2024.06.20
毎月、映画とワインのマリアージュを提案していく連載、ほろ酔いシネマ。
今月は、主演のノオミ・ラパスが1人7役に挑んだSFアクションスリラー『セブン・シスターズ』。
近未来を描いたこの作品に合わせて楽しむ1本とは?
▶前回:Vol.15「『フレンチ・キス』×日本のマスカット・ベーリーA」
ノオミ・ラパスが1人7役。近未来のSFスリラー
柳:ねえねえ、クラリン。もし双子の姉妹がいたらどうする?
嵩倉:その日のコーディネートに悩んだら、マネキン代わりにいろいろ着せたりしてみたい。
柳:それじゃ、7つ子なら?
嵩倉:えっ、7つ子?
柳:今回、新谷さんからすすめられた映画がそれ。ノオミ・ラパス主演の『セブン・シスターズ』。
前回は明るいタッチのラブコメだったけど、今回の映画は暗く、バイオレンスシーン満載のSFスリラーで、ノオミ・ラパスの1人7役の演技が見どころでした。
新谷:髪形とメイクだけで、人ってこんなにも変われるんだなとびっくりしました。しかも7人の性格を演じ分けるノオミ・ラパスが素晴らしい!
嵩倉:どんな映画なんです?
新谷:爆発的な人口増加と食糧危機から、一人っ子政策が取られる近未来。ふたり目以降の子どもは、食糧問題が解決するまでの間、当局により冷凍保存されることになってます。
しかしある日、セットマン家に7つ子の姉妹が誕生。政府の方針に反対する祖父は、姉妹に月曜から日曜まで曜日の名前を与え、自分の名前の日にだけ外出を許可します。
家の中では7人がそれぞれ自由な生き方をしてもいいけれど、一歩外に出たらカレン・セットマンというひとつの人格を演じる7姉妹。
そして30歳になったある日、長女の月曜が帰宅せず、姉妹の日常に狂いが生じ始めるというストーリーです。
今月のワインシネマ『セブン・シスターズ』
人口過多と食糧不足によって一人っ子政策が敷かれるディストピアが舞台。
一卵性の7つ子として生まれた姉妹は、各曜日の名前を与えられ、7人でひとつの人格を演じて生きてきた。ある日“月曜”が帰ってこないことで彼女たちの日常が狂い始める。
ノオミ・ラパスが1人7役に挑んだSFアクションスリラー。
独創的な世界観に迷い込む!ディストピアに生まれた7つ子はどう生き抜くのか
『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で知られるスウェーデン出身のノオミ・ラパス。彼女が1人7役を演じたことがまずすごい!
髪形とメイクでこんなにも変わるのかと7人のキャラ設定も面白い。
◆
柳:主演のノオミ・ラパスで僕が印象に残ってる映画は、『エイリアン』の前日譚『プロメテウス』です。
この作品で彼女が演じたエリザベス・ショウ博士もタフな女性で、7姉妹の中ではパワフルな水曜や木曜の姿に重なりますよね。
ただ、ふとした疑問なんですが、遺伝子的にほぼ同じ一卵性の7つ子が、服装の趣味や性格などここまで違うものかな?
新谷:よく分かりませんが、完全なクローンではない……ということじゃないかしら。
銘醸畑のクローンなら、すごいワインが生まれる?
柳:なるほど。実のところワインの世界では、クローンってよく話題に上るテーマなんです。
というのも、ブドウの樹から小枝を取ってそれを畑に植えれば、同じ形質のブドウがなる。つまり、クローンですね。
嵩倉:それなら、銘醸ワインの畑で良い実をつける樹から枝を切り出し、それを自分の畑に植えればすごいワインができちゃったり?
柳:実際には畑の土壌や気候がワインに与える影響が大きいから、それほど単純な話ではないけどね。
新谷:同じクローンでも、環境によって出来上がるブドウの性質が異なる。セットマン家の7つ子と同じように。
柳:特にクローンが重要視されるのがピノ・ノワールで、ニュージーランドには面白いクローンがある。そこでクラリン、世界一のピノ・ノワールといったら?
嵩倉:ロマネ・コンティです。
柳:1970年代半ば、ある男がドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)から採取した苗木をニュージーランドに持ち込もうとした。ところが税関で見つかり没収されてしまう。
没収したのはエイベルという職員で、彼は趣味でブドウ栽培をしていて、検疫通過後、自分の畑にこれを植えた。
この苗木の存在は、のちにマーティンボローでアタ・ランギというワイナリーを興すクライヴ・ペイトンの知るところとなり、エイベルからこの苗を譲り受けたクライヴは、アタ・ランギの畑にも植えつける。
優れた素質を持つこの苗木は、現在、エイベル・クローンと呼ばれ、広く流通しているよ。
嵩倉:即ロマネ・コンティのようなワインができるわけではないけれど、ロマンを感じさせますね。
柳:だから今回はアタ・ランギの「クリムゾン・ピノ・ノワール」。いまではアタ・ランギもエイベル以外のピノ・クローンを植えたりしてるけど、元祖エイベルに敬意を表して。
ところで冒頭の質問。クラリンに7つ子姉妹がいたら?
「Ata Rangi Crimson Pinot Noir 2022(アタ・ランギ クリムゾン・ピノ・ノワール 2022)」
マリアージュをお届けするのはこの3人!
幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト。7つ子なら仕事を7人で分業。と言いたいとこだけど、きっと仕事が7倍になるだけ。
映画を中心に書いたり取材したり喋ったり。この映画のノオミ・ラパスのようにいろいろな髪形に挑戦したいけど、過去に『ゴースト』のデミ・ムーアをまねたが失敗。
本連載の担当になって7年目に。ワインの知識を少しずつでも増やすべく、柳氏にしがみつく日々。3姉妹の末っ子で甘い蜜を吸ってきたから、何つ子でも一番下がいい。
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