柳 忠之のこの12本におまかせ Vol.20

ドイツワインが“辛口”にイメチェン!?シンプルかつモダンな味わいに驚愕!

かつて、甘口のドイツワインが日本で人気だったことをご存知だろうか?

今回は、そのイメージを払拭する、ドイツ最古のワイナリーでつくられる辛口の白ワインをご紹介。

シンプルかつモダンな辛口のドイツワインは、伝統と革新を体現する一本だ!

左:東京カレンダー編集部 嵩倉伶奈/右:ワインジャーナリスト 柳 忠之氏


専門誌からライフスタイル誌まで幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト・柳 忠之氏。

柳氏が東京カレンダーでワイン連載の担当となって5年目。ワインの勉強に日々奔走する編集・嵩倉の質問に、いつも親身になって答えてくれる。

かつてのナンバー2が、辛口モダン化で巻き返し


柳「おっ、クラリン(編集担当の嵩倉)、そんな汗だくでスポーツでもした後かな?」

――あっ、柳さん。後輩に勝負を挑まれて卓球をワンゲーム。完膚なきまでに叩きのめしました!

柳「そうだ、クラリンは卓球プレーヤーだったよね。」

――はい!ところで、こうした気持ちの良い汗をかいた後におすすめのワインといったらなんです?

柳「それはもう、今月のお題目でもあるドイツの辛口リースリングに限る。」

――なんとも予定調和な流れ(笑)。それはさておき、ドイツワインと言ったら甘口では?

柳「それも待ってましたな質問ですな。クラリンが言うように、ドイツワインって昔は甘口が多かった。冷涼な産地だから酸が高く、バランスを取るためには残糖が必要だったんだ。

ところが日本でも、そんな甘口のドイツワインが好んで飲まれていた時代がある。じつは90年代の半ばまで、フランスの次に輸入量が多かったのはドイツワインなんだよ。」

ドイツの辛口リースリング
「862 RIESLING TROCKEN(862・リースリング・トロッケン)」


『シュタッフェルター・ホフ』は、862年に創業されたドイツ最古のワイナリーのひとつ。

創立1,150年を祝し、オーガニック栽培のブドウから造られるこちらは、中世の騎士像やひげ文字のない、シンプルかつモダンなラベルも特徴のひとつ。しかも手軽なスクリューキャップがうれしい。

3,300円/エノテカ TEL:0120-81-3634



――イタリアワインよりも、多かったんですか!

柳「うん、意外でしょ?その後の赤ワインブームで、白の比率が高いドイツワインは退潮の一途をひた走るんだ。

けど、そもそもその頃まで、多くの日本人はワインの酸味や渋味に慣れてなかったし、ワインを飲みながら食事をとる習慣もなかった。

だから、甘めのドイツワインが受けてたんだね。」

たとえるなら、名門ライカのこれ!

ドイツの名門・ライカが、かつて販売していた人気のインスタントカメラ「ライカゾフォート」。シンプルさやモダンさでこのワインに通じるものがある


――で、今度は辛口で巻き返し?

柳「そういうこと。『また?』と言われそうだけど、近年の温暖化でドイツでもブドウの熟度が上がり、辛口ワインが美味しくできるようになった。それに…。」

――それに?

柳「ドイツというとあの生真面目な性分からか、なになに村のなになに畑と正確にラベルに表記するものだから、やたら名前が長い。

ブラウネベルガー・ユッファー・ゾンネンウーア・リースリング・ベーレンアウスレーゼって、まるで落語の『寿限無』。それも、ドイツワインが敬遠されてきた理由のひとつだと思う。

今ではもっとシンプルなネーミングのワインも増えてきたし、いかにも中世風の野暮ったいラベルから、モダンでスタイリッシュなデザインも見られるようになってきたね。」

――肝心のお味は?

柳「フローラルで爽やかな柑橘香を伴う、フレッシュな酸味のキリッとした味わい。これからの季節、とりわけひと汗かいた後にこれ以上ぴったりなワインはないよ。」

――ではゴクゴクゴクゴク。うま!


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