきっかけに、化粧品業界のクチコミサイトというビジネスモデルを考えるようになり、2ヵ月後には、ボーナスと結婚準備資金を元手に、会社を立ち上げました。

金丸:いまでこそ、あらゆるジャンルでクチコミサイトが強い時代ですが、吉松社長はその先駆けですよね。

吉松:おそらく最初だと思います。実はこのビジネスモデルを検討するとき、参考にしたのが、金丸会長が手掛けたセブン-イレブンのPOSデータの仕組みなんですよ。

金丸:そうなんですか。それは光栄です。

吉松:私が「@cosme」でやりたかったのは、レビューをただ集めるだけじゃなく、それらをネット上で相対的に比較して見せること。サプライチェーンのPOSシステムにおける末端が店舗だとしたら、クチコミにおける末端は、ユーザーです。だから、ユーザーが自らすすんでクチコミをアップする仕組みを作らないといけないと考えました。金丸会長のPOSシステムには、学ぶべきことがたくさん詰まっていて、非常に参考にさせていただきました。

スタートは順調だったがITバブルの影響は大きく

金丸:起業されたのは、2000年ですよね。

吉松:そうです。当時、会社設立に最低必要だった資本金300万円をつぎ込んで、3人で立ち上げました。

金丸:2000年というと、ちょうどITバブルが弾けた大変な時期です。

吉松:300万からスタートして、すぐ3億円集めるつもりでしたが、ネットバブルの崩壊で、業界の先輩方も投資家の人たちも軒並みいなくなってしまいました。昨日まで「1億ならすぐ用意しますよ」と言っていた人が、どんどん手の平を返していく。人生初めてのショックでしたね。でも、そんな状況でも興味を持ってくれる方はいて、出資について説明に伺い、10時間ほどディスカッションして、最後に「結局、いくら欲しいんだ?」と訊かれたので、「1億円です」って答えたら、ポーンと出してくれました。もう嬉しかったですね。そこからは次々に出資者が集まってきて、軌道に乗せることができました。

金丸:吉松社長が当初描いていた成長スピードに比べると、実際はいかがでしたか?

吉松:正直、もっと早く成長すると思っていました。今期で売上はもうすぐ120億円に達しますが、予想以上に時間がかかってしまったな、という印象です。ただ、自分の直感や進む方向は間違っていなかったですね。化粧品をやろうと思ったのも、eコマースを視野に入れていたから。価格競争に左右されない商材はなんだろうと考えに考えた末、化粧品に辿り着きました。当時、化粧品のeコマースは、業界全体の売上の1割にも満たなかったと思います。

金丸:売上で最も大きいのは、どの分野なのでしょうか?

吉松:約半分はマーケティング、残りの半分は物販です。そのうち8割は実店舗、2割をeコマースが占めています。

金丸:実店舗も運営されているのですね。

吉松 レビューサイトとクチコミサイトを立ち上げたあと、eコマースサイトをつくり、最後に実店舗をつくりました。10年前に1号店ができて、いまでは新宿、渋谷、有楽町など首都圏に6店舗、大阪では心斎橋に店舗を構えています。

金丸:物販の8割というと、実店舗がかなり貢献していますね。

吉松:全国の化粧品店の1店舗あたりの売上でいうと、1位は弊社の店舗なんですよ。「インターネットでもNo.1、実店舗でもNo.1」を目指しています。

金丸:化粧品ということもあり、社員の女性比率はやはり高いのでしょうか?

吉松:そうですね。管理職の女性比率は3割程度で、経営陣のなかにも女性がひとりいます。先日、新卒で入社してきた女性に子会社の役員になってもらったばかりです。

金丸:まさに、安倍政権が考える優等生のような会社ですね(笑)。

吉松:いや、そんなことはありません。逆に、世の中の企業は女性役員が少なすぎるという違和感がありますね。もともと外資系やコンサル業においては男性、女性の性差は関係ありません。女性を積極的に役員や管理職に登用し、女性が活躍する場を増やすことで、社会が変わっていけばと思っています。

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