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  • お酒の履歴書 Vol.3

    お酒の履歴書:乾杯から始まる恋物語〜モテ期到来(?)代理店マン 西野の場合〜

    ●前回までのあらすじ
    Vol.1ではアラサー失恋女の美佳が登場。お酒が大好きな美佳(33歳)は、失恋をきっかけに会社の同期であり家も近所の西野 純とふたりで飲みに行くようになる。

    美佳は少しずつ西野を意識していくけれど、社内恋愛ということもあり、積極的なアプローチはまだしていない。美佳はふたりで行ったビストロで、西野がすすめてくれたスパークリングワインを飲みながら彼のことを考える。

    Vol.2では意識高い系婚活OLの明子(26歳)が登場。明子は美佳と違ってあまりお酒を飲み慣れていない女性。でも西野がスパークリングワインをすすめたことをきっかけに、その楽しさを少しずつ覚えているよう。

    明子も西野に好意があり、LINEやデートを繰り返している。明子もまた西野と行ったビストロで、スパークリングワインを飲みながら西野にLINEを送る。同じカウンターには、実は美佳も座っている。

    そんなふたりの女性と進展中の西野は、残業終わり、美佳と飲もうと彼女に電話をかけてみた。

    Vol.1:乾杯から始まる恋物語〜アラサー失恋女、美佳の場合〜
    Vol.2:乾杯から始まる恋物語〜意識高い系婚活OL、明子の場合〜

    モテ期到来(?)代理店マン 西野純(大手広告代理店勤務・33歳)の場合

    飲みレベル ★★★★

    20歳 初めてのお酒は父親に薦められたテキーラサンライズ。
    21〜22歳 大学のスキーサークル仲間と居酒屋でビールとサワーを飲む日々。酒の味に覚えなし。
    23歳〜25歳 持ち前の体幹の強さで、飲むだけが取り柄の若手時代。酒の味に覚えなし。
    26歳 初めて飲む冷えたリースリングに感動を覚える。
    27歳〜29歳 白ワイン→赤ワイン→ウイスキーの順に詳しくなっていく。
    31歳 ビーチリゾートで飲んだフローズン・マルガリータに感激。Facebookのプロフィール写真にまでする。
    32歳 ワインの本を3冊読破。
    33歳 お酒調達は『伊勢丹 新宿店』のデパ地下が定番に。

    美佳が電話に出ず、諦めてひとり東銀座のバーで飲んでいると
    “ごめん、どうしたの?”
    とLINEが入った。
    “まだ飲んでるかなと思って”
    “そっかー、もう電車乗っちゃった。またタイミング合えば!”
    “了解”
    美佳はその後、最後に三国志のスタンプを送ってきた。やりとりはそれで終わったと思いきや、もう一通LINEが入った。

    “土曜は何時からにします?”
    美佳じゃなくて、最近デートをしているOL明子ちゃんからのメッセージだった。
    “19時でもいいかな?”
    と返事をすると、
    “はぁ〜い☆彡”
    と即答でスヌーピーのスタンプが送られてきた。

    美佳と明子ちゃん、ふたりのキャラクターはすべてにおいて対照的だ。

    例えば、明子ちゃんはあまりお酒を飲まなくて、美佳は昔から根っからの呑兵衛。飲むか飲まないかで一緒にいる時間の過ごし方は変わってくる。分かりやすい違いは、明子ちゃんとは昼に会うし、美佳とは夜に会う。昼のデートは自分としても久しぶりだ。

    飲む女性との週末デートの場合、19〜20時に集合して、2軒目のバーにいるうちに終電となり、それを無視して、2〜3時まで飲んだりする。その後、初デートでもどちらかの家に行って昼まで一緒に過ごすこともあったりした。呑兵衛女性とのデートは、たいてい7〜15時間に及ぶ。

    これを、“祭り系”と密かに呼んでいる。楽しさと美味しさの連続で盛り上がって、時間が経つのはあっという間。1回のデートで一緒にいる時間が長いのだ。

    すると、よくもわるくも初期から互いのことを知りすぎてしまう。家に行った場合などは、初回から全部だしとなる。それは情熱的といえば情熱的。話もノリも合う相手であることには違いない。

    でも、その祭りは終わった瞬間に気持ちが冷静になる。自分のことは棚にあげて、“ほかの男と飲んでもそうなのかな?”とも思ってしまう。

    次の金曜、美佳とまた仕事終わりに飲むことになった。美佳とは当日約束が当然となっていた。その日はとりあえずビールで乾杯した。
    「あ〜、美味しい」
    「くぅ〜」
    ふたりとも自然とそんな声が出てしまう。
    「私たち、ビールって大学生のころから飲んでいるのに、会社入ってからの方が別モノのように美味しいよね」
    「それも残業した日の方が旨い」

    特に残業が当たり前となっている自分は、仕事終わりの一杯がないと一日を終えられない。お酒を飲んだ瞬間に、仕事脳がオフになる。

    この日、ビールを飲んでいる美佳を見ていたら、ふと学生時代のある日のことを思い出した。
    「あのさ」
    「ん?」
    「就活の面接の帰りにふたりで飲んだとき、美佳が美味しそうにビール飲んでいるの凄く覚えているんだけど」

    それが美佳との初めての出会いだった。就職活動では、まるで海外で会った日本人同士のように互いを意識していないという素振りをみせる人が多いなか、美佳はとてもフレンドリーだった。

    面接の前に少し話し、面接後、俺が失敗したと落ち込んでいたのを励ましてくれたのが美佳だった。

    「私だって、あの日の西野のこの世の終わりみたいな顔覚えてるよ。“絶対落ちたって”言い切って」
    「だって、特技を聞かれたから“では、歌います”って歌ったら、面接官全員がし〜んてひいてたから…」
    「しかも、Stand By Me(笑)」
    「ボボボン ボンってイントロから歌ったからね」
    「あ〜、何度思い出しても笑っちゃう!」

    当時も美佳はこの話を伝えた直後に爆笑していた。
    そして景気づけに飲みに行こうとなり、励ましてもらったのだ。その後、面接官にドン引きされたにも関わらず俺は無事内定をもらい、入社式で美佳と再会することになった。

    それからは怒涛の日々で、ふたりで飲みにいったのはそれっきりで10年以上が経った。

    他の同期も交えて飲んだことは何度かあるけど、こうして久しぶりにふたりになると、改めて楽しいしリラックスできる。絶好の飲み仲間だ。そして、昔もいまも美人。

    ただ…、男女というより、男同士で飲んでいるような感じもする。33歳で既婚の同期が多くなってくるなか、いまだ独身貴族の仲間みたいな。美佳は同僚モードで、飲み会でしりあった子が放つ雰囲気とはまったく違うバリアのようなものも感じる。

    これを崩すのは、完全シラフの女性を口説くように難しい。

    この日は飲んで語って気づいたら深夜2時だった。築地の交差点で、「じゃ」とふたりとも振り返ったりせずに別方向へ進んでいく。土曜をどう過ごしているかはお互いに知らないし詮索したりもしない。

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