オトナの5分読書 Vol.13

脳科学者・中野信子から学ぶ、“運のいい人”になるために今日からできること

2. 運のいい人は、自分を大切に扱う


以前、ナディーヌ・ロスチャイルドの著者『ロスチャイルド家の上流マナーブック』という本を読んだとき「ああ、やっぱり」と感じたことがありました。

ナディーヌ・ロスチャイルドは、もともとはフランス・パリの小劇場の女優でした。彼女は貧しい家庭に生まれ育ち、中学卒業と同時に家を飛び出し印刷所や町工場で必死に働きます。

やがて小劇場の女優となるのですが、大人気スターというわけでもなく、だれもが一目置く美人というわけでもありませんでした。

そんな彼女が、あるときロスチャイルド家の中心人物のひとりであり、世界の大富豪のひとりでもあるエドモン・ロスチャイルド男爵と出会い、結婚。美と贅沢の世界を手に入れるのです。

その世界は、彼女が幼いころから夢を見ていた以上のものでした。

彼女は、運を味方にした女性といえるでしょう。その彼女が著書で述べていたのが「あなたがまず心を配るべきなのは、自分自身です」という言葉でした。


彼女は「もしあなたが一人暮らしなら、部屋は常にきれいに片付けるべきです。ひとりでお茶を飲むとしてもふちの欠けたカップではなく、いちばん上等なカップを使ってください。家でひとりで夕食をとるなら、帰りにお花とおいしいデザートを自分に買ってあげましょう」とも言っています。

運のいい人は、自分を大切に扱っているのです。

では、なぜ自分を大切に扱うことが運のよさにつながるのでしょうか。

自分を大切にしている人は、ほかの人からも大切にされるのです

心理学の「割れ窓理論」(軽微な犯罪がやがて凶悪な犯罪を生み出すという理論)でもいわれていることですが、人にはある特定の秩序の乱れがあると、それに同調してしまうところがあります。

たとえば、ゴミひとつ落ちていなかった道にポイ捨てするのは気が引けますが、ゴミがたくさん落ちている道の脇なら「1個ぐらいなら捨ててもいいか」という気持ちになります。

すでに秩序が乱れている場所があると、さらに秩序を乱すことへの心理的抵抗が少なくなるというもの。

実は、これと同じことが人に対しても起こるのです。

自分を大切にしている人を粗末に扱うのは、抵抗があります。身なりのきちんとした人には思わず敬語を使いたくなりますが、身なりに無頓着な人にはその気はなかなか起こりません。

つまり、ほかの人から大切に扱われるようにするには、そして周囲の人と良好な人間関係を築くには、まずは自分で自分を大切にする必要があるのです

3. 運のいい人は「自分は運がいい」と思い込む


自分は運がいい人間だ、と決め込んでしまう。これが運をよくするコツのひとつです。何の根拠もなくていいのです。

直感力に関する調査結果があります。

パートナーの浮気を見抜くのは、男性よりも女性のほうが得意、というイメージがあります。実際この調査を行った人も女性のほうが男性よりも直感力にすぐれているという仮説のもとに調査を開始しました。

実際「自分は直感力がすぐれていると思うか」という質問に対して「すぐれていると思う」と答えたのは女性のほうが多かったのです。

しかし、いざ嘘を見抜かせる実験をすると、わずか1%程度の微妙な差でありながら、男性のほうが嘘を見抜いた人が多い、という結果になりました。

この実験で、主観的な直感力の尺度と客観的な直感力の尺度には開きがあることがわかりました。

これは自分で「直感力がすぐれている」と思っている人に、その根拠がほとんどないことがわかったともいえます。

運についても同じことがいえるのです。


「運がいい」と思っている人に、明確な根拠がある場合は少ないように思います。

つまり、これから「自分は運がいい」と決めようとしている人にも特別な根拠はいらないのです。

根拠はなくても「自分は運がいい」と決めてしまったほうが、実際には運はよくなるのです。

では、なぜそういえるのでしょうか。

たとえば、仕事でうまく契約がとれなかったとしましょう。自分は運がいいと思っている人は、「自分は運がいいのに契約がとれなかった。ということは、準備の段階で自分にミスがあったのかもしれない。あるいは、自分に勉強不足のところがあるのかもしれない」などと考えます。

一方、自分は運が悪いと思っている人は、「自分はこんなに努力しているのに、運が悪かったから契約がとれなかったのだ」と考える。

運がいいと思っている人には、努力の余地が生まれますが、運が悪いと思っている人にはその余地が生まれないのです。

しがたって、運がいいと思っている人は、努力次第で次回の契約がとれる可能性が高まりますが、運が悪いと思っている人はそうなりません。

実は運がいいと思っている人も悪いと思っている人も、遭遇している事象は似ている場合が多いのです。

しかし、その事象に対するとらえ方考え方が違う。対処の方法も違う。長い年月を積み重ねれば、おのずと結果は大きく変わってくるでしょう。

だから、やはり何の根拠もなくても「自分は運がいい」と決め込んでしまったほうがいいのです。

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