肉の哲学者たちが表現する、珠玉の肉料理 Vol.1

肉の哲学者たちが表現する、珠玉の肉料理

左.肉選び 清らかな環境で育った肉が好き

右.短角牛リブロースのビステッカ¥16,000。素材や塊の大きさ、焼き方を選べば、塩胡椒だけで天国の味

【肉選び】
和知氏がこれまでよく使ってきた岩手産短角牛は清流が流れ、人里離れた山深い森で育ったもの。自然の恵みを受け止めてきた肉の味を余すところなく引き出すには、調理をする際に牛が育った環境を再現することが重要。そうなると熱源は森の木からなる薪か炭が理想となる。1㎏で厚み4㎝強のリブロースが最適のサイズ。常温に戻し、塩胡椒をする

和知徹氏はフランス料理の人である。が、「短角牛リブロースのビステッカ」の「ビステッカ」だけは、イタリア語。トスカーナの肉の焼き方に敬意を表してのことだという。毎年、いろんな国を旅して各国の郷土料理から肉焼きテクのヒントを持ち帰る、和知氏は語る。

「肉からその国が見えてくるんですよ。アルゼンチンでマラドーナ御用達のレストランでステーキを食べますよね。すると牛が育った場所にあるハーブも一緒に火にくべてあるから、その香りから大草原を感じたり、フランスのオーベルニュ地方で石炭オーブンで焼いた肉が出てくると、そういえば地層が古いところだったなと思い出したり」

そんな経験の末に完成したビステッカはトスカーナ名物、ア・ラ・フィオレンティーナの仕上がりが念頭にある。その極意を問えば、「休ませながら焼く」と禅問答のような答えが。よくある「焼いてから休ませる」方式とはまるで別。熱源を炭火に求めながらも終始、肉に火を直接当てない、遠赤外線効果を利用。ジュース命! 短角牛の肉汁と旨みをいかに保つかを考えたら、こう焼くしかなかったとか。赤身のための焼き方と言いながら、脂の蜜のように華やかな風味といったら……である。

左.切る これがリブロース黄金のカットだ!

右.焼く カリッとさせずジューシーに

【焼く】
ゆるやかな熱で約20分かけて両面を焼く。焼き上がったら1カットの幅を肉の厚みに合わせて4㎝強とし、5等分に切り分ける。すると、ひと口大に切って口に運んだ時、ベストの食感が楽しめる。口の中がほどよくボリューミーに肉ぅ! となる幸せは和知氏の緻密な計算の賜物。端っこは芳ばしく、中心は噛み切った時にピューッと溢れるほど肉汁が豊か

【切る】
香り付けに玉ネギとニンニクのスライス、フレッシュタイムを肉に乗せ、網に置く。炭火からの高さは35㎝。この時、あえて炭火の真上を外し、その隣に位置どり。煙の燻香を付けるつもりも無し。火で炙るのではなく、あくまで遠赤外線効果を利用するための炭火である。以前、薪を試したら、煤が出過ぎてしまったので、現在は中国産の備長炭を使用

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