2024.08.18
進化を続ける中華の最前線。昨今の人気店はモダンな料理があり、コースも1万円前後と使いやすく、どこも空間がセンスに溢れている。
麻布台の『ふかひれ家』、西麻布の『中華食堂チャイデモ』、池尻大橋の『喜臨軒』、西麻布の『Ji-Cube』、乃木坂の『乃木坂 結』、渋谷の『ON the TABLE CHINESE』、学芸大学の『farm studio #203』、八丁堀の『中国菜 漢』など、おすすめの店ばかり!
いまこそ行きたい、東京都内にあるデート仕様のお洒落中華を、一挙にご紹介!
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イノベーティブな中華の解釈に、感性が研ぎ澄まされる
中華の達人・菰田欣也シェフが貴重なふかひれを存分に食べてほしいとの思いで昨年11月に開店した『ふかひれ家』。
店名はド直球だが、プレゼンテーションは艷やかな変化に富んでいる。その象徴となるのがメインの「毛鹿鮫の煮込み 焼き入れ」。
毛鹿鮫の歯ごたえのある繊維質をカリカリに焼きつけ、ソースで味わうのだが、トリュフ醤油ソースがかけられると、鉄板からパチパチという音が響く。
続いてトリュフが削られ、最後にはなんと金粉が舞う。音と香りの演出のあとに、柔らかさと香ばしさが同時にやってくる未体験のふかひれを堪能できる一品だ。
コースでは、その他にも調理法を変えながら、3皿のふかひれが登場。
「ふかひれの冷菜 葱ソース」はヨシキリザメの小さいふかひれを、鮮やかな葱ソースで。
他にも、目の前で生ハムをスライスしたり、フレンチのように繊細に盛り付ける様を眺められるのもカウンターの醍醐味といえるだろう。
中華の王道「小籠包」は、素材の色で鮮烈な印象に
小籠包は2ヶ月ごとに変わり、毎回素材によって色が変わる。「柚子の小籠包」は皮に柚子が練り込んであり、柑橘の香りが漂う。
すべて「ディナーコース」(¥15,400)より。
中華の王道をいく食材ながら、魅せ方は抜群に新しい。中華の新たな時代を感じさせる一軒だ。
フレンチで感じる高揚感を、中華で体験するという新しさ
クラシックからマニアック、大箱からワンオペ営業まで中国料理店が充実している港区で、個性的な料理をコースで楽しめると話題を呼んでいるのが、西麻布の『中華食堂チャイデモ』。
白金で人気を集めるモダンフレンチ『オルタナティヴ』の姉妹店とあって、食べ手の期待値を軽々と超える独創性あふれる料理はお手のもの。
シェフの酒井久徳さんは、専門学校時代から中国料理ひと筋。
日本人にもなじみの深い中華の王道の味に、和食やフレンチのエッセンスを盛りこんだ料理は見た目も美しく、“デートで中華”な夜を成功に導いてくれると話題だ。
アラカルトも可だが、その魅力を存分に堪能するならやはりコースで。
中華で多用されるオコゼに昆布締めという和の調理法を用いたり、北京ダックに見立てた魚のタコスが登場するなど、食べ進めるほどに気分が高揚していく。
「イカと大葉の冷製ビーフン」。
大葉とビネガーのソースをビーフンに絡めた一品。青山椒オイルのシャープな辛さもクセになる。初夏にふさわしいさわやかさ。
「穴子のタコス」。
北京ダックに使用する生地をタコスのトルティーヤに見立てたアイデア料理。サクッとフリットした穴子、エシャロットなどの食感や風味のコントラストが楽しい。
中華の技法にとらわれない自由なプレゼンテーションに心がときめく。
中華の王道「担担麺」は、芝麻醤と辣油で味に深みを
化学調味料を一切使わない優しい中華でありながら、その味わいは、鮮烈にふたりの記憶に残るはずだ。
自由度の高いプリフィクスで、小悪魔な相手を迎え撃つ
世界で最もメジャーな中国料理といえば、広東料理。海が近いことから魚介を多く用いる傾向にあり、日本人の好みに合う理由のひとつだが、そんな広東料理をスタイリッシュに楽しめる一軒がある。
池尻大橋駅に程近い246号沿いのビルの地階に店を構える『喜臨軒』は、小体な空間のカウンター越しで“食の喜びに臨む”店。
奥にはテーブル席もあるが、デートで押さえるべきは間違いなく、シェフの安澤 敦さんが料理を仕立てる様子を間近で見られるカウンター席だ。
6品か8品かを選ぶことができるコースは、なんとプリフィクス。ひとつの食材でも、その調理法を選べることもあり、ふたりでコースを組み立てる時間すらも楽しくなる。
名物は「春巻き」。湯気とともに季節によって変わる具材の香気がふわりと立ち上がり、美味しさも楽しさも増幅する。
ホタルイカの紹興酒漬け、自家製ピータン豆腐など序盤からお酒が進む「前菜盛り合わせ」。
蒸し鶏にはパクチーと山椒オイルで作る翡翠ソースを合わせて。
「天然車海老 発酵バターソース」。
大ぶりのエビを塩水につけてひと晩おいてから、しっとりと火を入れ、発酵バターのソースをたっぷりと回しかけながら仕上げる。
ぷりっとした歯ざわりと芳醇な香りが口いっぱいに広がり、幸せな気分に。
中華の王道「酢豚」は、豚トロで口どけ重視!
広東料理の王道に軸足を置きながら、既成概念を覆すようなベテランシェフならではの工夫に、口福指数はひたすら高まる。
西麻布の交差点周辺は華やかに美食を謳歌できるエリアだが、通りから奥まった一帯は一転して日本屈指の邸宅街となる。
『Ji-Cube』があるのは、まさにこの邸宅街の一軒家。その立地だけで、隠れ家としての艷やかさが増してくる。
入口をのぞくと、1階には鮮やかな赤のL字カウンターがお目見え。デートの高揚感を高めてくれる赤のカウンターは、唐辛子で発色されているというから面白い。
なじみのある料理だからこそ、アレンジの妙に唸る
ここで中華鍋を振るうのは、料理長の佐々友和さん。
師匠の菰田欣也さんが“天才”と評する佐々さんの料理の特徴は、誰もが知っている料理に季節感を加えながら、そのクリエイティビティで新しいものとして表現すること。
「高級食材を使った中華のコースも美味しいですが、当店はコースを1万円台にして、炒飯や担々麺、小籠包など、みんなが知っている料理で驚きを与えたいと思っています」と佐々さん。
アワビ炒飯にアワビの煮汁を吸わせ、海藻バターとトリュフで風味をつけた「リゾット炒飯」。
「和牛のチンジャオロース」は別々に調理されているため、肉は柔らかくピーマンは香りが立ってしゃっきり。
中華の王道「担々麺」は、夏に爽やかに食せる工夫が!
秘めやかな隠れ家で、サプライズのある王道中華という絶妙なバランスを楽しもう。
繊細な味わいが心地いい。この境地こそ真に成熟した証左
港区の中でもひときわ静かな乃木坂。閑静な住宅街に隠れ家のようにそっと佇むのが『乃木坂 結』だ。
2021年のオープン以来、着実にファンを増やし、食通や業界人などからの評判も高い。シンプルでエレガントな内装ゆえ、落ち着いて食事ができるのもデート向きなポイントだ。
『広尾はしづめ』でミシュラン一ツ星を獲得したシェフの増山 剛さんは、「日本の季節感を大切にしたい」と語り、その象徴ともいえるのが、和の八寸のような「前菜盛り合わせ」。
料理の内容に合わせて、盛り付けや花を添える演出などを施し、目でも楽しませる。
「アスパラのにんにく炒め」。
北海道ジェットファームのアスパラガスをオーブンでほくほくに焼き上げ、にんにくを効かせた塩味のあんかけに。
黄金のトビコをのせたジューシーな「ゴールデン焼売」。
土鍋で火を入れる大エビは旨みが凝縮している。バターのコクもアクセントの「海老の黒こしょう炒め」。
すべて「コース」(¥12,000)より。
中華の王道「あんかけ焼きそば」は裏メニュー
そして何よりこの店を象徴するのはマダムによるフレンドリーな接客だ。会話でゲストの心をほどき、行きつけの店のように心地良く寄り添ってくれる。
シェフも「喜んでもらえれば」とメニューにない料理のリクエストも厭わない。
初めてでも、まるでソワニエのように過ごせる。その濃密な時間が新時代の中華像を体現している。
食材やスパイスの斬新な組み合わせに、“東京中華”の先端を知る
中華デートを楽しむなら、選ぶべきはテーブル席よりカウンター。それも『ON the TABLE CHINESE』のような色気のある店であれば、その“効能”はさらに高まる。
夜になると静けさに包まれる渋谷の金王八幡宮近くにオープンして3ヶ月。早くも食通の話題を集めている理由は、シェフの平賀大輔さんによる創意あふれる料理にある。
中華の巨匠として知られる脇屋友詞シェフのもとで働き始めたのは19歳のとき。以来、20数年にわたって中国料理の技を磨き、かねてからの夢であったカウンター主体の店を構えた。
重厚感のある大理石のロングカウンターは、さながらホテルのバーのよう。ガラス板をはさんだ店奥でシェフが調理する姿を眺めれば、既定路線にとらわれない料理もいっそう美味しい。
「前菜盛り合わせ」。
しいたけと筍の湯葉巻きといった上海伝統料理から自家製の山椒マヨネーズを加えたスパニッシュオムレツ、五香粉を使ったパテ・ド・カンパーニュなど多彩。
一見すると、ピータンのようだが、黄身の部分はアヒルのたまごとエシレバター、昆布締めにしたホタテに竹炭を混ぜたパン粉をまとわせている。
キャビアの塩味、粉末状にした貝柱の旨みが口の中で一体に。
中華の王道「炒飯」は、食感も楽しい具材使いに注目!
幸福豚の焼豚や栃木県の上都賀から届けられるニラの茎を使った炒飯。粗みじんにした大根の漬物も食感のアクセントになっている。
料理はすべて¥6,600のコースの一例。
アラカルトも可、1万5,000円の杯数無制限(!)ペアリングも用意するなど、艶やかなカウンターで過ごす時間を想像するだけで、胸が高鳴る。
東京の中国料理店が多様性のもとに進化し続けている理由のひとつに、小体な店の存在がある。
席数を絞り、自由な発想で自身の料理を表現するシェフが増える中、時代の空気を汲み取った店づくりで人気を集めているのが、学芸大学の『farm studio #203』だ。
誰もが知る定番の料理にも、とことんセンスが宿る
カウンターのみのカジュアルな空間。
アラカルトが主体で、20種以上の野菜やナッツ類を使ったヴィーガンサラダに1個から注文可能な餃子をはじめとする愛らしいフォルムの点心、鶏ガラの出汁を使った濃厚な「tkg」など、さりげなくひねりを利かせた印象的な料理がそろう。
良く知るメニュー名なのにどこか新しい料理の数々に、ふたりの会話も大いに弾む。
「ヴィーガンサラダ」¥1,600。
ナッツやフルーツなどの美容に嬉しい食材をライスペーパーで巻いた“美ーガン”サラダ。
徳島県産の阿波匠豚を使用した餃子(1個¥350)は、1個から注文可能。
餡にはレバーとハツを入れて風味に奥行きを出す。センス良く添えられた松の実と自家製辣油ソースをつけて。
「tkg」¥1,870。カラスミを混ぜながら食べれば昇天!
中華の王道「麻婆豆腐」は、黒毛和牛の旨みに悶絶!
徳島県産・阿波牛のもも肉を1本仕入れて大ぶりにカット。
花山椒と青山椒のオイルのダブル使いでキレの良い辛さに仕上げている。
中国料理との相性が抜群なジョージアやスロベニアのナチュラルワインも扱っており、そのセレクトも店の自由度の高さを物語っている。
ゆるりとしたムードの中、オリジナリティが光る料理を堪能すれば、イマドキな中華デートを体感できるはずだ。
高度な技術をもってして完成される、洗練の広東料理
広東料理の“花形”のひとつといえば、焼味(シウメイ)と呼ばれる肉の焼き物。
読んで字のごとく焼きの技術とセンスが問われる料理とあって、点心師と同様に焼き物師という専門の職人が常駐する店も。
佃大橋近くに店を構える『中国菜 漢』の店主、藤井 寛さんは、「マンダリン オリエンタル 東京」の広東料理店『センス』で焼き物のセクションを任されたとあって、焼味に注ぐ情熱とこだわりには、並々ならぬものがある。
ディナーコースは10品が登場するが、焼鴨や漢方豚の窯焼叉焼をはじめとした料理は単品でも注文可能。
温度を使い分け、じっくり熱と味を入れた焼味は噛むほどにじゅわりと肉の旨みや甘みが広がる。
器やカトラリーにもこだわり、料理や盛り付けが最大限に映えるものを選ぶ。
季節野菜の冷菜。
大連産の特級極太くらげや、ねぎ生姜のタレと香りもさわやかな木姜油(ムージャーンユ)を合わせたソースで食べる蒸し鶏など。
「車海老の香港市場風炒め」。
ナンプラーや中国醤油で香ばしく炒めたエビの旨み、刻みパクチーと揚げにんにくの風味に食欲増進。
「漢方豚 本場の窯焼叉焼」。高温と低温を使い分け、もっちりとした食感に。
「杏仁露」。団子の中に濃厚な黒ゴマ餡を仕込んだ、中華風汁粉。
料理はすべて¥9,500のコースの一例。
中華の王道「フカヒレ姿煮」は、カニ味噌煮込みで濃厚に!
豚スネや豚皮からとるコラーゲンたっぷりの自家製白湯スープがベース。
カニ味噌やオイスターソースで煮込んで濃く深く仕上げる。¥8,800。
ピリピリと刺激的なサワーが進む!
しかし「町中華のように気楽に楽しんでもらえれば」と藤井さんが話すとおり、店の雰囲気は和やかだ。
火を巧みに操る、次世代の名手が生み出す中華で過ごせば、大切なあの人も自然と笑みがこぼれるはずだ。
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