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  • お酒の履歴書 Vol.1

    お酒の履歴書:乾杯から始まる恋物語 〜アラサー失恋女、美佳の場合~

    グラスのなかで立ち上る泡を手に乾杯をする男女。そんなシーンが鍵となる男女の三角関係が、いまはじまろうとしている。ひとりのオトコへの恋心がスパークした、女性2人の恋の行方とは!?

    アラサー失恋女 水野美佳(大手広告代理店勤務・33歳)の場合
    飲みレベル ★★★★★

    20歳 初めてのお酒は20歳の誕生日に友人からもらった缶ビール。

    21〜22歳 学生時代の飲みは、テニスサークル仲間と居酒屋でビールか酎ハイ。その後、社会人との合コンで初めて赤ワインを飲む(掘りごたつの個室)。

    23〜24歳 仕事終わりは上司とビールで乾杯。まだ飲み終わってないグラスにビールを注がれることにジレンマをもちはじめる。

    25歳〜26歳 飲み会繁忙期。お宝セラーのある家飲みに呼ばれ、何も知らずに一流ワインを飲み「美味しい!」を連発。

    27歳 はじめの一杯がビールからウイスキーのソーダ割りに移行。白州ひと筋。

    28歳 大阪出張にて人生最大量の飲みを経験。気づいたときには東京に戻っていた。

    29〜31歳 偶然にも引っ越し先の向かいにワインバーがオープン。ワインバーがリビング化。

    32歳 食事の際、お酒がなくなると次のひと口が進まない人となる。

    33歳 週に一度はひとりバー

    日曜の22時、バーカウンターで、カップル2組に挟まれている。東銀座の地下1階にあるカウンター8席だけのその店は、たとえ相手がお酒を飲めなくても連れて行きたくなるような、色っぽくて落ち着いたバーだ。

    現に両隣のカップルの女性たちは、お酒があまり強くないみたい。左側の女性にいたっては、紅茶を飲んでいる。でも、ただの紅茶じゃなくて、ガラスのティーポットのなかに、1/8ほどにカットされた苺がたくさん浮かんでいる。

    彼女の顔は見えないけれど、そのティーポットが置いてあるだけで、かわいい人と想定してしまう。なんて女の子らしく見えるんだろう。

    「ねえねえ、それひと口ちょうだい」

    そのうえ、相手の男性におねだりもされている! 彼はシングルモルトのロックを飲んでいて、たぶん呑兵衛で、ラガーマンみたいで、それなのに彼女のストロベリーティーを飲みたがっているのだ。

    別にバーに人間観察に来ているわけじゃない。ただ、私はお酒が好きだから、人が頼んでいるものも気になってしまう。iPhoneをいじっていても、隣のカップルのオーダーは小さな店内では自然と耳に入ってくる。

    ひとりで飲んで45分が経った。2組のカップルにとって、私は寂しいひとり客か。しかし、バーのドアが開いて彼が階段を降りてきた瞬間、まわりは「あ、相手いるんだ」と、私をひとり客だと思っていた見方が急変したはずだ。

    私はグラスに手を添えたまま、笑顔で彼を出迎えた。

    「おーっす」
    「何? 風呂あがりなの?」

    西野 純はデニムにTシャツというラフな格好で、顔はさっぱり、石鹸みたいな匂いを漂わせながら現れた。風呂あがりにさくっと来たのは、彼はこのバーからすぐ近くの築地に住んでいるから。

    そして私は勝どきで、これはご近所飲みみたいなもの。しかも会社の同期で、同じ営業職。最初に会ったのは就活の時で、いまは頻繁に顔を合わせている同僚なのだ。

    「美佳、なに飲んでるの?」
    「カンパリのシェイク」
    「また、酒好きが頼みそうなものを」

    そう、私は20歳の頃からお酒が大好き。もとい、子供の頃からお酒を飲むことに憧れていて、早く大人になりたかった。

    大工の仕事から帰ってきた父親がお風呂に入り、そしてビールを飲む様子をみて、なんて美味しそうなんだろうと羨ましがった。「泡だけでもちょうだい」と、よくねだったものだ。枝豆にビールに野球のナイター中継。それらは大人の夜の娯楽セットに見えた。

    西野 純は、生ビールを頼んだ。お風呂を出てからまだ何も飲んでいないのか、ひと口めであっという間に半分近くがなくなった。

    その後ふたりで計7杯飲んで賞味2時間。両隣のカップルのデートモードと違って、私たちはいつも通りの同僚のテンションだった。ワリカンだし家まで送ってもらうこともないし、会話は仕事の話。やっぱり、これはデートじゃないな…。

    でも、会社帰りではなく、休日に声をかけたのは私にとって大きな進歩。もう知り合って10年以上経つというのに、ふたりで飲むのは今日でまだ3回目。正確には4回だけれど、1回目は就活時だったから11年前になる。


    再び飲み始めるきっかけとなったのは、4月の私の失恋だった。

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