2022.04.21
SPECIAL TALK Vol.91自分のやりたい道を歩むため、独立開業に踏み切る
金丸:ところで、一度実家に戻ってお父様と一緒に仕事をされたとなると、「整骨院を継ぐよな」という圧力もあったのでは?直接口に出さずとも、「お前、これからも当然、ここにいるんだよな」みたいなオーラを出して。
山口:その通りです。僕は4人兄妹で、妹は他界してしまったんですが、兄と弟がいます。兄は医者で、弟は薬剤師の資格を持っています。
金丸:全員が有資格者とはすごいですね。
山口:結果的に実家は弟が継ぎましたが、父のプランとしては、兄が足利に病院を開業して、僕が整骨院を継ぐ予定でした。ところが僕が実家に戻った頃、兄が大学病院での研究で成果を出し始めていて。
金丸:「あいつ、もう戻ってこないんじゃないか」とお父様が感じていた?
山口:はい。それで次男の僕に、ますます期待していたんだと思います。ただ、父の偉大さを実感すればするほど、「ここにいる限り、父を超えることはできない」という思いが強くなり。僕は父の下で2年修業したら、独立して東京で開業したいと思っていたし、それを父にも伝えていました。
金丸:修業を終えたあとは、すんなり東京に行けたのですか?
山口:いや、その話を切り出そうとすると、父は僕の目を見ようともせず、どこかに行こうとするんです。おかげで話をするのに3、4日かかってしまって。
金丸:山口さんにその気はなくとも、お父様からすると、「実家や足利を捨てるのか」という気持ちだったんでしょうね。
山口:だから、東京に出ていくという話をしたときは、「二度と敷居をまたぐな」という感じでしたよ。父の気持ちがわからないわけじゃないけど、僕がやりたいのは予防医療であり、綺麗になりたいという思いで来院してもらえる整骨院でした。だから、父のカラーが強い「痛くならないと来ない整骨院」では、それを実現するのは難しかった。
金丸:お客様の層も東京と東京以外では随分違うでしょうからね。
山口:恵比寿で開業したのも、まさにそこです。整体を取り入れた本格的な美容医療に、日本で最初に取り組んだのは僕だという自負があります。そして、それが支持されるカルチャーが恵比寿・代官山にはありました。
金丸:開業後はお父様も応援してくれたのですか?
山口:開業する前に、母に「場所が決まった」と話したところ、それを聞いた父がすぐにやってきまして。
金丸:なんだ。やっぱり山口さんのことが気になってしょうがなかったんですね(笑)。
山口:「敷居をまたぐな」と言ったきり一度も会話していなかったのに(笑)。うちは恵比寿駅からちょっと歩くのですが、父がひと言「駅からの距離がいいな」と。駅と直結している場所だと、患者さんの体はまだ興奮状態で、筋肉の緊張も取れていない。だから「少し歩くこの立地はいいぞ」と言ってくれたんです。
金丸:そうなんですか。山口さんもそれを狙って?
山口:いえいえ。まったく考えていませんでした。開業資金があまりなかったので、家賃で決めた物件で。
金丸:じゃあ、お父様のほうがはるかに上ですね(笑)。
山口:そうですね。そこでも思い知らされましたよ(笑)。それから「山口という名字なんだから、山のふもとで口を開けて人に宣伝してもらわなきゃいけない。だから近くに山がないといけないけど、ここは代官山だからちょうどいいな」とも。
金丸:山口さんがすることを、全肯定されているじゃないですか(笑)。家から追い出したような体裁だけど、お父様の愛を感じます。
山口:あとあと聞いた話ですが、「本当は家の近くにいてほしい。でもあいつは、足利という枠には収まらないタイプだ」と言っていたそうです。
金丸:素晴らしい。跡を継いでほしいという思いもありながら、外に出せば、自分の技術をさらに発展させてくれるはずだと確信されていたんですね。
「父の上を行く」より「肩を並べられる独自性」
山口:今、僕がやっていることは、僕のオリジナルでありながら、父から受け継いだものがとても大きいです。顎の関節の歪みを取るというのも、根本には顎関節を治すことによって腰痛を治すという父の治療があります。父と一緒に何かのパーティーに参加すると、面白かったですよ。父はずっと人の顔を見ているんです。
金丸:ひょっとして、歪みを読み取っているのですか?
山口:はい。そして「あなたの骨盤はこういうふうに傾いていて、それが顎に出ていますよ」と。
金丸:パーティーに参加したら、いきなり「体が歪んでいる」って。言われたほうは、びっくりするでしょうね(笑)。
山口:そういう父を間近で見ていたおかげか、僕も人の顔を見ると、体のどこに力が入っているかがわかるんです。最近ではみんなマスクをしていますが、マスク越しでもわかりますよ。
金丸:すごいですね。子どもの頃から一緒に過ごし、お父様の下で修業したからこそのDNA的なものを感じます。お父様と患者さんが話しているのを聞くだけでも、きっといろいろな勉強になったのではないかと思います。
山口:父は治療室だけじゃなくて、家にも骨格模型をたくさん置いていました。リビングや枕元にまであったんですよ、特に頭蓋骨の模型が。
金丸:それはちょっと嫌かもしれない(笑)。
山口:でも模型がたくさんあれば、気になったことや思いついたことをすぐに確かめられる。だから僕も父に倣って、自宅のあちこちに模型を置いています。
金丸:山口さんにそういう姿勢があるからこそ、技術の継承がうまくいったんでしょうね。おじい様の代に始まり、お父様がカイロプラクティックを取り入れ、さらに山口さんが美容医療という切り口で、予防医療にフォーカスされている。単なる継承ではなく、世代を経るごとにイノベーションが加わっているのがすごいです。
山口:父が亡くなってから、父が何を見ていたか、どんなことを考えていたのかをますます意識するようになりました。父の遺品を整理していると、整体の本に書き込みをしていたり、ラインマーカーを引いたりしているのを見つけて。今、それを熟読しているところです。「なんだ、ラインマーカーとか使ってたんだ。かわいいところもあったんだな」なんて思いながら。
金丸:宝物ですね。これまでお話を伺っていると、お父様は昔ながらの職人気質で、とても硬派な印象を受けます。一方で山口さんは、東京に出たかったとか、整体もできるスキーヤーを目指していたとか比較的軟派な印象が(笑)。でも、整体にかける情熱は本物ですよね。もともと家業を継ぐことを考えていなかったのに、どうしてそこまでのめり込むようになったのですか?
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