~コンテンツスタジオという体制で、最高のエンタメを世界に広めたい~
ハードからソフトへ。韓国の戦略から学ぶ
金丸:映画や音楽、アイドル文化など、エンターテインメントといえば、韓国がものすごく強いじゃないですか。
山田:おっしゃるとおりです。ただ、一朝一夕で強くなったのではなく、韓国のプロデューサーは「ここまで来るのに35年かかった」と話していました。
金丸:日本が「失われた30年」と言っている間に、韓国は積極的に文化を輸出していたわけですね。
山田:1998年、韓国のウォンが安定しなくなったときに、当時の金大中大統領が「車を売るより映画を売ろう」と呼びかけたそうです。その頃から「エンタメを世界に売らなきゃいけない」と国を挙げて取り組み、その積み重ねが今につながっています。
金丸:私が起業したのが1989年、上場したのが1999年です。上場後に韓国に行ったとき、訪れたソフトウェア会社に私の写真が貼ってあって、びっくりしたんですよ。「もともとサラリーマンだった男が、ソフトウェアの力で上場した」という記事が韓国でも出回っていたようで。当時の韓国は日本以上にハードウェア志向でしたが、「これからはソフトウェアやコンテンツに力を入れていく」という覚悟を感じました。
山田:韓国の映像業界には学ぶところが多かったですね。例えば、韓国の「スタジオドラゴン」はNetflixで配信ドラマをいくつもヒットさせています。彼らがしっかりと作品づくりに向き合える要因のひとつが、コンテンツスタジオとして運営していることなんです。
金丸:BABEL LABELの体制は、韓国をお手本にしたんですね。
山田:韓国との差が相当開いていることを改めて感じたので、「自分たちもコンテンツスタジオになろう。そして少しでも早く世界にコンテンツを届けられる存在にならなければ」と心に決めました。サイバーエージェントに相談に行ったのも、その流れです。
金丸:日本のコンテンツ産業を見ていると、もっと稼げるはずなのにもったいない、と感じることがよくあります。私は今、日本ハンドボール協会の会長を務めていますが、スポーツ業界も似たようなところがあって。いまだに国全体としては、製造業や自動車産業のようなハード中心の考え方が根底にあるように思えてなりません。将来、コンテンツ産業のようなソフトパワーが、日本の産業の柱になるにはどうしたらいいと思いますか?
山田:韓国と比べても、コンテンツの良さでは日本は負けていません。じゃあ、何が違うかというと、それは簡単で「輸出しているか、していくつもりがあるか」なんです。
金丸:日本国内で一定の需要があるために、国内だけで産業が成立してしまいますからね。
山田:まさに。そんな中で映像業界にはNetflix、音楽業界にはSpotifyが入ってきたことで、一気に風穴が開きました。今はみんなが国外の市場を見るようになったし、見なきゃいけなくなった。
金丸:コンテンツ産業は、制作現場の労働環境や待遇の悪さがたびたび話題になりますよね。特にアニメーターや漫画家の給料があまりにも低すぎると。作品を作り出す多くの人たちの犠牲の上に、産業が成り立っていると言わざるをえません。
作る人が責任を持って海外に売りに行く時代へ
山田:今までは作品を制作する人と、作品の権利を持つ人は別でした。しかも、販売に関することはブラックボックスになっていて、制作者側から全然見えなかった。産業を成長させるには、そうした部分を明らかにしないといけないし、今後は制作サイドも販売に協力する、あるいは自分たちが責任を持って海外にコンテンツを売り込むことが必要だと思います。新しいステージを切り拓いていきたいですね。
金丸:利益率が高い企業というのは、世界で共通しています。「自分で作って、自分で売る」のが最も強い。そして映像に限らず、製造業でもなんでもそうですが、作っているだけではそんなに利益は出ません。ブランディングに力を入れて、自分たちに付加価値をつけ、より高く売っていく。そういう意味でBABEL LABELが目指しているのは、すごく正攻法だと思います。ところで、アジアに出ていくとなった場合は、やっぱり韓国がライバルになるのですか?
山田:例えば東南アジアだと、映画配給の最大手に韓国が入っていますが、みんながNetflixを見ているわけではありません。それにクレジットカードを持っていない人も多いです。
金丸:そうなんですね。日本にいると、Netflixが世界中を席巻しているように感じますが、まだそこまで普及していない地域もあるんですね。
山田:僕も調べてみるまで知らなかったんですが、自分たちの手で世界に売りに行くなら、買ってもらう人たちにちゃんと説明することや、どうやって見ていただいているかを知ることが大前提だな、と感じました。それが分からないと、「この国にはこういうふうに売ろう」という道筋も見えません。
金丸:日本のコンテンツそのものは、海外に見劣りしているわけではありません。山田さんは「風穴が開いた」とおっしゃいましたが、今まさにチャンスが来ているように感じます。BABEL LABELがその先頭を切って、小さくこぢんまりではなく、大胆に変えていってほしいです。確か、若いクリエイターもたくさんいらっしゃいますよね?
山田:いますよ。中には10代の脚本家もいますから。
金丸:それは楽しみだ。ぜひ映像コンテンツを日本の一大産業にしてください。山田さんが吹かせる新しい風を心から楽しみにしています。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。




