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  • お酒の履歴書 Vol.4

    お酒の履歴書:乾杯から始まる恋物語〜10年来の恋がスパークするとき〜

    ●前回までのあらすじ
    広告代理店で働く西野 純(33歳)は、同期の美佳(33歳)とふたりで飲みに行く関係で、互いに意識はしつつも、男女の仲に発展することはなかった。

    そんな時に西野との関係を深めてきたのはOLの明子(26歳)。実は明子は結婚願望が強く、西野に対しても積極的にアプローチしていた。

    美佳はもともとお酒が大好きで、明子は飲まない女性だったけれど西野にフルーティーなスパークリングワインをすすめられて、徐々にその美味しさに目覚めていく。明子と西野はある日のディナーデートでいい雰囲気になり、西野は明子のかわいらしさに魅了されていたが…。

    Vol.1:乾杯から始まる恋物語〜アラサー失恋女、美佳の場合〜
    Vol.2:乾杯から始まる恋物語〜意識高い系婚活OL、明子の場合〜
    Vol.3:乾杯から始まる恋物語〜モテ期到来(?)代理店マン、西野の場合〜

    10年来の恋がスパークするとき

    明子ちゃんとの関係は1カ月ほど続き、会ってはいたけれど、最終的に恋人という関係になることはなかった。

    LINEは毎日していて、家に来ることもたまにあった。でも、迷いがあって、女性が安心するようなことを言葉でも態度でも表せなかった。申し訳なかったと思う。

    「私たち、付き合っているの?」と本人が聞きたがっている気配を感じ、1カ月経ったころ、「ごめん、やっぱりもう会えない」と、次の約束を聞かれた時に伝えた。

    “だったら始めから触らないでほしかったです”

    “好きじゃない人ともそういうことができるの、理解できません”

    “虚しい”

    そうLINEで言われて、何も弁解はできなかった。ただ謝った。遊ばれたと思われただろうけれど、魅力は感じていた。魔がさしたわけじゃない。つき合う前提で関係をもった。

    でも、会うごとに明子ちゃんの気持ちに応える自信がなくなっていった。“重い”と感じるのは、相手に対しての気持ちが足りないからそうなるのだろう。

    あと年齢の差というか、会話のギャップを感じ始めていた。
    「すごいですね〜」「そうなんだ〜」というのは明子ちゃんの口ぐせで、かわいいんだけれど、そこで彼女からの発言は終わることがほとんど。

    「いまが旬の魚なんだよ」
    と俺が言うと
    「いまが旬の魚なんだ」
    そう復唱するのもクセのようだった。

    別に悪いことじゃないし、癒されることもある。始めのうちは自分との間の違和感に気づかなくて会い続けていたけれど、途中から難しくなってしまった。

    初めは無垢なことが新鮮だった。言い訳みたいだけれど、直感では女性とうまくいくかどうかは判断できず、とりあえず始めてみて、様子をみたいというのはある。順序に関しては計算できない。

    明子ちゃんとあっている間、サシ飲みしていた同期の美佳とは距離をとっていた。そして明子ちゃんと離れてからも、自然と美佳とも離れてしまった。

    明子ちゃんを傷つけてしまったことを機に、色恋沙汰は忘れて、仕事に没頭した。もう誰かにストレスを与えたくなかった。

    そう仕事中心の日々が4カ月くらい続いたとき、俺はここ一番の大事なプレゼンを迎えた。これまでにない企画で、このプレゼンを勝ち取ることが自分の仕事のターニングポイントになる気もしていた。絶対に負けられないと、休日も返上して準備を続けてきた。

    しかし、自信とは裏腹にプレゼンでは他社に敗退。あまりのショックと疲れで、その結果がわかった夜、机に突っ伏して不本意さを顕にしていた。

    そんな情けない俺に声をかけてきたのが美佳だった。
    「飲みいこっか」
    そう肩をたたき、近場のバル『ニクバルSpajio』に連れ出してくれた。

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