2024.01.19
SPECIAL TALK Vol.112
将来を自分で考えさせる、スウェーデンの教育
村雨:日本に長年暮らして感じるのは、日本はもっと日本独自の文化を意識して、それをちゃんとブランディングする必要があると思います。
金丸:まったくの同意見です。「日本文化はまるごと輸出できる」というのが、私の持論ですから。
村雨:日本庭園だとスケールが大きいですが、盆栽は海外でも大変人気ですし。
金丸:長い歴史の中で培われた文化や日本らしさというものを、世界に向けてアピールしたり、サービスとして提供するのが日本は本当に下手だなと感じます。
村雨:素材だけじゃなくて、調理法も大事だと思います。
金丸:そうですね。庭師は今日も全国でいい仕事をしていると思います。だけど、それに見合った報酬をもらっているか、評価を受けているかというと、私は疑問です。特に伝統文化って、「これがスタンダードだ」「このレベルをクリアしてなきゃいけない」というのが曖昧ですよね。
村雨:庭師の仕事も造園やガーデニング、園芸、植木などいろいろな呼び方があって、ごちゃごちゃしています。資格もなければ、洋風のガーデニングと分けるものもない。
金丸:ある意味、でたらめです。日本のGDPを伸ばすことを考えると、そのあたりにきちんと手を入れた方がいい。日本は「いい大学を出て、大きな会社に入る」という安定を求める人たちが大半です。それで経済が伸びていればいいんだけど、実際には全然成長していない。だったら、庭師のような職人たちの給料を2倍にすることを考えた方が、成長の余地があるはずだと。
村雨:それに庭師の賃金は、地域性もあってバラバラです。
金丸:徒弟制度に憧れていたというお話でしたが、それだって改良の余地はあると思いますよ。村雨さんはいい親方と巡り会えたけど、弟子が未来を見据えて「こういうことをした方がいいんじゃないか」と提案しても、親方が頑固だったら何も変えられない。
村雨:私も多くの日本人と話す中で、若い人でも「夢がない」という人が結構いることにびっくりしました。語学講師をしていたときに、生徒さんに「将来の夢は?」と聞いても、答えがぼんやりしている。「なんとなく」「とりあえず」で英語を勉強している人が多かったし、親から「いい大学に入りなさい」と言われ続けてきたのかなって。北欧との大きな違いを感じました。
金丸:私の息子はスイスの高校に留学していましたが、先生と面談したときに驚かされました。「息子さんに将来何になるかを聞いたら、まだ考えていないそうです。どうしてまだ考えていないんですか」と言われたんです。
村雨:日本だと大学に進学してから考えたらいい、という感じですよね。
金丸:そうなんです。「まだいろいろな可能性があるだろうから試させたい」と答えたら、「もう高校生ですよ。いままでの経験から、いくらかに絞れているでしょう」と。
村雨:たしかにそうかもしれません。北欧では子どもたちにできるだけ早い段階から将来について考えさせるため、一人ひとりの個性を伸ばす教育に、かなり力を入れていると思います。
金丸:「早く始める」というのは、大事ですよね。どんな職業にもエリートの道がある。自分は何に向いているのかに早く気づいて、できるだけ早く始めた方がいい。スポーツ選手は分かりやすいですが、スポーツに限らず、会計や営業だって、「好き」とか「向いている」と思ったことには全力投球できた方がいいと思います。
村雨:そのほうが、「この道を極めよう」ってやる気も出ますよね。
金丸:だけど、日本では大企業に入って会社に言われたとおりの仕事をして、言われたとおりに異動する。それでは、才能がある人や好きだからやっている人には勝てません。
村雨:僕はスウェーデンの教育に感謝しています。15〜16歳の頃に日本に興味を持ち、自主的に勉強していたけれど、高校生がひとりでできることは限られていました。
金丸:それを先生たちが応援してくれたのですか?
村雨:そうです。日本にホームステイしたいと学校にお願いしたら、夏休みを利用した上で、卒業に支障がないように遠隔で勉強できるような体制を作ってもらいました。そこまで柔軟に対応してくれたのは、本当にありがたかったです。
金丸:私は以前、デンマークの小学校を視察したことがあるのですが、デンマークの先生に「子どもの教育で一番重要なことは何ですか」と質問したら、「子どものプライドを傷つけないことです」という答えが返ってきて、衝撃的でした。日本だと、「あれをするな」「これをするな」と大人の都合で子どもを縛って、むしろ「先生の尊厳を傷つけるな」という教育のような感じですよね。
村雨:僕が日本の教育でびっくりしたのは、幼稚園を見たときです。かなり厳しく「こうするんだよ」ということを教えていて、あんまり自由度がないなと感じました。でも、小学校や中学校でみんなで掃除するというような共同作業を学ぶのは、日本の教育制度の良い点だと思います。
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