SPECIAL TALK Vol.101

~地方から日本を変えていきたい。上京しても忘れなかった原体験がある~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


ポテンシャルを発揮するため、覚悟を決めて規制改革に取り組む


金丸:規制改革会議のメンバーに選ばれて、「農業改革や漁業改革をやってほしい」と言われ、初めは「なんだか大変なことを背負わされたな」と感じました。でも、私が現場で頑張れたのは、菅さんと安倍さんが一枚岩で、やると決めたことを途中で妥協することがないと信じられたからです。

菅:改革を進めるため、金丸さんとは毎日何度も電話やメールをして、連携を取りながら動いてもらいましたね。

金丸:私は菅さんと安倍さんに出会って、政治家に対する印象が変わりました。日本の政治家は調整型が多いですし、やり過ぎてしまって反発を食らえば、選挙が危うくなりかねない。だから、本気で風穴を開けるようなことはしません。ところが、菅さんに現状を報告して、「この方向性で攻めるのがいいと思います」とお伝えすると、細かい注文はなく、ひと言「譲るな」と。

菅:中途半端になれば、かえって悪くなるだけですから。

金丸:途中、党から圧力がかかって、「マイルドにしてくれ」と言われることも覚悟していたのですが、「一切譲るな」と(笑)。そう言われるとハードルが高くなるので、私としてはプレッシャーでしたが、同時にやる気が出ました。それは一緒に動いていた官僚も同じでした。私個人の成果というより、熱い心を持った相当な数の官僚たちが動いてくれた結果です。

菅:ありがたい限りです。そのおかげで農林水産物の国内流通が大きく改善され、海外への輸出量も増えました。ようやく農家のみなさんに活気が出始めるところまで来た、と思っています。

金丸:今はまだ小さな芽かもしれませんが、この流れが逆行することなく、大輪の花が一面に咲き誇るくらいになってほしいです。

菅:日本の農林水産品は本当に人気で、海外でよく売れるんですよ。少し前に、量販店『ドン・キホーテ』の創業者である安田隆夫さんから伺ったんですが、「タイやシンガポールでは、日本のイチゴが1パック1,400円で、毎日2,000パック売れている」「鹿児島産の焼き芋も飛ぶように売れる」と。

金丸:手に入れたくて、開店前から並んで買うそうですね。われわれ日本人にとっては普通の焼き芋でも、海外の人たちにすれば、そのクオリティの高さに感動する。高い値段を払っても、また食べたいと思う。日本国内だと、ものすごく手間をかけた果物や野菜でも大した値段がつきません。でも特別だと感じる人が特別なプライスで買ってくれるなら、生産者としてはそちらに売りたくなりますよね。

菅:卵も日本だと1パック200円くらいで販売されていますが、それを海外に持っていくと700円になるそうですよ。

金丸:3倍以上になるんですか。日本人は食に恵まれ過ぎていて、感謝とか感動をなくしてしまっているように感じます。日本の農産物は最強ですから、もっと地域ごとに農産物の輸出を目指した方がいい。本気でやり始めたら、国内の人が食べられなくなる事態すら起こるかもしれません。

菅:海外への輸出を増やすため、2021年に農林水産省に「農林水産物・食品輸出本部」を新設しました。それまでは厚生労働省が輸出の際に必要な検疫や品質管理を担当していましたが、こうした縦割りではなく、農水省が主導しながら他の省庁と連携し、輸出拡大に向けて戦略的に取り組むための体制をつくったんです。

金丸:厚労省には輸出を推し進めていくイメージがないですからね。ぜひ販売網を整えて、どんどん海外に売り込んでほしいです。

行動すれば出合いが生まれ、運命を掴むチャンスが見える


菅:私は家を飛び出したとはいえ、農家の長男坊ですから、地方の所得を上げたいという思いがずっとあります。そのためにはやっぱり農業。私にとって、農業改革は欠かせませんでした。

金丸:私が菅さんのことを信頼できたのは、その原体験なんです。確固たる思いがあって、何があっても決してぶれる方ではない。実際に、菅さんが旗振り役となり創設された「ふるさと納税」も、地方創生の起爆剤になりました。

菅:スタートした2008年には、年間で81億円だった寄付額が、2021年には8,300億円まで拡大しました。官房長官時代にワンストップ特例などの制度を整えたら、毎年1,000億円ずつ伸びましたからね。そのぶん、地方の農林水産物に付加価値が付いて、かなり貢献できていると思っています。それに、役所の人たちの目が輝き始めたとも聞きます。

金丸:そうやって地方が元気になっていくのは、うれしいですね。菅さんはコロナ禍という厳しい情勢の中で、総理を務められました。実直に実績を積み上げ、あちこちに種をまいて、その種がすくすくと育っています。私としては、菅さんにもう一度総理をやっていただきたいと思うのですが。

菅:いや、それはないです(笑)。そもそも、自分が総理をやることになるとは思ってもいませんでしたから。

金丸:思ってもいなかったのに一度されたのだから、次も期待したいです。菅さんはお世辞を言うような人ではなく、噛み付いてくるくらいの元気な人が好きですよね。そして、困っている人がいたら手を差し伸べる。困っている人というのは、挑戦して壁にぶつかっているから困っている。その壁が理不尽なものだと分かったら、菅さんはメラメラと燃え盛って、「突破してやる」と覚悟を決めてくださる。

菅:そうかもしれません。行動している人を手助けしたい気持ちはあります。「このままじゃダメだ」と思い、大学に行ったのが、私のターニングポイントでした。そして、政治の世界で働きたいと、人を頼って巡り巡って今に至ります。行動すれば、いろいろな出合いが生まれる。運命を掴むためには、自分が行動を起こさなければいけません。

金丸:先行きが不透明な時代ですが、だからといってじっとしているだけでは何も変わりません。でも信念を持っていれば、人を巻き込んで変化を起こせる。われわれの世代もそうですが、若い人たちにも果敢に挑戦を続けてもらいたいですね。今日は本当にありがとうございました。

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