SPECIAL TALK Vol.12

~人間の本質は常にチャレンジすることである~

道を切り拓くのは無謀とも思えるチャレンジ力

金丸:鈴屋を退職後、1983年に『TSUTAYA』の前身となる『蔦屋書店』を創業し、1985年にはCCCを設立しました。現在、Tカードの会員数は5,500万人近く(2015年7月時点)、各地に『蔦屋書店』をオープンするなど、情報産業の中心的存在となる地位を築いています。ここまで成長を遂げる中で、会社の岐路というと、どのようなことがありましたか?設立10年目の95年には、インターネットも本格的に始まりました。

増田:インターネットが出始めた頃、これから情報社会になっていくのは必然だと思いましたね。こんなに便利で楽しいものはないぞ、と。ネットワークで接続された人たちの生活はより豊かに、より便利になると確信していたので、それを証明するために、97年には衛星放送サービスのディレクTV(*)の設立にも奔走しました。最終的には失敗に終わってしまったけれど、この経験があったからこそ、人脈や知識が一気に広がりました。知的所有権について学ぶこともできたし、いまはチャレンジして本当によかったと思っています。

金丸:増田さんは大きなリスクを伴うことでも、大胆に実行する力がありますよね。

増田:いえいえ。私はギャンブル的というか、ある意味、無謀なだけですよ。逆に金丸さんは、チャレンジングでイノベーティブなことをするけど、同時にリスク管理も徹底していてとても安心感がある。私はどちらかというと、裸一貫でやるようなことばっかりやってますから。無謀なんですよ、無謀慣れしているんです(笑)。

金丸:私は起業家には、ふたつのタイプがあると思っています。ひとつは、手に職をもったタイプで、私はどちらかというとこちら。IT一筋でやってきました。私のような“手に職”組は、経験を重ねれば重ねるほど蓄積されていくわけですが、一方、増田さんは、手に職を持たずにやってきたタイプ。アイデア次第でビジネスチャンスが拡がるということを体現されている第一人者だと思っています。常に時代に沿った企画を立て、繁栄を続けていく必要があるだけに、30年間以上も第一線で活躍されているというのは、生半可なことではありません。

ライフスタイル提案とは需要力の強化にほかならない

金丸:CCCは創業から一貫してライフスタイルの提案をコンセプトに事業を展開しています。いまようやく、その概念が世の中に浸透しつつあるように感じています。

増田:そうですね。ライフスタイルの提案というのは、皆さんがいいな、欲しいな、やってみたいなという需要を創り出すことだと思っています。つまり、需要力を強化すること。それに私たちはずっと取り組んできました。いまの日本は消費が冷え切っています。だからこそ、皆さんの遊び心をくすぐるような新しい提案をこれからもしていきたい。それに一生懸命働くと同時に、一生懸命遊ぶことも大事だということを、特に若い人たちに伝えたいですね。それが自分の糧となり、自身を豊かにするわけですから。

金丸:高度成長期は供給力を拡大することで新たな需要を作り出してきました。でもいまは、供給力を拡大しても需要がない。需要を喚起する魅力的なコンテンツや仕掛けがない限り、供給は伸びていきません。そういう意味で、代官山の『蔦屋書店』や二子玉川の『蔦屋家電』といったお店は、まさに需要力の強化そのものだと思います。

増田:ありがとうございます。東京カレンダーも読者に対して「あそこのお店は美味しいよ」と需要そのものを創り出していますよね。いまの時代のマーケティングというのは、需要力の創造が必須です。私たちは、あらゆるライフスタイルジャンルの中で、一番提案力のある会社を目指しています。

金丸:具体的にはどのようなことをされているのですか?

増田:たとえば普通の書店は、「食」という括りであれば、世界中から集めてきたその分野の本を並べます。でもいまや、これはAmazonの役目。『蔦屋書店』にはそれを編集する人がいて、「医食同源」や「スローライフ」というテーマで切り取り、提案を行う。雑誌を作るかのごとく売り場を編集しています。たとえばアート作品を購入するなら、こういうアーティストがいるよとか、別荘を建てるんだったらこんなのがいいとか、選ぶべき建築家はこの人とか。そういうことを伝える場所にしていきたい。そういう提案をすることで、需要力を強化していきたいと思うんです。

金丸:それは、増田さんが別荘を建てたいからではなく?(笑)。

増田:そうなんだけど(笑)。でも、そういった自分のやりたい、欲しいという思いがすっごく大事なんですよね。その“やりたい”にこそ、答えがあるから。若い人たちは無謀でもやりたいことをやるべきだし、やりたいことをやれば自分自身の経験にも蓄積にもなります。それが主体性を持つことだと思うんです。大切なのは、自分と対話を重ねること。答えは常に自分の中にあることを忘れないでほしいですね。周りの目を気にしたり、周りの意見に流されたりしてはいけません。

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