鮨コースを3万円以下でいただける貴重な名店。知る人ぞ知る、東北沢・西荻窪 ・不動前の3軒

新店ラッシュは勢いを増し、価格の高騰も止まらぬ“東京の鮨”。

しかし、その波をもろともせず、淡々と真っ当な仕事をする良店が存在するのも事実。確かな技術と味は言わずもがな、そのコースは3万円以下。

大人が本当に通いたい住宅街にある3軒がここにある。



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1.【全22品¥24,000】住宅地の地階に潜む鮨に魅せられた男の稀有な感性に魅せられる
『鮨 西崎』@東北沢

東北沢『鮨 西崎』の内観

石段を上がり入店すると、白木のカウンターが広がる。アプローチを含め“茶室”をイメージした空間は、余計な装飾が一切なく鮨に没頭できる


茶室のような空間でひたすらに鮨に向き合う贅沢


大将の西崎亮平さんは、『鮨なんば』や『鮨しゅん輔』といった名店で修業を積み独立。

「店を持つなら住宅街でアットホームな雰囲気でやりたい」と、駅から少し離れた住宅地の地下に『鮨 西崎』をオープンした。

食感を意識した抑揚のあるコースの流れ

東北沢『鮨 西崎』の茶碗蒸し


コースの流れはお酒ありき。ビールからスタートする人が多いので、一品目は温かい茶碗蒸し。

東北沢『鮨 西崎』のつまみ4品


その後、「牡蠣の酒煮」や「煮ダコと子持ち昆布の粕漬け」など酒盗の連打で日本酒へとシフトしていく。

東北沢『鮨 西崎』のつまみ


西崎さんの鮨を体験した人は、口々に「価格に見合わないクオリティーの高さ」と賞賛する。その所以は、とことん追求する“食感”にある。

「子持ち昆布はコリコリ感と滑らかさを。春子は身厚だけどフワフワに。それぞれのコントラストが面白い。食感はファーストインパクトを印象づける重要な要素。食材ごとに『脂の強さか身の旨み、どちらを引き立たせるか?』と美味しさを探りながら、ベストな食感を見つけていくのを楽しんでいます」と西崎さん。

東北沢『鮨 西崎』のあん肝

「あん肝」は短時間で血だけを狙って血抜きするため臭みは皆無。醤油はほぼ使わず、素材の甘みを引き出し驚くほどふわふわに仕上げる


名物の「あん肝」はその真骨頂と言える逸品。

塩分で身が締まらないように白醤油で香りづけのみ加えて仕立てたあん肝は、滑らかに溶けるテクスチャーが官能的で、奇麗な甘みと余韻がずっと続く。

東北沢『鮨 西崎』の焼き穴子


「焼き穴子」。皮目のみトロ火でじっくり、穴子の脂で揚げ焼きするように火入れ。

皮はパリッと身はふんわりに。とろみのあるツメも美味。

東北沢『鮨 西崎』の握り4貫


また、ネタの甘みが特徴の握りは白シャリ、香りのあるネタは赤シャリを使い分ける。

東北沢『鮨 西崎』の握り4貫


ユニークな「ぼたんエビ」は殻をまぶした味噌を中に入れ、ねっとりとした食感と香ばしさが鮮烈。

東北沢『鮨 西崎』のイカ


「イカ」は、硬さを解消するために切り身を7枚重ねて、食感は滑らかかつ適度な歯応えにしている。噛むほどに、甘みがグッと際立つ。

東北沢『鮨 西崎』の穴子


「穴子」は対馬産のもので豊洲の「築地大豊」から仕入れを行う。

15分煮込んで崩れるギリギリを狙った、ホロホロ食感に唸る。

東北沢『鮨 西崎』の握り2貫、つまみ2品

「サワラ」も藁で燻し、香ばしさでつなげるなど、随所に巧妙な仕掛けがある


緻密で繊細な鮨と、朗らかで話上手な大将のキャラのコントラストも魅力的で、皆一様に心まで掴まれてしまうのだ。


【Check!】握り手を知る

東北沢『鮨 西崎』の西崎亮平氏


叔父が営む幡ヶ谷の鮨店から鮨職人のキャリアをスタートし、名店で修業を重ねる。

魚への愛が伝わってくる語り口と、柔和な雰囲気で多くのゲストからも慕われる。

鮨 西崎(東北沢) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

2.【全21品¥23,500】ネタの旨みを凝縮させた究極の「熟成鮨」で、鮨の沼から抜け出せない
『鮨 まるふく』@西荻窪

西荻窪『鮨 まるふく』の内観

店内は親方を囲む白木のコの字カウンター。洗練さと落ち着きが調和している


鰯・クエ・海老の濃い味わいが脳天を貫く、いまだかつてない新体験


職人が培った技術を使って、手間ひまかけて提供される鮨は、それだけで訪れる価値がある。『鮨 まるふく』は、店主の伊佐山 豊さんが生み出した独自の「熟成鮨」が強み。

伊佐山さんが2011年の開店時に熟成鮨に行き着いたのは25年に及ぶ修業期間中に、正統派の江戸前鮨から新鮮なネタをそのまま握る鮨まで経験して、「魚は寝かせると香りと味が抜群に良くなり、質感も変わる」と気付いたことから。

熟成することで新たな味わいを引き出し「小肌がこんなに華やかな味になるなんて!」と驚きをもたらす。そのため、この店を目がけて地方から来店する客も後を絶たない。

店内の楽しい雰囲気を呼応するにぎやかな展開

西荻窪『鮨 まるふく』のサワラとスミイカの刺身


それぞれ8日、2日熟成したサワラとスミイカの刺身でスタート。

西荻窪『鮨 まるふく』のサヨリ、キンメダイ、本まぐろ赤身、コハダの握り


その後サヨリ、キンメダイ、本まぐろ赤身、コハダと握りが続き、合間でノドグロの焼き物などの一品料理が登場。

西荻窪『鮨 まるふく』のつまみ4品


しかも、「市場を出た後、喫茶店で原価計算すると冷や汗が出る」というほど素材も上質。

そもそも長期熟成させるためには魚の状態がよくないとうまくいかないためおのずと目利きや下処理の技術が試される。

西荻窪『鮨 まるふく』のクエ

放血という熟成向きの下処理をしたクエを直送してもらい、33日間熟成。もともと筋肉質なクエがねっとりとした美味しさになる


例えば、クエは放血という新鮮さを保つ技術を持つ漁師から仕入れることによって、33日という長期の熟成を実現できているという。

西荻窪『鮨 まるふく』の白子がゆ


中盤で登場する白子がゆが濃厚で満足感が上昇。

西荻窪『鮨 まるふく』のイワシ


イワシは約20日間寝かせることで、赤酢のシャリとマッチするふくよかな味わいに。

きらびやかになる包丁テクニックも目を見張る。

西荻窪『鮨 まるふく』のシマエビ


『鮨 まるふく』のスペシャリテのひとつ。

シマエビを3尾使い、自家製のエビ醤油とエビ味噌、エビ塩で仕上げた濃厚な味わいの一貫。

西荻窪『鮨 まるふく』のあん肝、本まぐろ中トロの握りetc


あん肝やイワシ、シマエビ、本まぐろ中トロの握りやうにいくらと盛り上がりは最高潮に。

西荻窪『鮨 まるふく』のうにいくら、だし巻きたまご、穴子、お椀

だし巻きたまご、穴子、お椀で〆


より美味い鮨を追い求めて、日々熟成期間や締め方を研究する親方が魅せる、進化しつづける熟成鮨をいま、味わうべし!


【Check!】握り手を知る

西荻窪『鮨 まるふく』の伊佐山 豊氏


コースでは、一品ずつ産地や熟成日数を解説。難しくならないように、軽妙に楽しげな口調で語るのが伊佐山さん流。

女将さんを交えた会話も愉快で楽しく、アットホームな雰囲気に。

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3.【全25品¥25,000】“すし匠”のDNAを継ぐ名店に感度の高い大人たちが夜な夜な集う
『不動前 すし 岩澤』@不動前

不動前『不動前 すし 岩澤』の内観

交互に供される握りとつまみが酒飲みの心をつかんで離さない


「お客様の気持ちを察して接客するようにしています」と笑うが、握るときは真剣な面持ちに。

そんな雰囲気に惹かれて訪れる客筋の良さは東京随一。『不動前 すし 岩澤』は、常連が多いのも納得だ。

まぐろの赤身は「醤油をまとわせるぐらいのイメージ」で1貫分を切り付けてからサッと漬けに。車エビは半生状態で熱々の出汁をかけて「味と香りを入れる出汁漬け」に。

今日の真鯛なら「そのままで十分に美味しい」と朝にさばいた一尾を使う。店主の岩澤資之さんがすべての仕事で貫くのは「素材の持ち味をしっかりと引き出す」。

そのために必要なら手間を惜しまずに、黄身おぼろも仕込むし、鮮度抜群の個体を、あえて一度冷凍した上で寝かすことも厭わない。

「どの魚も最高の状態で味わってほしい」と時間まで逆算して仕込んでいる。その仕事はちょっとした小鉢でも徹底されているから恐れ入る。

凛とした空気で清廉な鮨をいただく心地良さ

不動前『不動前 すし 岩澤』のワカメしゃぶしゃぶ


ワカメしゃぶしゃぶでコースがスタート。

不動前『不動前 すし 岩澤』のつまみ2品、握り2貫


『すし匠』出身ゆえ、おまかせはおつまみと握りを交互に。

合間合間に口直しの漬物を挟むとはいえ、提供される品数は25品と多い。

不動前『不動前 すし 岩澤』の「赤身」


サッと漬けにした大間産「赤身」は和がらしを添えて。

不動前『不動前 すし 岩澤』のまぐろ酒盗茶碗蒸し、アジ棒鮨、ヒラメの昆布締めetc


なまこ、黄身おぼろに漬けたカスゴ、ホタテ刺身、毛ガニ手巻き、まぐろ酒盗茶碗蒸し、アジ棒鮨、ヒラメの昆布締めなどバラエティーに富んだ展開。

不動前『不動前 すし 岩澤』の「車エビ」


「車エビ」は出汁漬けにすることで身がパサつかず、しっとりと仕上がるという利点も。

不動前『不動前 すし 岩澤』のつまみ2品、握り1貫、漬物1品


箸休めの小メロンなどの漬け物を挟みつつ、玉ねぎおろしが利いたメジまぐろ炙り刺や太刀魚のほか、うに軍艦や大トロ、煮ハマグリの握りが続き後半も楽しい。

不動前『不動前 すし 岩澤』の「太刀魚の塩焼き」


「太刀魚の塩焼き」。

東京湾産の特大サイズで脂の乗りも抜群の個体をシンプルに。

不動前『不動前 すし 岩澤』の握り4貫


サービス精神も旺盛で、「ひとりでいらっしゃっても楽しんでいただけるよう、心がけています」と親方。

不動前『不動前 すし 岩澤』の「あん肝大根」


「あん肝大根」。

大根の美味しい時季に登場する名物。あん肝の旨みが染みて抜群。

不動前『不動前 すし 岩澤』のつまみ3品、お椀1品


もう9年も不動前の住宅街で営業を続けるが、それもギラギラした都心のエリアは苦手だから。

不動前『不動前 すし 岩澤』の外観

不動前駅から歩いておよそ5分の住宅街に潜む隠れ家で、五反田駅から歩いても10分ほどというロケーション。そのためか、界隈在住の常連もかなり多く品川や目黒に勤めるビジネスマンの利用も


あらゆる点で気取りがなくおまかせの価格も含めて胸がすくほど潔いから、連夜の満席が続く、いまの人気がある。


【Check!】握り手を知る

不動前『不動前 すし 岩澤』の岩澤資之氏


学生時代の鮨店でのアルバイト経験が忘れられずSEの職を辞してこの道へ。

六本木で7年、赤坂『すし匠 齋藤』で8年修行。修業先で培ったサービス精神があり接客は朗らか。

不動前 すし 岩澤(不動前) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

▶このほか:伝説の鮨店の継承者の店や、ミシュラン星付きなのに3万円以下。広尾の鮨2軒

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