代々木上原の女 Vol.2

代々木上原の女: 港区より格上?26歳OLの代々木上原への憧れと「幡ヶ谷住まい」という現実

東京都港区。

刺激的なその街で、「もっと上の自分」を常に夢見て追い求める。一方で、ふと立ち止るときもある。

−「もっと上の自分」を目指すのが、真の幸せなのだろうか?−

日当たりの良い静かな住宅街の中、朝起きると目の前には緑が生い茂っている。朝食は、近所で買った美味しいパンを、大切な人とゆっくり食べる。

そんな、何でもないような日常に真の幸せがあるのではないだろうか?

埼玉県出身のユリ、26歳。大手損害保険会社でエリア総合職として勤務する。強い自立心を持った彼女が、代々木上原という地で、迷い、葛藤しながら自分らしさを取り戻す。

南麻布に住む彼氏、聡のレシート明細を見て浮気を知ったユリはどうする?


彼氏の浮気は自分の弱さから…?


レシート事件の後、すぐに浦和の実家に戻った。

あのレシート明細だけで浮気の確証とするのは早計だということは分かっている。実は、同棲していく中で他の女性の影がちらつく時が何度かあった。

リビングでくつろいでいる時に頻繁に鳴る携帯。ソファに座って背中越しに見えるメッセージは、色とりどりの絵文字を交えた、明らかに女性と分かる文章だった。

ここ最近は、会話もほとんどなく、事を荒立たせる気力も無くなっていた。お互いの気持ちが離れていると分かりながら、修復しようとはしなかった。

聡が勤める外資系の証券会社は、稼ぎもいいが忙しさも尋常ではない。帰宅は、毎日深夜だった。

彼の帰りをあの南麻布のマンションで待つのは、すごく、すごく寂しかった。

お食事会やホームパーティー、女子会で毎日予定を詰めて、その寂しさを紛らわせようとした。

−結局、私は自分の弱さに負けたんだ。−

「港区在住」という憧れのステイタスをモノにした気でいて、中身は空っぽだった。

ユリは深く溜息をついた。不思議と涙は出なかった。

12歳の女の子が夢見た「30歳の、自立した女性」


久しぶりに実家に戻ると、両親も何があったのかとうるさく聞いてきたが、すぐに何も言わなくなった。

ユリは昔から何でも自分で決めて行動に移す性格だ。すぐにまた出ていくだろう、と思っていたのかもしれない。

平日の夜、聡がいない隙を狙って荷物を運び出し、実家に戻って1ヶ月が過ぎた。家族と住む新鮮さはとうに失せ、やっぱりもう一度都内に住みたい、と思うようになってきた。

そんなとき、小学校6年生のときの文集を発見した。テーマは、「30歳の自分への手紙」だった。

「東京でバリバリ仕事をして自立したかっこいい女の人になる!」

勢いよく書かれた文字に、思わず苦笑した。

ユリは、昔からよく雑誌やテレビで取り上げられるような「バリバリのキャリアウーマン」に憧れる子供だった。

あのときの夢とは違って、今はしがない損保OLだけど。

それでも、あのときの自分の思いに恥じないように、今度こそ人の力を借りてではなく、一人の力で立ってみよう。

そう決心した。

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