東京女子図鑑 Vol.8

37歳女性が住む街「代々木上原」。私はおばさんになったか?

結婚して豊洲に住んだ綾の3年後。37歳の綾の今・・・


生まれた街から、就職を機に越してきた綾。 秋田の国立大学を出た綾が、地方銀行を強く勧める親をなんとか説き伏せて東京の某アパレル企業の総合職として就職。三軒茶屋恵比寿に住んだ綾は、その後、外資系に転職し、お給料は700万円に。一流な女を目指して上質な暮らしをするため、銀座に引っ越した。その後、34歳で結婚し豊洲に移り住んだ綾の、更に3年後のお話・・・

前回:34歳・女性が住む街「豊洲」。適齢期の女性がぶちあたる「知ってしまった不幸」と「知らない不幸」

37歳。私はおばさんになったか?


森高千里さんが出演されているCMが最近流れてますよね。「私がおばさんになっても」なんて歌いながら、若いころと変わらず、いえ、マイルドな女らしさに溢れている彼女は、若いころより魅力的です。

そりゃそうですよ。江口洋介さんが旦那さんで、仲睦まじいお二人は、時々デートにいくそうですよ。週刊誌でみました。お会計は、彼のお財布を預かって彼女が払ってるって。愛されて幸せな女は、おばさん化しないんだなって、彼女を見ているとつくづく思います。

じゃあ、愛されていない女はどうなるのでしょう・・・?

私、37歳になったんです。子供の頃、37歳なんておばさんだと思っていました。10個も上の、森高千里はあんなに美しく輝いているのに、私は、どうでしょうか?おばさんになったのでしょうか?



フェミニストの皮を被った亭主関白夫の化の皮


商社の人って、結構亭主関白な人が多いみたいですね。もう少し先進的でフェミニストかと思っていたのですが、結婚した途端、家事や洗濯を求めるんです。もちろん、言葉には出しませんよ。教養のある男性なら、それがいかに時代遅れなことかってわかっていますから。ただ、ひしひしと伝わって来る無言の圧力っていうんでしょうか?

今まで一人で暮らしてたはずだから自分で全部できるはずなのにですよ。夜疲れて帰ってきて、開口一番「ごはんは?」って言われた時は、途方もない脱力感に襲われますね。それでいて、時々思いついたように、果物をむいてくれたり、良い旦那アピールをするんです。でも、切った皮はまな板におきっぱなし。洗い物増えるだけだから触れてくれるなって心の中でイラっとするんですよね。

結婚って、1+1が2にならないと意味ないと思うんです。だけど、彼との結婚は、なぜか、1にしかならない。自分がやっていたことは、私に、皺寄せがきて、私は、2人分の家事に追われています。

生活費?もらっていませんよ。もちろん、家賃は彼が払っていますが。銀座のときの家賃13万円分が浮いたと考えれば、確かに、食費と、家事は私がやるべきなのかもしれないのですが・・・でも、せこいかもしれませんが、彼は、独身時代と金銭的負担は変わらず、家事食事が自動的に提供され生活がプラスになって、私も負担は変わらないけど、逆に彼の分の家事や食事を作らなければいけなくてマイナスになっています。私の方が割りを食っているって考えちゃうんですよね。

本当に子供が欲しいの?辻褄を合わせるように抱き合って眠る日々。


私は、34歳の時に結婚しました。豊洲は、外に出れば子供の笑い声、泣き声が聞こえてきて、否が応でも家族を意識しました。彼は、子供をすぐにでも欲しいと言っていました。私も、仲良しのグループの子たちは皆子供がいましたし、それを見てたら私もそろそろかなって。基礎体温をつけて、タイミングに合わせてそっぽ向いた心の帳尻を合わせていく。辻褄を合わせるように抱き合って眠るんです。だけど、毎月女性のサインがご丁寧にくる・・・

けど、不思議なんですが、げんなりしつつもほっとしている自分もました。

転職してようやく仕事にも慣れて、やりがいを感じていました。シニアマネージャーとして、現在10人のメンバーをマネジメントする立場です。もちろん大変なことはありますが、自分の決断でプロジェクトを推進させていくことができることがこんなにも面白いなんて・・・今子供ができたら、これを全部ストップしなければいけないでしょう?もちろん、サラリーマンなんて、所詮駒でしかなくって、代替可能だってわかっています。それでも、面白いゲームを途中でやめられない感覚、わかってもらえますか・・・?

女性の人生は、なかなかに生きづらくて、暗黙の幸せの定義が蔓延しているんです。未婚のときは、結婚することが女の幸せ、結婚したら、子供を産むのが女の幸せ・・・その定義の素地があり、子供を産めるリミットだってある。となれば、女性たちは、個々人に最適化された欲求に耳をすますことなく、閉店間際、ホタルの光が鳴りだしたスーパーや、タイムセールの焦りのごとく、思考が停止してしまうのも仕方ないと思います。

それに、女性は小さい頃から、皆が持ってる物を欲しがって足並み揃えてきたと思うんです。シルバニアファミリーやリカちゃん人形、たまごっちや、プラダの黒いナイロンバッグ、シャネルのマトラッセ・・・友達が皆持ってるから、母にねだったみたいに、子供にしても、そういう側面があるんじゃないかなと。

そう。私は、本当に、子供が欲しいのでしょうか?

悩んだ結果、彼と距離をおくことにしました。「離婚」じゃなくて「別居」です。別居を選んだのは、端的に言うと、白黒はっきりさせる労力がなかったからですね。孤独に向き合う覚悟も引き受けたくないし、一緒にいることで生まれる争いも抱えきれない私たちは、とりあえず、子供の問題と、お互いの価値観の違いに蓋をして見て見ぬふり。別居が一番楽だったんです。

代々木上原は、自然界のリズムに抗わない心の健康な女性が多い


別居したお祝いに、と茶化して、前職の会社の同期の男友だちが代々木上原の『enboca』に誘ってくれたんです。代々木上原は初めてでした。あぁ、なんかこの空気、いいなって素直に肩の力が抜けて・・・そして、三茶の時代の懐かしい同期の顔見たら、お酒飲みながらふと涙腺崩壊です。

けど、泣けてくるのに、寂しい気持ちにならなかったんです。ビオワインを飲んで、美味しい野菜がふんだんに使われたピザを頬張ったら、悲しいんだけど、美味しくて泣きながら笑っていました。その子「泣いたり笑ったり忙しいやつだな」って。あの夜の、悲しいんだけど、温かい感じは今でも覚えています。

代々木上原は、三軒茶屋とも恵比寿とも銀座とも、豊洲とも全然違います。空気がゆったりと流れていて、住んでいる人たちは、落ち着いていて肩の力が抜けている感じ。子育ての街というよりは、大人たちが遠慮しあいながら、一定の距離感と優しさで暮らしている街ですね。詮索されたくもないし、かといって知らんぷりも寂しい。今の私にとっては最適な街です。

代々木上原に住むようになって、気づいたのは美味しいパン屋さんが多いこと。そこの前を通ると、ふんわりといい匂いがして、健康的な食欲が湧いてくるんです。

美味しいパン屋さんがある街には、朝早く起きて、夜早く寝るという、自然界のリズムに抗わない生活を求める心が健康な女性が集まっている気がしますね。街がそうだから、女がそうなるのか、もともとそういう女がいたから、街がそうなったのかは、卵鶏よろしく、わかりませんが、街と人が相互作業で、どんどん浄化し合って余計なものをそぎ落としているんでしょうね。贅肉がなくて、筋肉質でヘルシーな街です。

この街で2つの季節を過ごしましたが、その中で、傷も徐々に癒されて、リハビリさせてもらっています。

生活感がまるでないのに、家庭的。全く相反するものを内包してる女たち


そこに買いに来ている女性もまたいいんですよね。

六本木にいる女性みたいに、バーキンとかダイヤも身につけているわけではないのに、すごく豊かな香りで満ちているんです。今流行りのコーディガンとかさらっと羽織って、髪の毛も、巻いてないのに、怠惰じゃなくて、ナチュラルに手入れされています。それにペタンコの靴。今の時期だと、秋の朝の光に照らされて、何だか神々しい透明感で溢れてるんですよ。

結局男性が求めてるものは、家庭的な女なんだなって最近思います。

家庭的って言うと私は、三茶のときに感じた生活感の親戚みたいなもので、若干ネガティブに感じていたけど、代々木上原の女性を見ていると、生活感がまるでないのに、家庭的。全く相反するものを内包してるハイブリッドみたいだなって思います。

普通、料理をすれば、手にニンニクの匂いがついたり、油の匂いが髪についたりするんですよ。だけど、代々木上原の女性からは、ランドレスや、ダウニーの洗剤の匂いに混じって、パンと、コーヒーの匂いがしてきそう(笑)ドラマの中の女たちですよね。

豊洲の時は、私、仕事が忙しかったし、会えばイライラしちゃうから、家に帰っても料理なんてしなかった。彼のために1時間かけてお料理してあげたいって気持ちが希薄だったんです。けど、代々木上原に来て、また自炊を始めました。美味しいパンと、スクランブルエッグ、野菜のポタージュで朝食なんて、優雅でしょう?(笑)銀座のキッチンは綺麗なままだったけど、このキッチンはいい意味で、ちゃんと汚したい。ここでしっかりと生活を立て直したいって思います。

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