マッチングアプリの答えあわせ【A】~SEASON2~ Vol.1

マッチングアプリの答えあわせ【A】:「うゎ、無理…」初デートで、男が女に幻滅した瞬間とは

『大須賀:誰かとマッチしたら、他の写真も送ってもらいな。あと、女の子は基本加工してるから写真の3〜4割減が来ることを覚悟して。笑』

― ほぅ…さすが、大須賀は慣れてるな。

僕は言われたとおりに、綾子に他の写真もくれるようにお願いした。

『山田健太郎:綾子さんの他の写真も見てみたいな』

すると、しばらくして画像が2つ送られてきた。

『AYAKO:これでよかったら…』


― おぉ。やっぱり可愛い!

『山田健太郎:ありがとうございます!やっぱりお綺麗ですね』

少し興奮気味に、LINEを返してしまう。

『山田健太郎:ヤバいわ。他の写真もめちゃくちゃ可愛い!!』
『大須賀:そりゃよかった笑 でも、実際会ってみるまでわからんからな』

― 僕に可愛い彼女ができるのが悔しいんだろうな。

綾子とのデートは、来週の金曜日だ。僕はそれまでゲームにも一切触れず、その日が来るのを待った。



僕が予約したのは、赤坂のイタリアン『フィレモネ』だ。綾子のリクエストが「生パスタが食べたい」だったので、ここに決めた。


『AYAKO:すみません!15分くらい遅れそうです』

― あ。遅れるのか…。

僕は「了解」と返信し、大きなガラス張りの店内から外を眺めた。

ここから歩く人を観察していれば、綾子がやって来るのが見えるかもしれない。

そう思ったら、妙に緊張してきた。

会社での飲み会はあるものの、こんなふうに女性と食事するのは本当に久しぶりだからだ。

『AYAKO:先に飲んでてくださいね!急いで向かいます』

― こういう場合、本当に飲んでいたほうがいいのかな。いや、待つか。

僕はメニューを閉じて、再び外に目を向けた。しかし、綾子らしい人は通らない。

そろそろ15分が経つ。僕は綾子から連絡がないかスマホを見た、その時だった。

「健太郎さん、ですよね?」
「……?」

― 誰だろう?この人は。

僕の中で時間が止まった。悪い意味で。

「綾子です。遅れてごめんなさい!」

そこに立っていたのは、綾子の写真とは似ても似つかない、ふくよかな女性だった。


「えっ?あ!綾子さん…ですか。はじめまして、山田です」

僕は、下の名前ではなく名字を名乗った。それは僕なりの抵抗だった。

大須賀の言葉が脳内でリピートされる。

女の子は基本加工している。だから写真の3〜4割減が来ることを覚悟しろと。

だが、これはちょっと加工しているとかのレベルではない。明らかに詐欺だ。

「何食べます?わぁ~!どれも美味しそうで迷うなぁ」
「……綾子さんが食べたい物でいいよ。遠慮しないで」

僕は淡々と答えた。

店内で待ち合わせしてしまった以上、食事をせずに帰すわけにもいかない。

綾子は悪びれる様子もなく、ただ美味しそうに食事をし、楽しそうに僕に話しかける。

きっと彼女も自分の体形の変化に気づいている。だから、痩せていた頃の写真を載せているのだ。

一種の現実逃避なのだろう。

だからといって、他人をだましていいことにはならない。

僕は、本気で彼女を探しているし、今の綾子の体形なら「いいね」は返さなかった。

― でも、とりあえず今は料理とお酒を楽しむことにしよう!よし!

僕は、綾子への負の感情を一度忘れ、食べることに集中した。

「あ~美味しかった!」
「あはは。綾子さんは、本当に美味しそうに食べますね」

女性に体形のことを指摘できるはずもなく、僕は笑うしかなかった。

― これはマッチングアプリ初心者の僕が払うべき勉強代なのだ。

そう自分に言い聞かせ、会計を済ませた。

「ごちそうになってしまって…すみません。楽しかったです!」
「それならよかった。ではここで!」

「また」はない。綾子とはここでさよならだ。

赤坂駅で彼女と別れたが、改札まで見送りに行っただけでも、ありがたいと思ってほしい。

― はぁ……。

綾子は流行りに敏感で、グルメ感度も高い女性だった。そして似たような職種同士、マーケティングの話もできた。

でも僕は、実際の綾子が、プロフィール写真よりもだいぶ太っていたことに衝撃をうけたのだ。

そして、そのことを隠し僕をだましていたことに腹が立ったし、何よりも悲しかった。

LINEのやりとりも、実際の会話もそこそこ楽しかっただけに、虚無感だけが残る。

今日わかったこと――。

それは、綾子のように、アプリ利用歴も長そうな“アプリ慣れ”している相手こそ注意が必要だということ。

プロフィールの文章や写真に怪しいところがないか、会う前に念入りなチェックをするべきだった。

最初からだますようなことをする女性は、付き合ったとしても信用できないのだから。

ひとりで飲み直そうか考えていた帰路の途中、スマホが震えた。

『大須賀:後輩と飲んでるんだけど、来ない?後輩が女の子呼んだんだけどさ、男足りなくて』
『山田健太郎:行く。店どこ?』

僕は、大須賀からのLINEに秒で返信した。

これから話すネタができたと思えばいいか、と開き直りながら。

マッチングアプリ攻略の道①
マッチした異性と会う前に、できる限りの写真を入手すべし。撮影時期には要注意。



▶【Q】はこちら:狙い目の“新規会員の男”と初デート!途中までは順調だったが…

▶Next:6月6日 火曜更新予定
とりあえず会いたい男vs.じっくり見極めたい女

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この記事へのコメント

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No Name
これ2年位前も同じ連載やって、Qは無料記事、Aは有料記事でしたよね。当時は有料会員と無料会員とのコメントバトルがすごかった記憶が。
2023/05/31 05:1667返信3件
No Name
有料なら有料で別にいいけれど、これってそもそも東カレ小説の読者からネタを募集してましたよね?!要するにユーザーから集めた体験談を元に書いた記事。にも関わらず「有料会員限定」にするなんて、すごいわ。笑
2023/05/31 05:5656返信4件
No Name
え、Aは有料なの?まさかのやり方
2023/05/31 05:1032返信1件
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