カーストは固定化。メインストリームは変わらず私。
5年前の入社式の夜。私たち同期の飲み会が銀座で開催されました。
歳をとったって、思春期に形成されたスクールカーストの序列は変わりませんからね。格差は固定化するんです。東京メインストリームの私は、もちろん「上」のグループに組み込まれます。その夜も、最大派閥で、華やかな同期たちと和気藹々と盛り上がっていたんです。
太陽系の配列のごとく、私たちを中心に、遠くに行けば行くほど、暗く地味なグループが日陰で飲んでいます。私は、キラキラと輝くシャンパンを飲みながら、ぐるりと会場を見渡しました。
ふと、どこのグループにも所属しない男女が二人。
入り口近くのカウンターで腰掛けて座っていました。内定式なのに、同期と交流する気合を放棄しているようなシケこみムード。
その男性のかっこよさといったらどうでしょう!
西島秀俊さんに似て、精悍な顔立ち。仕立ての良さそうなライトグレーのスーツ。そこから伸びる長い足。日本人離れした造作の顔とスタイルは、とにかく目を惹きました。
同じグループの女の子たちも、ヒソヒソ噂していました。内定式までに何回も開催されている飲み会でも、一度も見た事がありませんでした。
おかしいですよね?カースト「上」のグループにいるべき、一目を惹くダントツのイケメンが、私たちのグループにいない。途端に、周りにいる男の子たちの安っぽいスーツのテロテロな質感が目に付きます。
自然と注目は、イケメンを独占している一人の女に集まります。
あどけなさの残るピュアそうな顔立ち。
私と変わらない、150cm代後半のスタイル。
どうってことない、ただの女。
そう、その女の名が、サエコ。
最初から気に入らなかったんです。
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