夏を美味しく乗り切る! ちょいゴージャスな料理たち Vol.5

夏を美味しく乗り切る! ちょいゴージャスな料理たち

焼尻プレ・サレの味わいを閉じ込め、充満させたひと品。すっきりと雑味のない仔羊肉にほんの少しの藁の薫香がよく似合う。脂部分の焼けた香ばしさもお見事。仔羊の味を隅々まで堪能して。¥5,600

野菜や魚介類に旬があるように、肉にも季節の味がある。「これからの季節はまさに“仔羊の旬”。仔羊は初夏からが旨い!」

そう顔をほころばせるのは銀座で本物の味を追求し続けている『レディタン・ザ・トトキ』の十時亨シェフ。羊料理に定評があり、自身も羊を愛してやまないシェフが選んだ肉、それが「焼尻プレ・サレ」である。

「そもそもプレ・サレとはフランス・ブルターニュ地方の海岸で、潮風の塩分を豊富に含んだ牧草を食べて育った羊のこと。プレは草原、サレは塩という意味です。欧州最高峰と言われ、私も長い間、仔羊はブルターニュのプレ・サレしか使わないと決めていました。でも、焼尻プレ・サレに出合ってから、夏の仔羊肉料理はこちらを使うことに。毎年待っていてくれているファンも多いです」

北海道の北西にある焼尻島は、ブルターニュと同じく緯度が43度。起伏が少ないゆるやかな丘陵地帯が広がり、ブルターニュの海岸と同じように海風が通る牧草地になっている。さらに、島にはキタキツネやヘビなどの敵もいないので羊たちはストレスなく暮らし、出生率も世界トップクラスなのだそうだ。

「焼尻島の羊は10月に交配し、2月に子供が生まれます。だいたい2~3月が、母乳しか飲んでいない“アニョ・ド・レ”。これもミルクの香りがしてとても美味しい旬の味ですが、4~6月くらいは少しずつ羊らしい風味が出てくるんです。羊が好きな人なら香りの強い6~10月くらいも旬といえますね」

もも肉を縛り、たっぷりのにんにくとアンチョビでロースト。固くなりがちな仔羊のもも肉だが、これは「噛んでも噛んでも肉汁が出てくるジューシーさ」とシェフ。焼いた油と肉汁のソースで。¥4,

ゆったりとしたカウンターでいただくフレンチは貴重だが、8月には大規模改装の予定。コースは夜¥9,450 ~。ランチにはハンバーグやカレーも登場。

肉自体を見せてもらうと、まず色が鮮やか。ピンク色がパッと明るく、脂も少しだけピンクがかっていて、全体的に張りがあって美しい。「ひと目見て『これは全然違う』と思いましたね。もう15年以上使っていますが、今でも届くたびに『きれいだな』って思う」

では、「仔羊は夏の食べ物」と言い切る十時さんはどんなふうに仔羊を料理するのだろう。

「できるだけシンプルにいきたいと思いながら料理します。焼尻プレ・サレが持つ豊かな香りとか、噛み締めると出てくる美味しい肉汁を味わってほしいと思うと、どんどん削ぎ落とされていくんです」

たとえば「焼尻島産仔羊ロース肉の藁包み焼き」は、表面の脂だけ焼き付けたラムのロースを小麦粉と塩、刻んだ藁で作ったものですっぽりと包み、じっくりと火を通す。

藁が焼けて出るほんのりとした薫香が仔羊にも付き「仔羊独特の香りといぶされたような香り。合わさるとバニラのような甘い香りになるんですよね」とシェフ。藁から取り出したらもう一度焼き、仔羊から出たジュースでソースを作る。付け合わせなどはなく、それだけ!

素材を見る目と技術に自信がなければできない直球勝負のひと皿。この夏、一度は出合っておきたい肉界の旬の味だ。

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