夏の恋 Vol.20

「結婚前の同棲しなければよかった」彼と付き合って4年。31歳女性が後悔する理由



翌日。

「いやぁすごい人だな〜」
「本当だねぇ」

私と龍之介は、予定通り浅草を訪れた。

雷門の前は、外国人や観光客が写真撮影をしたり、待ち合わせをしたり、とても賑やかだ。

『天麩羅 中清』でランチをして、人気の甘味処に並び、抹茶と小豆のかき氷をオーダーした。


デートらしいデートが久しぶりなのに、龍之介は今日もスマホばかり見ている。

「このあと、どうする?」
「う〜ん。もうお腹いっぱいだしなぁ…帰る?」
「早すぎだって。もうちょっと居ようよ」
「じゃあ、何するか瑞穂が決めて」
「……」

― 龍之介は楽しくないのかな。

朝イチで美容院に行き、着付けとヘアメイクをしてきたほど浮かれている私と、彼のテンションはまるで正反対だ。

「う〜ん。何か、体験系か、お買い物かなぁ」
「いいね!なんでもいいよ」
「なんでもいいと言われても…」

大手保険会社で総合職の私と、動画編集代行の会社を経営している龍之介。

今年で31歳になる私は、そろそろふたりの関係をステップアップさせたいと思っている。

しかし、そこには大きな壁がある。

私たちは完全にマンネリ化しているし、お互いを想う気持ちに差があるのも明らかだ。


― 龍之介は、私のことがもうそんなに好きではない。

繰り返す日々の中で、そう感じることが増えた。

だから、同棲の先にあるのは、別れなのか結婚なのか、そろそろ確かめたいと思っていた。この浅草デートは、未来の私のためのデートなのだ。

「江戸切子体験か、合羽橋まで移動して買い物するならどっちがいい?」

私は、溶けかけたかき氷を食べながら龍之介に聞いた。

「そこって、何があるんだっけ」
「お皿とか、調理器具…あとは食品サンプルも有名だよね」
「いいじゃん。何か新しい皿でも買おうか」

― 料理はしないのに、お皿に興味があるんだね。

私は、呆れながらも一緒に合羽橋へ移動した。

― ふたりで使う食器ね…。

新婚だったり、同棲したてのカップルだったら、楽しすぎる時間だろう。

けれど、龍之介との未来が見えない今、何を見ても欲しいと思えなかった。

この記事へのコメント

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No Name
夏の恋と言うより、ただ夏に別れを決意した話ですね。 特に感情移入も出来ず。日に3小説以上更新が有った頃ならもっと好意的な感想を持てたのかもしてませんが、最近少な過ぎるので、ふーんそれだけかと思ってしまいます。残念。
2024/08/16 05:3443返信1件
No Name
スマホから目を離さない男とよく4年も続いたなぁ。料理全然しないとかデート中に競馬レース見るのも勘弁だし、彼女の異変に全く気付かないもの、浴衣で暑くなったから帰って来たのに我先にシャワー浴びるとか。こんな男とうっかり結婚したら地獄。家事育児やるどころか手伝うスタンスすらないから。瑞穂も嫌な事は嫌と、きちんと伝えたりしてたのかなぁ?
2024/08/16 05:4843返信1件
No Name
龍ちゃんは最初瑞穂の外見に飛びついて声かけて来たから、美人は3日で飽きるじゃないけど...よく四年も続いたなぁと。身勝手過ぎるし気遣いゼロだしデート中競馬見なきゃとかテンション下がるし絶対結婚しない方がいいタイプ。しかし瑞穂が言う何年経っても褒めてくれたりデートを楽しみにするパートナーを探すのも難しい。
2024/08/16 05:2531返信3件
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