“インスタ映え”が流行語大賞に選ばれたのは、もう5年も前のこと。
それでもなお、映えることに全身全霊をかける女が、東京には数多く存在する。
自称モデル・エリカ(27)もそのひとり。
そんな彼女が、“映え”のために新たに欲したのは「ヨガインストラクター」という肩書だった―。
エリカは、ヨガの世界で“8つの特別なルール”と出合う。しかし、これまでの生活とは相いれないルールばかりで…。
これは、瞑想と迷走を繰り返す、ひとりの女性の物語である。
「8rules~エリカのマイルール~」一挙に全話おさらい!
第1話:「私に200万投資して」と彼に懇願。女の目的は…
「8時か…」
体を起こしながら、Instagramを開く。昨夜、投稿したPR案件の手応えを確認するためだ。
レモンイエローのナイトブラを身につけた、バストアップの写真。上にカーディガンを羽織っているとはいえ、胸の谷間も、お腹もそこそこ露出している。なかなかスタイルよく映っている、自慢の1枚でもある。
だから、朝には、フォロワーが一気に増えて、“お知らせ”も相当盛り上がっているだろうと期待していた。ところが…。
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第2話:彼のお金でハワイへ。しかし空港で驚愕の話を聞かされ…女が「帰りたい」と青ざめた理由
「したい人、10,000人。始める人、100人。続ける人、1人って聞いたことある?エリカは、“したい”から“始める”ことにしたんだね。僕でよければ、全面的に応援するよ」
― やった!ちょっと多めに見積もったんだけど、バレないでしょ?
こうして彼の援助を受けた私は、ダニエル・K・イノウエ空港に降り立ったのだった。
到着ロビーで早速コナコーヒーをゲットし、カップを片手に、颯爽と歩く。すると―。
1人の日本人女性が、慌てた様子で駆け寄ってきた。
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第3話:「彼にもらった留学費用200万円が、80万も余った」お金を返したくない女がとった行動
― えっと、資格の講座費用と宿泊費、航空券代で113万はもう引き落とされてるから、残りは…?
ハワイヨガ留学のために、智樹に援助してもらったのは200万。すこし多めに見積もった結果、80万以上が、まだ手つかずのまま残っている。
ハワイでは朝から晩までヨガ漬けの生活を送っていたので、お金を使う機会がほとんどなかったのが幸いした。
― これ、使っちゃう?ヨガに関わる出費に変わりはないんだし。
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第4話:有名スポーツブランドのアンバサダーを目指す女。企業から誘われ、面談に行ったはいいが…
SNS投稿用のヨガウェアを、無償で手に入れる方法はないか―。考えたとき、私は思いついたのだ。
― 企業と契約をして、アンバサダーになれば…。ウェアをもらえるし、自分の宣伝材料にもなる!
ただ、自分から問い合わせをするのは性に合わない。「企業側から依頼されたい」という気持ちが強い。そこで、私は投稿に“いいね”をしまくり、自分の存在をアピールすることにしたのだ。
そのとき、公式の青いバッジがついたアカウントから、1通のDMが送られてきた。
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第5話:「時給20,000円なんだけど…」女子会で持ちかけられた甘い誘惑。その仕事内容は?
― いい加減、このくらいでいいんじゃない?
私が、1人おとなしく席に戻ると―。
「エリカ、どうしたの。写真、もういいの?」
「うん、そろそろ食べない?」
セイボリーの段に、スッと手を伸ばす。そして、私はうんざりしながら思った。
― これからまた、いつもの会話が始まるんだろうなぁ。
その予感は、見事に的中したのだった。
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第6話:「こんな簡単でいいの?」高額報酬に目がくらむ女。初対面の男とマンションの一室に入り…
レッスンがしたい―。その背景には、インストラクターとしての“活動歴”が欲しいという気持ちが隠れている。ヨガウェアブランドのアンバサダーになるために必要なのだ。
だが、礼子さんは、私のよこしまな考えにはちっとも気づいていない。
「わかった。私ね、やる気のある人には、どんどんレッスンを任せていきたいと思ってるの。それに、エリカさんって私好みだし」
そして、ひと言。含みを持たせた言い方をした。
「ただし、いくつか条件があるんだけど―」
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第7話:突如届いたDMに、予想外の“お誘い”が。「こんな話、選ばれし人にしか回ってこない…」
知名度が高い会社が主催する、イベントでの講師。そういう役割は、一握りの選ばれた人にしか回ってこない。少し前の私だったら、迷うことなく引き受けていただろう。
だが、礼子さんに斡旋してもらい、何とかやり切ったレッスンの出来が散々だったことを思い出すと、どうしても前向きに考えられない。
― はじめから何でもうまくいくわけない。そんなことは、わかってるけど…。
しかし、モデルという経歴と、容姿への自信から、自分のレッスンには価値があると思っていた私は、すっかり鼻をへし折られてしまっていたのだ。
この話は断ろう、そう思ってスマホを手に取ったとき―。
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第8話:彼とのディナー。お会計をこっそり済ませたら…直後、彼氏に吐き捨てられた、まさかの一言
「あー、お腹いっぱい!料理、全部おいしかったね」
「そうだね。もう22時か、そろそろ帰ろうか」
智樹も満足げにスマホを手に取ると、アプリでタクシーの手配を始める。その隙に―。
化粧室に行くふりをして、私はこっそり会計を済ませた。
― いつもお世話になりっぱなしだから、たまには私が。
彼もきっと、喜んでくれるはず。ところが、智樹の反応は、私が期待するものとはまるで違った。
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第9話:有名野球選手から突然DM。毎日LINEする仲に。浮かれて食事に行くと、まさかの事態が
智樹とは、もうすぐ交際4年。出会ったときは、17歳も年上の相手は恋愛対象にならないと思っていた。でもしばらくすると、包容力があるのに干渉してこない智樹に、同世代の男性とは違った大人の魅力を感じるようになった。
それが、今はどうだろう。もともと詮索されることが好きではない私は、窮屈さを感じ始めている。
…ただ正直、彼には絶対に言えない理由で、ほんの少し心が弾んでいた。
― あとでゆっくり読み直そう。
画面を見られないようにそっと閉じたのは、プロ野球選手・和寿から送られてきたDMだった―。
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第10話:彼と一晩過ごしたあと、急に連絡が途絶え…。2週間後に男から送られてきた衝撃のLINEとは
和寿:「昨日はありがとう」
― それだけ?ほかに何かないの…。
質問の答えになっていない彼からの返信に、私はなんと返せばいいのかわからなかった。和寿からの連絡も、その日を境にパタッと途絶えたのだった。
2週間後―。
ヨガスタジオと、立川にある実家を往復するだけの生活を送っていると、和寿からLINEが送られてきた。
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第11話:「このお店って…」“僕の行きつけの店に行こう”と誘われた女。当日、愕然とした理由とは
エリカ:「私もついに完治しました!たんぱく質のおかげかもしれません」
木村:「おめでとうございます。よかったら、来週あたり食事に行きませんか?ヨガのことも、色々と聞いてみたいです」
予期せぬ誘いに、ほんの一瞬とまどった。なぜなら木村さんは、これまで私のまわりにいたちょっとギラついたところのある男性たちとは、正反対のタイプだからだ。
でも、よくよく考えてみると、その男性たちとの恋愛はうまくいかなかった。それなら、木村さんのような相手こそが、自分と合うのではないかと思えてくる。
こうして私は、彼と2人で会ってみることにしたのだった。
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第12話:自分の名前をエゴサしてみたら…検索画面を見た女に鳥肌が。彼女が目にしたものとは?
エリカ:「マクロビレシピは作り置きできるものがたくさんあるから、家でも楽しめるよ」
木村:「うーん、作り置きね。僕は、エリカさんほど意識高くなれそうにないかな」
― はあ…。“意識高い”って、前に真保と千波にも言われたっけ。
やはり私のライフスタイルは、ヨガをしていない相手にとっては受け入れがたいもののようだった。しかし、恋愛を優先するとレッスンに支障をきたす。かといってレッスンを優先すると、こんなふうに恋愛が上手くいかない。
普通のデート。それが、いつからかとてつもなく難しいものになってしまっていた。
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