第7話:国立の夕日を浴びながら、夫と結城を同時に想う。
「あなたの子には、いつ会えるのかしらね。」
「お母さん!」
姉が実家のキッチンで洗い物をしながら、声を静かに荒げた。生後8か月の甥っ子を抱っこしながら、私は何も聞こえないフリをしてみせた。
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第8話:揺らめく蝋燭の灯りの中で、どうしようもない強い衝動に駆られる。
夕闇の気配を僅かに残す千駄ヶ谷の住宅街を、コツコツとプラダのヒールを鳴らして歩く。
その足音が突如気になり、もうすぐ目的地だというのに、足を止めた。逸るようにバッグから2枚のチケットを取り出す。街灯の近くに移動し、現実を確かめるかのように、手に取ったそれに目を通す。
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第8話:天空のジャズバーにて、幾多もの光の粒子に包まれる。
2度目の扉が開いた瞬間、エレベーターホールに幾多もの光の気配を感じた。自分の意識を欺くように、わざと気付かない振りをして目を伏せ、結城さんの優しい誘導に身を任せる。
ところが、店内に入ると天井から床まで一面ガラス張りの窓。もはや目を背けたばかりのその気配を認識せざるを得ない。
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第10話:月夜の三田にて、今を生きる蒼太とノスタルジーに浸る。
結城さんと私はブリックススクエアの地上階を出て、JR東京駅へと向かった。彼の自宅は大井町線の九品仏駅が最寄り駅だ。でも、それを知っている人は数少ない。誰かに聞かれても、うまくはぐらかしている。
「私達って、お付き合いしてる、って言いますか?」
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第11話:雨降る夜。同じ傘の下で、買い物袋を持ちながら結城と歩く。
いつしか結城さんと私の会話には、ほんの少しずつお互いの家族の話が出てくるようになった。特に私は結城さんのひとり息子の慎之介君の話を聞くことが好きになっていた。
結城さんがこの世にいることを、あるいは、何十年後には、この世に“いた”ことを、唯一証明する慎之介君に、私は愛おしさを感じていた。
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