「変わってやる!」
そう思った瞬間から、人生はアップデートされていく。
10年前の恋愛の傷から、着飾ることをやめノーメイクで生きてきた春野菜月(29)。
そんな彼女が、変わることを決意したら―?
土曜の夜22時。
一人暮らしの部屋に、春野菜月(29)の悔しそうな声が響いた。
「一体なんだったの、あの男!失礼すぎるから!」
顔をしかめながら思い返していたのは、つい3時間前の出来事だ。
◆
東京駅から歩いてすぐの距離にある、イタリアンバル。
カルボナーラが有名なそのお店で、菜月は友人の茜と恭一と食事をしていた。
茜と恭一は、大学時代からの親友。出身大学は違うが、同時期にロンドンに留学をしていて、現地で意気投合した仲間だ。
同じ寮に滞在していたため、当時は毎晩のようにフリースペースに集まっていた。
留学からはもう10年が経つが、今も2ヶ月に1回は理由をつけて、こうして3人で集まっているのだった。
ふたりといると、心が落ち着く。菜月にとっては、唯一無二の仲間だ。
乾杯するやいなや、「男探し」をしている茜が、いつものように近況を話し始めた。
「聞いて!先週ね、この人とお台場デートしたの」
男性の写真を見せて明るく笑う茜は、相変わらず綺麗。明るい色の巻き髪がよく似合っている。
「茜はあいかわらず楽しそうね。恋愛っていいねえ」
菜月がレモネードに口をつけて微笑むと、茜は不服そうに口をとがらせた。
「菜月。またそんな他人事みたいに言って!」
茜は菜月の全身をまじまじと見て、ため息をつく。
「いつも言ってるけど、菜月みたいな原石がすっぴんメガネでいるなんて、本当にもったいないわ」
そして、明後日の方向を見て、怒ったように言うのだった。
「アイツさえいなければ、菜月はモテモテの人生のはずだったのに」
「アイツ」。そう言われて3人が頭に思い浮かべたのは、同じ男…。
10年前に菜月をふさぎこませた男・トニーだ。
この記事へのコメント
別にメガネかけていても美人な人は美人だし。どう変わって行くのか、期待ですね。
あと二股男もクズだよね。菜月にトラウマ持たせるって何してくれるんだよ。