
~勝ちたい。勝つしかない。とことん勝ちにこだわったから、今がある~
魅力を伝えるだけでなく、勝つことで人気を得たい
金丸:同じハンドボールですから、日本でもきっと観客を夢中にさせることができると思うんです。
吉田:それだけの魅力があるスポーツだと僕も思います。
金丸:吉田さんにとって、ハンドボールのどんなところが魅力ですか?
吉田:やっぱり迫力じゃないですか。展開がスピーディーで、激しいぶつかり合いや体のコンタクトもある。あと海外では、ワンプレー、ワンプレーが、サッカーみたいにめっちゃ盛り上がるんです。選手が観客をあおるからなんですけど、日本ではそういうのはあまり見ませんよね。
金丸:ないですね。観客としては、きっとあおられたほうがより熱くなりますよね。
吉田:特にホーム戦だと、一体感がすごいですよ。
金丸:プレーする側にとっても、ハンドボールってすごく魅力的で。行ったり来たりが激しくて、全力疾走の連続。思いっきり打つシュートだけでなく、よりテクニカルなシュートもあるし、空中からもシュートを打つ。とにかく体全部を使うし、いろいろな運動の要素が絡み合っています。
吉田:そうですね。そういった意味では、空手やバスケの経験が今に生きていると思います。空手では腰の動きが大事だし、バスケでは体の動かし方やターンの技術を磨けました。
金丸:私は体は小さいけれど、学校の体力テストは全項目満点だったんですよ。ハンドボールは飛んだり跳ねたり、投げたりが全部そろっている。「自分に得意なこと、全部できるじゃん」と思ったからこそ、続けようと思えました。今も元気でいられるのは、ハンドボールのおかげじゃないかな。
吉田:じゃあ、「小さい頃からやっておけば、全身鍛えられるよ」って宣伝できますね。
金丸:そういう一面も伝えていけば、より幅広い層に知ってもらうことができますね。だけど、人気スポーツにしようと思うと、それだけじゃ足りない。
吉田:やっぱり国際試合で勝たなきゃいけません。
金丸:吉田さんは「もっと強くなりたい」と海外へ飛び出しました。私としても、選手たちにもっと海外に目を向けてほしいです。
吉田:今の日本のレベルを考えると、日本のチームから移籍した場合、おそらく給料が下がることのほうが多いかもしれません。それに自分のポジションが空いているのかという問題もあります。
金丸:それでも行ってみたいと思う選手が出てきたら、協会としては快く送り出せる環境を作りたいし、海外からも選手を呼びたい。Jリーグも、開幕に合わせてブラジルの国民的なヒーローだったジーコが来てくれて、そのジーコがアルシンドを呼んで、彼らのような選手が観客を熱狂させました。
吉田:レベルの高いプレーを見たら、やっぱり観客は盛り上がりますからね。
金丸:だから、吉田さんの周りで「日本でプレーしてみたい」という選手がいたら、すぐに私に知らせてくださいね(笑)。
ポジティブさと勝利への熱意で、いずれは業界を牽引したい
金丸:吉田さんは、大学在学中に海外へ打って出ました。才能に恵まれている若い人を見ると、私は「大学なんて行ってる場合じゃないのでは」と感じることがよくあります。「大学に行くな」と言いたいのではありません。だけど「若い頃の4年間」というのは、何物にも代えがたい貴重な時間じゃないですか。
吉田:特にスポーツ選手の場合、現役選手でいられる期間は限られますからね。
金丸:大学に縛られて現役期間が4年短くなるって、本人にとっても、そのスポーツにとっても、もっと言えば国にとっても損失だと思うんですよ。
吉田:野球の大谷翔平選手がもし大学に行っていたら、プロでの活躍が4年分減るわけですから。
金丸 いち早く海外に挑戦して揉まれたほうがいい。大学に行くのは、現役を引退してからでも遅くはありません。むしろ、現役の経験があるぶん、自分に必要なことをより深く学べるし、充実したセカンドキャリアが築けるのではないでしょうか。「高校を卒業したら、そのまま大学に行く」という“当たり前”はそろそろ終わりにしていいんじゃないかと思います。もっとも、吉田さんは文武両道で成果を残されていますが。
吉田:いや、周りの人に助けてもらったし、環境にも恵まれたからです。
金丸:それに加えて、吉田さんはすごくポジティブシンキングですよね。
吉田:そう思います。
金丸:だから未知への挑戦ができるんですよ。
吉田:自分はアホなだけかと思ってましたが、そんなに褒めてもらえるとは(笑)。
金丸:アホだなんて、とんでもない。しかも、吉田さんは勝利に貪欲。「勝ちたい」と思うからこそ、「勝つために◯◯しなきゃ」と、自分に何が必要なのかをちゃんと考えられる。
吉田:そうですね。だからチームメイトにも、言うべきことは結構ズバズバ言います。
金丸:吉田さんと同じく日本代表で、現在ヨーロッパでプレーしている安平光佑選手がいますが、吉田さんと安平さんって、「言いたいことを言う」点で似ているんですよ。先輩からすれば持て余すかもしれないけど、そのおかげで代表が進化した。そんな吉田さんには、将来、ハンドボール界を牽引する第一人者になってほしいです。
吉田:そんなふうにおっしゃっていただけて、ありがたいですし、僕自身、そうなりたい。日本でハンドボールを有名にしたいんです。
金丸:その言葉が聞けてよかったです。2028年のロサンゼルスオリンピックでは、日本代表としてコートに立つ吉田さんを応援しに行くつもりですから、よろしくお願いします。
吉田:金丸さんからのプレッシャーがすごい(笑)。でも頑張ります。
金丸:ヨーロッパでのご活躍も楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。