
~勝ちたい。勝つしかない。とことん勝ちにこだわったから、今がある~
下心から選んだが、しっかり成績を残す
金丸:ちなみに、それまでにハンドボールの経験はあったんですか?
吉田:中学校にハンドボール部があって、友達がやっていたので、僕も遊びでやったことはあります。小学生の時、ドッジボールで豪速球を投げまくっていたので、「ほぼ一緒。いける」と思っていたんですが、いざやってみると、ゴールが意外と小さくて難しいんです。それに友達が打ったバウンドシュートを見て、「そんな打ち方があるんか!?」とびっくりしたのを覚えています。
金丸:その記憶が蘇って、やってみようと思ったんですか?
吉田:ちょっと下心もありましたね。中学で全国大会に出た経験者がハンドボール部に入ると聞いたので、「だったら、ハンドボールで全国大会に出られるかも」と。
金丸:とにかく全国大会に出たかったんですね(笑)。だけど、私も境遇は似ていて、中学まで野球少年で、高校からハンドボールを始めました。見学に行ったら「やってみたら」と先輩に声をかけられ、とりあえずジャンプシュートをしてみると、踏ん張りがきかなくて、野球と全然違う。「なんだこれ!?」とやっているうちにハマってしまい。
吉田:先輩のワナにハメられたんですね(笑)。
金丸:まんまと。それで、吉田さんの高校時代の戦績はどうだったんですか?
吉田:チームの得点源にはなれたんですが、インターハイ出場は逃しました。しかも、高校最後の県大会の決勝で、僕が大ミスを。前半の残り3秒でレッドカードをもらって、退場になったんです。
金丸:いったい何をしたんですか?
吉田:味方のキーパーからボールをもらって、ゴールまで18メートルくらいの距離だったので、全力で投げたんですよ。そしたら、間にいた相手ディフェンスの顔面に命中してしまって。
金丸:なんとまあ。
吉田:最悪です。それまでは2、3点差で、「勝てる」と思っていたのに。ただ、県で2位になり、春の全国選抜大会には出場しました。2回戦で負けましたが、僕は2試合で29点取ったので、それで注目されて。
金丸:それはすごい。高校だと1試合の平均点数は、チーム全体で20〜30点くらいじゃないですか。吉田さんにボールを集めて点を取る、というのが出来上がっていたんですね。
吉田:だからみんなのおかげです。
金丸:ちなみに部活では大活躍ですが、勉強のほうはどうだったんですか?
吉田:高校受験は、結構頑張ったんですよ。和歌山は学区がなくて、僕も隣の市にある県立那賀(なが)高校というところに通いました。近所で「那賀高校に通ってます」と言うと、「えっ、すごいね」って言われるような高校で。
金丸:じゃあ文武両道だ。
吉田:高校3年生になってからは、なんとなく「筑波大学に行きたい」と思い始めていて、先生にも話していたんです。強豪大学だし、勉強もしっかりできるイメージがあったんだと思います。そしたら、高校の顧問の先生から筑波大学の監督に話が行き、監督が直々に和歌山まで来られて。
金丸:藤本 元(はじめ)監督ですね。クールな印象の方ですが、直接足を運ぶとは、情熱のある監督なんですね。
吉田:そうなんです。毎年「この選手は」という人に、直接会いに行っているはずです。実はめっちゃ話しやすいし、見た目とのギャップのある方なんです。