メグ・ライアン主演映画『フレンチ・キス』。ワイン片手におうちシネマを

毎月、映画とワインのマリアージュを提案していく連載、ほろ酔いシネマ。

今月は、メグ・ライアン主演のロマンチックコメディ『フレンチ・キス』。

ブドウ畑のシーンもあるこの作品に合わせる1本とは?

▶前回:Vol.14「『ジョー・ブラックをよろしく』×フランスのプティット・フルール」

機内での出会いが発展。ブドウ畑もカギのロマコメ


新谷:柳さん、今回の海外出張はどちらまで?

:イタリアのフィレンツェです。キャンティ・クラッシコなどトスカーナ地方のワインを試飲しに。

嵩倉:最近は機内Wi-Fiも完備されてるので、柳さんがどこにいようが、原稿の催促ができて便利になりました。うひひ。

:ひぃ〜。クラリンたら鬼!

新谷:それで今回はフライトの機会が多い柳さんに、飛行機エピソードの映画を機内でご鑑賞いただくことにしましたよ。

:はい、新谷さんにおすすめいただいた映画をスマホにダウンロードして、往路、機内食サービスの時間に観ました。

嵩倉:で、その映画は?

:機内パニック映画だったりしたら、シャレにならないなと思ったんだけど……。

新谷:そんな!私はクラリンほどドSじゃございませんので(笑)。映画は90年代のロマコメ女王、メグ・ライアン主演の『フレンチ・キス』です。

:タイトルがタイトルなんで、お色気シーン満載の映画かと思いきや、メグ・ライアン演じるアメリカ人女性ケイトのどたばたコメディーでした(笑)。

ところで相手役、フランス男のリュックを演じるのは、フィービー・ケイツの旦那のケヴィン・クライン。あまりにもフランス男に成り切ってるから、最初はフランス人俳優を当ててるのかと思ったほど。

嵩倉:それで、その映画に飛行機内のシーンがあるんですか?

新谷:ふたりが知り合うのが飛行機の中なんです。

ケイトの婚約者チャーリーはパリに単身出張中、フランス人女性と恋仲になり、ケイトとの婚約を電話で一方的に破棄。諦めのつかないケイトはチャーリーを取り戻すべくパリ行きの飛行機に搭乗。

そこに現れたのがフランス人のリュックで、彼はケイトが機内で眠りこけてる隙に彼女のバッグにあるものを隠し、それを取り戻すため、ケイトのチャーリー探しを手助け。

列車に乗ってカンヌへと向かい、途中、リュックの生まれ育った村に立ち寄って……といった展開です。

今月のワインシネマ『フレンチ・キス』


1990年代の元祖ロマコメ女王、メグ・ライアン主演のロマンチックコメディ。

出張中の恋人から突然別れを告げられたケイトは、飛行機恐怖症を乗り越えて、カナダから彼のいるフランスへ。

飛行機で隣になったフランス人のリュックが、ケイトのバッグに“あるもの”を隠したことで予想外の旅と恋が始まり……。

映画『フレンチ・キス』のイメージイラスト

メグ・ライアンに惚れる!ブドウの苗木がつなぐ運命的なふたりの出会い


当時のメグ・ライアンの可愛さとコメディエンヌとしての演技力に魅了されます!

ケイトとリュックをつなぐ、ブドウの苗木というアイテムがユニークで、フランスの名所、旅先で始まる恋にもドキドキ!



嵩倉:新谷さんがこの映画を選ばれた理由は?

新谷:ロマコメの王道的面白さに加え、劇中、ブドウ畑のシーンがあるからです。リュックの弟がブドウ園のオーナーで。

:そう。リュックがケイトのバッグに隠したものはふたつあって、そのひとつがブドウの苗。しかもそれがアメリカのブドウで、なるほど、台木用の苗かと思ったら、どうもそうではないらしい。

嵩倉:台木用の苗?

30年後の未来を予見。交配品種が産地を救う


:ヨーロッパのブドウ畑は19世紀後半にフィロキセラという害虫の被害を受け、100年以上前からこれに耐性のある北米系ブドウ品種を台木として接いでいる。

つまり実のなる部分は欧州系品種、根っこは北米系品種のハイブリッドなんだ。

嵩倉:でもそうではないと。

:リュックのセリフでは「この米国産のブドウを他の品種と交配させ、新種を開発する」とある。

嵩倉:ほ〜、それで?

:この映画が公開された1995年に観てたら、「そんなアホな。プライドの高いフランス人が交配品種なんて植えるはずない」と言ってたと思う。

ところが今、気候変動の影響からフランスのあちこちでこれまでにないほど病害が広がるようになり、いくつかの産地では、掛け合わせで病気に強くした交配品種の栽培が、公式に認められるようになってきた。

新谷:すると、この映画は30年先の未来を予見していたと?

:そう言えるかもしれない。だから、今回のワインはマスカット・ベーリーA。湿潤な日本の気候でも育つよう、新潟の岩の原葡萄園で川上善兵衛さんが開発した交配品種だ。

このワインはそのワイナリーで、有機栽培のブドウから造られる野心作!

「マスカット・ベーリーA 2021」

「岩の原葡萄園」の「マスカット・ベーリーA」


日本の厳しい環境でも育つよう、北米系のベーリーと、欧州系のマスカット・ハンブルグを掛け合わせて誕生した、日本固有の品種がマスカット・ベーリーA。

このワインはその生まれ故郷、岩の原葡萄園で有機栽培したブドウを醸造。イチゴのアロマが香り、まろやかな味わい。

¥4,950/岩の原葡萄園 TEL:025-528-4002



嵩倉:ところで柳さん、帰りの機内で原稿は仕上げてくれました?

:クラリン、鬼!

マリアージュをお届けするのはこの3人!

ワインジャーナリスト・柳 忠之氏


幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味のあるコメントに定評があるワインジャーナリスト。ちなみに、映画のタイトル『フレンチ・キス』の意味は、ラストまで観てやっと分かるよ!

映画コラムニスト・新谷里映氏


映画を中心に書いたり取材したり喋ったり。90年代のロマコメもメグ・ライアンも大好き。この映画で生まれたヘアスタイル“メグ・ボブ”をまねたら私にも運命の恋が!?

東京カレンダー編集部・嵩倉伶奈


本連載の担当になって7年目に。ワインの知識は着実に積み上がっていると信じ、柳氏にしがみつく日々。メグ・ライアンみたいなヘルシー美女にはどうやってもなれそうにない。

▶このほか:焼き鳥を“美味しく食べるコツ”とは?レジェンド的な名店『鳥よし』の大将に聞いた!

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