Miss 東大生ハンター Vol.2

東大卒の真面目なキャリア官僚。でも週末、彼はスーツを脱ぎ捨て意外な趣味に…

結婚するなら、こんな人?


「桜子さん、ですよね?今日はよろしくお願いします」

27階の『春秋 溜池山王』で拓哉と対面した桜子は、瞬時に彼の全身に目を走らせる。

黒々とした短髪にべっ甲柄フレームの眼鏡。飾り気のない白いシャツ。腕には日本製のシンプルな時計が光っている。

― よかった。決しておしゃれじゃないけど、変な人ではなさそう。

ひとまず安堵し、「こちらこそ、よろしくお願いします」と愛想よく微笑んだのだった。


「じゃあ、拓哉さんは慶一郎さんと、就活で知り合ったんですね」

「ええ、民間企業も少し見ていたので。彼とは今でも時々飲みに行くんですよ」

席について乾杯すると、お互いに簡単な自己紹介を済ませた。拓哉は見た目に違わず、生真面目ながらも穏やかな話しぶりだ。

金目鯛と舞茸の養老蒸しの優しい口当たりを楽しみながら、桜子は内心、ほっと胸をなで下ろしていた。

― 慶一郎が色々言うからつい警戒しちゃったけど、普通の人みたいでよかったわ。

“ミス・東大生ハンター”の桜子といえど、東大なら誰でもいい、というわけではない。

真面目すぎてコミュニケーション能力の低い男や、逆に高すぎて過度にチャラチャラした男。

求めるのは、芯の部分は真面目でありながらも、適度に社交的で、将来性のある男。テニスサークルに入っていた学生時代から、それは変わらない。

「桜子さんは、どんな男性がタイプなんですか?」

「え?タイプ、ですか?えっと…」

不意の質問に、桜子は口ごもった。どんな回答をすべきか、頭をフル回転させる。

― 拓哉さんは、正直言ってタイプって感じじゃないわ。少し堅すぎる印象かも。でも結婚となれば、こういうまっすぐで嘘のなさそうな人がいいわよね。

熟慮の末、桜子は拓哉に寄せて答えることにした。

「そうですね…真面目で堅実なタイプの男性、かしら」

すると計算通り、彼はまんざらでもなさそうな表情で「なるほど」とうなずいた。しかし何か言いにくそうに、少し目を泳がせる。

「ちなみに、僕の方なんですが…コレを理解してくれる人がいいなと思ってまして」

差し出されたスマホに映る動画を見て、桜子は驚いた。

「こ、これ…どれが拓哉さん…ですか?」


アニマルヘッドをかぶった4人組が、バンド演奏をしている。クマ、にわとり、シマウマ、モグラと脈絡のない取り合わせが珍妙だが、真剣に演奏をしている様子だ。

拓哉は、「僕はシマウマです」とつぶやく。

「僕、この格好で毎週末、演奏に出かけていて。それで彼女とモメて、別れたこともあるんです。『シマウマがダサい』とか、『もっと私との時間を取って』とか。桜子さんはこういうの、大丈夫ですか?」

「えっと…そうですね」

桜子は、またも適切な返答を検討しなければならなくなった。先ほど「好きなタイプは?」と質問された時の倍速で思考を巡らせる。

― これは、言わば踏み絵。『受け入れられないなら、次はない』ってことよね。このくらい許容範囲だわ。あと、この音楽ってたしか…。

頭の中を整理すると、桜子は一言ずつ、慎重に回答した。

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