
~退屈をなくすために必要なのは没頭。テクノロジーの力で既存の体験をより価値のあるものへ~
令和のニューリーダーたちへ
1997年、京都でウェブサイト制作の個人事業として誕生したワントゥーテン(1→10)。
「1」という課題を、アイデアと技術で「10」にアップデートするという意味が込められている。その決意のとおり、ワントゥーテンはこれまでに誰も体験したことのない作品を次々に生み出してきた。
たとえば羽田空港に隣接する「羽田イノベーションシティ」に出現した「羽田出島」は、演者によるパフォーマンスに仮想現実を掛け合わせて“開国しなかった日本”というifの世界を体験できる。
このほか歌舞伎俳優・市川海老蔵さんの舞踊に、没入型のリアルタイムの映像演出が混ざり合うライブ配信「Earth & Human」やスポーツとテクノロジーを融合させた「サイバースポーツ」など。
ワントゥーテンを率いる澤邊芳明社長のこれまでの歩みを振り返りながら、アイデアの源泉と原動力を探る。
金丸:今日は株式会社ワントゥーテンの澤邊芳明社長をお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
澤邊:こちらこそ、お招きいただき光栄です。
金丸:本日の対談の舞台は「パークハイアット 東京」の『梢』です。40階という高層から東京の景色を楽しみながら、趣向を凝らした日本料理を召し上がっていただければと思います。
澤邊:ありがとうございます。お料理も楽しみです。
金丸:まず澤邊さんから読者に、ワントゥーテンについてご紹介いただけますか?
澤邊:われわれの会社は、「近未来を実現するクリエイティブ集団」と名乗っていて、事業としてはクリエイティブコンサルティング、テクノロジーソリューション開発、プロダクト・サービス開発、そして、ウェブサイトをはじめ、広告企画やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などのコンテンツプロデュースという4つの領域で展開しています。本社は京都にあり、東京のほかにシンガポールや上海にも拠点があります。
金丸:最近では歌舞伎にもかかわっているそうですね。
澤邊:市川海老蔵さんたちと、オリンピック関連の文化イベントに登壇することになったのがきっかけで、5年ほど前からお付き合いがあって。2018年には海老蔵さんが出演する歌舞伎に、プロジェクションマッピングを取り入れる演出も行いました。
金丸:会社の規模はどのくらいなのでしょうか?
澤邊:従業員は120人くらいです。ここ10年は広告代理店から転職してくる方が多かったですね。広告代理店の従来のアプローチと違い、われわれはテクノロジーを武器に商品開発の上流から入っていくので、そういった点に魅力を感じてくれたようです。
金丸:ソフトバンクのPepperの開発にも参画されたとか。
澤邊:Pepperの言語エンジンの大部分は、ワントゥーテンが開発しました。弊社にとっては大きな転機で、2000年代まではウェブサイトの制作がメインでしたが、AI開発の分野に進出するきっかけになりました。
金丸:先端分野にいるということは、それだけで大きな武器になると思います。IT業界はちょっと歩みをとどめるだけで、これまでのポジションが保障されない業界ですから。
澤邊:そうですね。技術が陳腐化するスピードが速いので、社内でも先端的な技術の研究を絶えず行っています。
金丸:今日は澤邊さんのこれまでの人生を伺いながら、テクノロジーの進化や日本の行く先についても考えたいと思います。どうぞよろしくお願いします。