アオハルなんて甘すぎる Vol.7

「年下の男の子たちにチヤホヤされよう」西麻布での飲み会に誘われ…

どうせ口ではかなわないのだからと無視を決め込んだ私に、かまわず祥吾は話しかけてくる。

「LINE。パリ楽しかったねって何あれ?」
「…」
「今から待ち合わせ?」
「…」

横断歩道の信号が青になり、その青を知らせる音楽が鳴り始めると、大輝くんが顔を上げた。私と目が合うとほほ笑み歩き出したが、隣の祥吾に気がついたのか少しけげんな顔になる。

祥吾から離れたくて、大輝くんの方へ歩きだした時、祥吾に手首をつかまれ歩道に戻された。

「宝、質問に答えてよ」
「…離してください」

この人は、もう、ほんとに、何がしたいの…!と私が祥吾の手を渾身の力で振り払った瞬間、宝ちゃんと声がして引き寄せられた。

「お仕事お疲れ様」

気がついたらすっぽりと、相変わらずいい香りのする大輝くんに抱きしめられていた。挨拶のハグにはだいぶ慣れたとはいえ、ここではちょっと困ると慌てて身をよじると、あ、会社の側だったね、ごめん、と大輝くんは笑った。

大輝くんの腕からすり抜けた私が見たのは、フリーズしている祥吾の顔だった。付き合ってからの5年で一度も見たことがない、なんだか間抜けな表情で、私ではなく大輝くんを見ている。その視線を気にせず、こんばんは、宝ちゃんの会社の方ですか、と大輝くんは言った。

「…そちらは…どちら様ですか?」

問われたことにハッとしたのか、いくらか表情を整え、祥吾はそう聞いた。自分への質問には答えないスタイルがなんともふてぶてしい。

「宝ちゃんには大輝くん、って呼ばれてます。友坂大輝です」
「宝とはどういう関係ですか?」
「呼び捨てにしちゃうってことは…やっぱり宝ちゃんの元カレ?」

そう言った大輝くんが、祥吾ではなく私を見たのでしぶしぶ頷いた。

「あなたが元カレさんかぁ」
「…宝とはどういう関係ですか、って聞いてます」
「今からデートに行く関係です。昨日までパリで一緒だった関係でもあります」

ね、と私の肩を抱き寄せた大輝くんに…というよりこの状況に動悸が高まる。初めて見る大輝くんの挑発的な態度にも、それに煽られた祥吾の表情が変わっていくことにもソワソワハラハラが止まらない。

「…なんのつもりか分からないけど、コイツをからかうのはやめてください」
「宝ちゃんをコイツとか言わないでもらえます?それにオレが宝ちゃんをからかってると?」
「あなたみたいな人が…宝とデートとかありえないでしょう?」

― うん、そう。祥吾、正解です。

私は心の中で突っ込みを入れる。だって疑似デートだからねと思いながら、もう行こう、と大輝くんを促した。そうだね、と言いながら大輝くんは動かず…というより、さらに一歩、祥吾に近づいて笑った。

「あなたに会ってみたかったんですよ。自分が浮気したくせに、宝ちゃんに呪いをかけた最低な男に。でもまあ…やっぱり所詮、このレベルか、って感じですけど」
「…このレベルって、どういうことだよ」

この記事へのコメント

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No Name
元カレの勝手さにドン引き。 時期尚早って自分は既に新しい彼女いて社内公認なのに、何言ってるんだか。 大輝と鉢合わせて彼がガツンと言ってくれてスカッとした。
2024/03/09 05:3766返信3件
No Name
宝、大輝に会えて良かった。元カレも既に社内恋愛中なら、宝を構うのは止めよう。ひたすらカッコ悪い。
2024/03/09 06:1639
No Name
大輝くんがかっこいい(笑)
2024/03/09 06:4635
もっと見る ( 11 件 )

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