SPECIAL TALK Vol.112

~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


庭師だけじゃない。役者として大舞台を経験


金丸:さて、村雨さんのもうひとつの顔、役者の話も聞かせてください。最近では、NHK大河ドラマ『どうする家康』では三浦按針役を、同じくNHKのドラマ『大奥』ではオランダ人と日本人の混血である蘭学者の役を演じていらっしゃいました。

村雨:ありがたいことに、2023年はいろいろとお話をいただき、しかも時代劇をやらせてもらえて、歴史好きとしては最高でした。

金丸:三浦按針は日本に漂着した元イギリス人。村雨さんと少しだけ境遇がかぶりますね。

村雨:おっしゃるとおりです。僕は按針を尊敬していて、以前から演じてみたいと思っていました。出番はちょっとでしたけど、夢が叶って嬉しかったです。『大奥』ではメインの一角に抜擢され、撮影期間は3〜4ヶ月。とても充実した日々でした。

金丸:『大奥』では長崎出身という設定で、方言にも挑戦されていましたね。

村雨:死ぬほど大変でした(笑)。でも、日本の方言はバラエティ豊かで面白いです。

金丸:スウェーデンにも方言はあるんですか?

村雨:ありますよ。日本で活躍している人でいうと、LiLiCoさんはストックホルム出身で標準語。一方、僕は南部出身で、かなり訛っているので、LiLiCoさんには「田舎もん」ってバカにされています(笑)。

金丸:日本人からすれば分からないでしょうけどね(笑)。しかし、庭師と役者って、全然違う仕事で大変じゃないですか。

村雨:二足のわらじ状態ですが、いろいろなことに挑戦させていただいているからこそ、中途半端で終わらせたくないです。僕は筋トレが趣味なんですが、筋トレも持続しないと意味がありません。

金丸:よく分かります。私も大したメニューではありませんが、毎朝、筋トレをしています。

村雨:それに、全然違う仕事に見えますが、観察して、解釈して、アウトプットを出すというクリエイティブな工程は、庭師と役者に共通しています。

金丸:では、相互にいい影響が見込めそうですね。

村雨:20代後半から30代前半で、自分の生きる道が見つかったように思います。それをさらにはっきりさせていきたいですね。

金丸:庭師としては、今後どのように活動していきたいですか?

村雨:技術を高め知識を深めて、もっともっと向上させていきたいです。

金丸:一人親方としていい仕事をすれば、依頼者は喜んでくれる。だけど、たくさんの人に日本文化としての庭を見てもらいたいなら、それを実現するためのかたちを模索する必要もあるのでは、と思います。たとえば、庭師を組織化するとか、会社を作るとか。

村雨:それはそうですね。僕は庭師という肩書にこだわっているわけではありません。現場に出て庭を造ることは楽しいけど、デザインだけを手掛けて、それをほかの庭師にかたちにしてもらう、という関わり方もいいかもしれませんね。

「行っていい」「やっていい」。応援があったから冒険できた


金丸:ちなみに、村雨さんに弟子入りしたいという若者はいますか?

村雨:SNS経由で、そう言ってくれる人はいます。

金丸:そうなんですか!日本の若者も捨てたもんじゃないですね。

村雨:ただ、いまの僕は弟子を取れる立場ではありません。それに、本気かどうかって、なかなか分からない。メディアに出ている僕を見て、「いいな」と思ったんでしょうけど、本気で庭師になりたいなら、僕のところではなく、常に仕事があるところで、まずは修業してほしいです。

金丸:かつて村雨さんがやったようにですね。

村雨:これから日本文化を広めるためには、そういう職人の世界に飛び込みたいという人たちの期待に応えることも必要なので、僕自身がもっと成長しなきゃいけないと思っています。

金丸:しかし、村雨さんのように単なる留学ではなく、全く知らない国に関心を持ったから行ってみようなんて、日本人ではあまり聞きません。まず飛び込んでみる力が、日本人にはもっと必要じゃないかと思います。

村雨:僕の中に冒険心があったこともありますが、いま、僕がこうしていられるのは、人にも環境にも恵まれた結果だと感じています。スウェーデンという国だからこそ、「行っていいんだよ」「やっていいんだよ」と背中を押してくれたのではないかと思っています。

金丸:スウェーデンの社会全体に、挑戦を応援するとか「やりたいことをやる」という価値観があるように感じます。

村雨:格好つけるつもりはないけど、バイキングの精神みたいなところがいまでもあると思います。

金丸:たしかに。これまでの歴史を振り返ってみても、日本は鎖国時代をはじめ、引きこもっていた期間が長いですから。

村雨:だけど、ずっと外国に住み続けるかは別にして、一度外に出て、自分の生まれ育った国を客観的に見るのはいいことですよ。僕自身、日本に来てから、かえってスウェーデンに詳しくなりました。

金丸:そうですね。そうやって、いまより広い視野を手に入れるだけでも、思考の幅も広がるし、できることも増えると思います。

村雨:日本に来たのもそうですが、僕は結構わがままな人生を送っていて、いろいろと大変なこともあるんですけど、基本的には楽しいです。

金丸:人生、自分のやりたいことをとことんやるのが一番ですよ。村雨さんのこれからのご活躍によって、日本庭園をはじめ日本文化が世界にもっと知れ渡っていくのを楽しみにしています。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

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