
イスラエル料理店で知る、「熟成肉ひと筋」の男の味
16年前から、がっつり熟成肉と付き合ってきた。マルセロ・ラブ氏は16歳から料理人修業に入り、22歳で転じたイスラエル・テルアビブの有名肉料理レストランで、ブラジル系老料理人から熟成肉のノウハウを学ぶ。
「昔むかしアルゼンチンで、屠殺した牛を山の洞窟に隠しておいたら、2週間後に旨い肉が偶然できたのがはじまり、と師匠が言うんだ。本当かどうかは、知らないけどね」と笑うシェフ。
ブラジル、カナダのレストランで働いたほか、熟成肉向きの牛がいると聞きつけてケアンズに数カ月滞在するなど、足取りも軽く地球を回り、食肉に対する知識と料理技術を深めてきた。
彼が使うのはアメリカ産とオーストラリア産。自然の穀物と牧草で健やかに育った牛だけだ。カナダで出会った奥さま・三浦麻由子さんと共に来日して5年。各種国産牛にもトライしたが、霜降り肉ではどうしても目指す味にならず、イスラエル時代からの赤身肉使用を守る。
熟成はウェットエイジングで、サーロインとリブロースを使用。2日に1度、丹念にドリップを除去し、約3週間冷蔵庫で寝かせ、最長でも25日で使い切る。脂肪分の高い部位にもかかわらず、しっとりとさっぱりとした味わいは、元来の肉質と技術の賜。わずかなバターと岩塩だけで、十二分に旨みを堪能できる。
「レア仕上げだけど中心温度は必ず65度。基本には忠実さ」
何故か素っ頓狂な笑い声を上げる彼。職人の照れ隠し、かも。