2024.02.21
SPECIAL TALK Vol.113
これから求められるのは「エモーショナルな仕事」
金丸:探究学舎の話に戻りましょう。気になるのが、子どもを通わせたいと思っているのは、父親と母親のどちらですか?
宝槻:母親ですね。
金丸:そんな気がしていました。大企業に勤めている自分の旦那さんを見て、「これじゃいかん」と思っているのかもしれない(笑)。まあ、そうじゃなくても、女性の方が「これから先は、いままでと同じじゃダメだ」と感じていると思います。
宝槻:親御さんには大きく分けて、2タイプいらっしゃいます。ひとつは、写真家や料理人のように好きなことを仕事にされている方。もうひとつは、両親ともに高学歴という方。
そういう方たちは「もう自分の再生産はいいんじゃないか」と考えているようです。
金丸:周りに言われるままいい大学に行き、大企業に入ったけれど、そのリターンがそこまで魅力的ではなかった、ということですかね。
宝槻:そういうことですね。「あるがままの個性を尊重して、好きなことに夢中になってほしい」。そう感じている40代の親御さんは、確実に増えています。
金丸:では、団塊ジュニア世代はどうですか?
宝槻:僕の感覚だと乖離がありますね。受験戦争の最初の世代ですし、生き抜いてきたという自負がある。だから「子どもも自分と同じような道を歩くべきだ」と考えている方が多い。
金丸:団塊ジュニアは、20歳前後からずっとデフレで、世界の成長からも取り残されてきたのを目の当たりにしてきた世代です。それなのに軌道修正できないなんて、私からすればあり得ない。
宝槻:うちの生徒たちにも話しているのですが、世の中の仕事は「ファンクショナルな仕事」と「エモーショナルな仕事」の2種類があります。電気、水道、通信などのインフラ、自動車やITなどは、生活を便利にするファンクショナルな仕事です。
金丸:アートやスポーツが、エモーショナルな仕事ですか?
宝槻:そうです。音楽や演劇、料理など、人を感動させる仕事ですね。20世紀はファンクショナルな仕事が経済を支えていました。
金丸:その担い手が大企業だったから、大企業に入ることに一定のメリットがあった。
宝槻:でも、これからの時代は、ロボットやコンピュータに代替されていくはず。一方、エモーショナルな市場は、どんどん拡大しています。
金丸:確かに市場は拡大していますが、それで食べていける人の数が少な過ぎるのが、すごく問題だと感じています。いまはほとんどの制度が、ファンクショナルな仕事をする人向けに設計されているので、エモーショナルな仕事をする人たちと、それを支える人たちをもっと増やさないといけないし、制度も作らなきゃいけないと思います。
宝槻:おっしゃるとおりです。大企業のサラリーマンになって安定を得るというのは、もはや昔話だと思っています。その方針で行く限り、日本の国際競争力は衰えていくばかりです。
金丸:学校教育が「国語・算数・理科・社会」の点数にこだわっている限りは、日本はダメですね。
宝槻:日本が優位性を持っているのは、アニメや漫画じゃないですか。これって、日本の文化には競争力があるということなんです。最近の私の言い方だと、「テロワール」。
金丸:土壌ですね。ワインはテロワールと結びついているから、同じブドウの品種でも、違うワインができあがる。
宝槻:ワインにお詳しい金丸さんの前では、釈迦に説法かもしれませんが、文化は100年、テロワールは1000年と言うらしいです。日本はテロワール抜群の国だからこそ、それを発信できるエモーショナル系の人材を育てないといけません。
金丸:それが、探究学舎の役割なんですね。
宝槻:そのつもりです。エモーショナル系の仕事は、好きなこと、得意なこと、やりたいことをとことんやる、ということです。さかなクンさんや大谷翔平選手なんて、分かりやすいじゃないですか。
金丸:誰も彼らに「これをやれ」とは言っていませんからね。
宝槻:僕は30年後、50年後に、そういう人たちがあふれかえっている世の中を作りたい。そのために、「この世界には驚きと感動の種があちこちにあるんだよ」ということを、子どもたちに教えたいんです。
金丸:日本の未来に希望を持ってもいいですか?
宝槻:希望はありますよ。親世代の意識が変わりつつあるし、エモーショナルな仕事の世界においても、イノベーションを起こそうという気概のある人たちがたくさん出てきていますから。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.11.21
Vol.122
~自分の体を認めることが、自分を好きになるための第一歩になる。~
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2023.12.21
Vol.111
~いつだって新しい人に出会いたい。シンプルな好奇心が新たな交流を生んだ~
おすすめ記事
2024.01.19
SPECIAL TALK Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
- PR
2024.11.28
仕事に追われる30代男が先輩に教わった、日常を楽しむ贅沢。プレミアムハイボールが楽しめる人気店6選
2016.10.17
彼が言うなら間違いない!松岡修造が伝授する“デキる人”になるための10ケ条
2016.08.05
銀座だけど堅苦しくない接待に!気軽に使えてビジネスに効く店4選
2016.07.05
年収1,000万超の秘密とは!人気職業"総合商社"の給料の実態に迫る
- PR
2024.11.27
煌びやかなムードがマストな大人女子会は、青山の絶景を望むダイニングバーで決まり
- PR
2024.11.26
【参加者募集】ビールを愉しもう!東カレ初の「クラフトビール」イベントin代官山を開催
2019.12.20
恵比寿で飲み会なら個室でワイワイ盛り上がろう!仲が深まる名店6選
- PR
2024.11.29
2024年の年末休暇は、箱根の温泉×ふぐ懐石で贅沢したい!ご褒美デートにぴったりなホテルとは
- PR
2024.11.29
東京タワーの麓で体験した、ワインと豆腐を合わせたペアリングが斬新過ぎた!
東京カレンダーショッピング
『かに物語』:〆まで楽しめる雑炊の素付き!蟹の旨みがたっぷりと溶け出すかに鍋セットミニ
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『東京京橋おばんざい醸』:肉を引き立てる3種の塩!A5黒毛和牛を使ったローストビーフ
『かに物語』:海老・帆立・蟹!ベシャメルソースに、各種海の幸をトッピングした贅沢グラタン
『UMIKARA』:薄切り・厚切り食べ比べ!特製出し汁で味わう若狭湾真鯛の鯛しゃぶセット
『パンツェロッテリア』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『オリベート』:黒トリュフ香る、口当たりクリーミーな究極のティラミス
『ミホ・シェフ・ショコラティエ』:日本を代表するショコラティエ―ルが作る、 ショコラ好きのための濃厚ガトーショコラ
『LOUANGE TOKYO』:アート感溢れるビジュアル!口溶けなめらかな大人の生チョコレートエクレア(6種)
『レザンファンギャテ』:濃厚でコクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
ロングヒット記事
2024.11.25
東京レストラン・ストーリー
友人の結婚式で同級生に再会。2次会で盛り上がり、そのままふたりで抜け出し六本木で…
2024.12.01
男と女の答えあわせ【A】
「結婚したい」と強く願っていた32歳女。しかし彼氏にプロポーズされた瞬間に、冷めたワケ
2024.11.29
年収4,000万男子の恋愛事情
「しんどい…」32歳男が幻滅した、付き合いたての彼女からのLINEとは
2024.11.30
男と女の答えあわせ【Q】
交際3年。32歳の結婚願望強めの彼女にプロポーズをしたのに、男が振られたワケとは
2024.11.28
かわいく生きられない女たち
「あの人だって結婚してるのに、私は…」他人の薬指の指輪を見て落ち込む、28歳ワセジョの憂鬱