三人の男たち~夫婦の問題~ Vol.3

神谷町のタワマンに住む31歳女。土日も不在の外コン夫に、ワンオペ育児に不満があるも…

元モデル・辻カリン(31)の心の内


「コメント、琴ちゃんからだ〜!」


日曜日の午後6時。神谷町にある高層マンションの一室。

カリンがリビングのソファでインスタのコメント返しをしていると、ミナトが帰宅した。

「おかえり〜!今日は意外と早かったね」

「まあな。つっても今日、日曜日だし。普通なら労基に引っかかるわ」

外資系コンサルタントに勤め、毎日遅くまで休日返上で働くミナトは、不機嫌そうに答える。しかし、3歳になる娘の姿を見て、ふにゃりと表情を崩した。

「パパ帰ってきたよー。今日は何してたの?」

最近のミナトは常にイライラしている。けれど、娘の前でだけは優しいパパの顔に戻る。

正直、土日も潰れるほど仕事をしないでもいいのに、とカリンは思う。

昔一度だけ、そこまで働く必要があるのか聞いたことがある。

「そうしないと、どんどん周りから遅れんだよ。俺がいるのは、生きるか死ぬかの戦場と同じ」

大袈裟な答えが返ってきて、今の会社で働くことにプライドを持っている夫に、これ以上何を言っても無駄だということにカリンは気づいた。

だから、土日も家にいない件については、しばらく見守ることにしている。

カリンがリビングを片付けていると、ミナトが言った。

「なんか散らかってない?」
「あ、ごめん。インスタの写真撮ってたから」
「何?まだやってんの?ってか、それ。また新しい服買ったの?そんな必要?」
「ううん、これは…」
「まあいいわ、お腹減った。ご飯まだ?」
「今温め直すから、ちょっと待って」

カリンが慌ててキッチンに行くのを横目に、ミナトははぁ、とため息をつく。

それでも…。

「うん、美味い。俺、カリンの作る生姜焼き、好きなんだよな」

この一言で、カリンはミナトからの嫌味をなかったことにする。

「そういえば、明後日出張入ったわ。2泊で」
「え、また?あ、来週の土曜日!前から言ってたレストラン、予約してあるからね?」
「あー、来週?俺いないわ。キャンセルしといて」

その時、ブブブとミナトのスマホが振動した。

着信の知らせに、カリンはドキッとする。

― 誰から…?

ミナトは慌てて通話ボタンをタップした。

「Hello? Yeah, how’s it going? Oh sure, let me check…」

大事な仕事の話のようで、奥の部屋へと移動した。

ふぅーっとカリンは大きく息を吐く。一瞬、2年前の嫌な記憶が蘇ったのだ。


ミナトが、浮気未遂をした時のこと。

当時ミナトは、インターンで来たある大学生と2人で飲みに行くなど、良い仲になっていた。

その時はミナトの「彼女と体の関係はなかった」という言葉を信じて、その話は終わらせた。

だが、最近の帰りの遅さや休日出勤、レスが続いていることで、カリンはまたミナトを疑い始めているのだった。


▶前回:広尾に住む、共働きエリート夫婦。新婚当初から寝室を別にしたけれど、ある問題が…

▶1話目はこちら:「実は、奥さんとずっとしてない…」33歳男の衝撃告白。エリート夫婦の実態

▶︎NEXT:4月26日 金曜更新予定
琴子と幸弘は初めて向き合うが、問題はレスだけでなくもっと深刻で…

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この記事へのコメント

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No Name
カリンはなぜ大事な仕事の電話だと思ったんだろう? カジュアルな会話だし金髪美女と不倫関係♡かもしれないのに😆
2024/04/19 05:2027
No Name
何なんだ?ミナトの亭主関白ぶりは!! 戦場で瀕死状態だから家に帰ってきて威張るんだろうけど。あと幸弘の両親、1泊2日してくなんて恐ろしいわ。もう教科書通りの前時代的な言動過ぎて白ける。
書き手はどっぷり昭和を生き抜いた方なのだろうか...
2024/04/19 05:2626
No Name
午前10時のあとに「早朝」から押し掛けてきたと書いてありました。 文章に起こす際の目安として早朝は 夜明けから1-2時間 とされており、だいたい午前5時から午前7時頃まで。 作家さんなら知っておいた方がいいと思います。
2024/04/19 05:3322返信5件
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