27歳、年収700万。意外に厳しい現実
翌日。リモートワークをしていた私は、PCの画面を閉じサッと身支度を整える。そしてLOEWEのバッグを手にして、玄関のドアを開けた。
今日は学生時代からの友人・美咲と遥の3人で、久しぶりに集まる約束をしているのだ。
大学時代はほぼ毎日3人で一緒に過ごしていたけれど、2018年に卒業してからはそれぞれの道を歩んでいる。
美咲は新卒で日系メガバンクに入社し、エリア総合職に。唯一の既婚者である遥は、25歳のときに結婚。 日系老舗メーカー勤務で同い年の彼と入籍して、今では優雅な専業主婦だ。
「ごめん、お待たせ!」
待ち合わせの『ファイヤーホール4000 麻布十番』へ行くと、すでに2人は席に着いていた。
「葵、久しぶりだね〜!」
「元気だった?」
女3人が集うと、話は止まらない。久しぶりに集まったこともあり、私たちは時間も忘れてお互いの近況報告に始まり、くだらない話で笑い合った。
「美咲は?最近どうなの、仕事は」
「それがさ…。仕事してないのに高給取りなオジサマたちがいる限り、私の給料は上がらないんじゃないかなと思い始めた」
「あぁ〜、それはわかる。あと、やたらとすぐに電話してこない?」
「本当それなの!!メールで済ませてくれればいいのにね」
私と美咲で盛り上がっていると、遥が会話に入りにくそうにしている。それに気がついた私たちは、慌てて話題を変えた。
「遥は?最近どう?」
「うん。翼くんも優しいし、平和だよ。特に何も変わらないかな」
遥は夫の翼くんと、江東区で暮らしている。
「平和が一番。いいよね、翼くんは安泰だし」
「そういう2人は結婚の予定、あるの?」
今年で27歳になる私たち。結婚する人も増えてきた。籍を入れていなくても長年交際している、ステディーな相手がいる子も多い。
「私は全然。美咲は翔太くんと、どうなの?」
美咲と彼氏の翔太くんは、会社の同期だ。入社後に付き合い始めたものの、もうすぐ4年くらいの付き合いになると思う。
「そろそろ結婚かなって話はしてるけど、どうだろうね。でも、もう27歳になるし。いろいろ決めないとなって思ってる」
遥が、火鍋の写真を真剣な様子で撮っている。シャッター音が鳴り響く中、私たちは急にしんと静まり返った。
「もう、27歳か…」
急に、年齢の重みがズシっとくる。私は今、昔思い描いていた理想の自分にどれくらい近づけているのだろう。
すると、美咲がネックレスを触りながら少し口を尖らせている。
「会社の先輩で、38歳独身の人がいて。仕事ができて有能だから、尊敬している数少ない先輩の1人ではあるんだけど…。仕事だけの人生は、正直嫌だな」
「美咲の気持ち、わかるよ。結婚がすべてではないけど、孤独死は避けたいよね」
「事実婚もアリじゃない?でも結婚したほうが、世帯収入は上がるか」
このまま、大きく開花することもなく私の人生は進むのだろうか。現状は打破したい。もっと変わりたい。
でもどこへ進めばいいのか、わからない。
「私、もう少し輝いている予定だったんだけどな…」
「葵は仕事もちゃんとして、華やかな生活を送ってるじゃない。私からしたら、羨ましいよ」
「なんか、楽しいことないかな〜」
そんな私と美咲の会話を聞いていた遥が、ニヤッと笑った。珍しく酔っ払っているようだ。
「ねえ。私、以前から気になってたスゴイお店があるの。せっかくだし、この後行ってみない?」
「スゴイお店…?」
こうして私たちは、普段は滅多に行かない2軒目へと繰り出すことになったのだ。
この記事へのコメント
何の連載をしたいのか今イチ分からなかった。
たまに平成生まれと昭和生まれをやたらと区切ろうとする話とかありますが、違いがあるとしたらSNSの使い方くらいじゃないですかね。
金銭感覚に関してそこまで...続きを見るズレているとも思えないのですが。