2010.10.21
流行るお店の理由 Vol.2温かくて力強い。全開の女子力。
ある意味で体育会系ともいえる料理人の世界に挑む女性シェフには
女性ならではの温かな視点と強い心がある。
※こちらの店舗は現在移転しております。掲載情報は移転前の情報です。
詳しくは、下記レストラン情報をご確認ください。
カウンターからすべてが見渡せるピカピカのキッチンでテキパキと調理しつつ、笑顔でゲストと語る秋元さくらさん。
「自分の作った料理を食べていただいて喜んでもらう、その笑顔を間近で見るのが大好きで」とオープンキッチンにした理由をこう語る。接客やサービスの魅力に目覚めてから料理人を志し、「いつかきっと」を貫いて叶えた念願の城だ。
さくらさんが尊敬するシェフのひとりに『オー・ギャマン・ド・トキオ』の木下威征シェフがいる。「調理師学校の外来講師としていらっしゃっていて、そこで出逢ったのが最初でした」
新宿のビストロカフェで研鑽を積む間も、定期的に木下シェフの店に通って仕込みなどを勉強した。「技術だけでなく、心を込めて作ることを学びました。出店の際も、いろいろとアドバイスを下さった」
店内は、白と黒、木目の茶をバランス良く配して、清潔で明るい雰囲気。女性ひとりでも入れるよう女性の視点で作った。例えば、トイレに飾られた生花。週に2回のペースで替える黒板メニュー。
「ワインセラー以外は全部私のセレクト」と言って笑う。ソムリエはご主人の担当。別の職に就くが、この店のために資格を取得。昼はこれまでの仕事をこなし、夜はお店に駆け付けてソムリエになる。
「かわいい店内に、イカついソムリエ。そのギャップも当店の楽しみのひとつなんですよ」
芯のある人は美しい。信念を尋ねると「喜んでいただきたいという、おもてなしの気持ちは誰にも負けない」ときっぱり。いや、料理だって、素材を活かした優しい味付けや、女性ならではの美的センスを感じさせるドレサージュで、すでにひとつの世界を築いている。その一方で、ボリュームは驚くほど十分。満足度も高いのだ。
さくらさんは笑って言う。「とにかく今は毎日が一所懸命」、と。
もしも、美味しいものを食べたいと願うことが罪だというのであれば、喜んでその報いを受けるとしよう——。
今年5月にオープンした『オー・ぺシェ・グルマン』。店名の由来をシェフに訊ねると、「フランス語で“食いしん坊の罪”という意味なんです。食べることの罪深さという風にも、解釈できるかもしれません」と意味深な答えが返ってきた。
この店で腕を揮うのは、惜しまれつつも閉店した下北沢の『レ・リヤン』で厨房を切り盛りしていた吉澤美智子さんだ。フランス南部のレストランでの修業経験もあるが、「ほとんど遊んでいたようなもんです」と屈託なく笑う。
「30過ぎの女性ということで最初は珍しがられました(笑)。でも、みんな穏やかで優しくって、スッと溶け込むことができた」と言う。
短大卒業後、調理師専門学校へ入学した。都内のフレンチ店で働いていた時は、多忙すぎて体調を壊し「もう、やめよう」と思ったこともある。けれど、夢をあきらめなかったのは、自分にはこの道しかないという、強い気持ちがあったからだ。その信念が感じられる家庭的なフレンチには、料理への愛情と、ゲストに対する深い感謝が込められている。
※こちらの店舗は、現在閉店しております。
スタッフは女性のみで4人。和気藹々とカウンターの中で調理し、時にはゲストのグラスにワインを注ぐ。彼女たちの作る、快活な空気が微笑ましい。
「バルセロナに行った時、市場で働く女性たちが本当に活き活きとしていて。彼女たちの、良い意味で力の抜けた仕事ぶりに感動したんです。その活気を表現したかった」と笑って語るのは女将の岩倉久恵さん。ここは人気店『立喰酒場 BUCHI』が手掛けたバル。バルと言ってもメニュー構成は柔軟で、トルティージャなどの定番がある一方、カツレツやオムライス、さらには揚げ出しといった、和を思わせる料理も揃う。
どれもスタッフが全員で考え、試食を重ねて生み出した自信作。スパニッシュだ、イタリアンだというカテゴライズの垣根を越えて、純粋に美味しいワインと、美味しい料理を提供したいと考えているのだ。これはスタッフ全員が共有する想い。皆が同じ方向を目指しているからこそ、4人の連携は自然体となり、こちらも気兼ねなく身を委ねられる。
シェフの二反田久見子さんは言う。「自分たちが楽しんでいないとお客さまも楽しめないよ」。長く愛される店の秘密がここにある。
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