仕事も恋愛も中途半端、「一体自分はどこに向かっているんだろう?」
小さい頃から成績優秀、いつだってクラスで1番可愛いと言われ続けていた。都内の有名私大にもすんなり合格し、大学時代はサークルで1番モテた。一般職だが、丸の内の大手損保会社に無事就職した。
いつだって刺激を受ける街だけど、少しずつ疲れている自分がいることにユリは気付いていた。お金、地位、名声。とどまることの知らない欲望とそれが欲しいと隠すことのない人たち。
お金も名声も地位も、ないよりはあった方がいい。子どもじゃないから、それくらい分かっている。心の底ではそれを誰より欲しながら、それでも本心では何かが違う、と必死に争っている自分がいた。
さっきのショップカードで住所を書きあぐねた1件は、まさに今の自分の心境を表していた。仕事は一般職のOLだし、恋人の聡ともすれ違いの日々だ。
仕事も恋愛も中途半端。一体自分はどこに向かっているんだろう、私の居場所はどこなんだろう。重い足取りで南麻布のマンションに帰って行った。
レシートから知ってしまった、知りたくなかった恋人の真実
家に帰ると、聡がソファでうたた寝をしていた。職場のメンバーと箱根でゴルフ合宿、と言って昨日から家を空けていた。
テーブルには財布と携帯が置いてあった。お調子者だが警戒心の強い聡には珍しいことだ。その2つは何があっても自室の引き出しに入れている。
ボッテガヴェネタの財布から、1枚レシートが飛び出していた。思わずそのレシートを引き抜くと、それは箱根にあるフレンチ店のものだった。
「人数:2名」
目を疑った。「職場のいつものメンバー」は4人のはずだ。しかも、この店は男4人で行く店じゃない。
−聡が、浮気?-
体中が心臓なんじゃないかと思うくらい、胸がどくりと鳴る。
ユリはとっさに「ここを出よう」と思った。財布と携帯を握りしめて、マンションを咄嗟に飛び出した。
次週9.5更新
港区に消耗したユリの選んだ土地とは?
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