2021.08.20
SPECIAL TALK Vol.83会社の評価が境遇を上回るまで、障害を隠し通すことを決めた
金丸:起業したあと、事業は順調にいきましたか?
澤邊:おかげさまで。当時は小さい会社でも「なんかよくわからないけど、ホームページを作らなきゃ」みたいな空気がありましたからね。僕は一般的なコーポレートサイトよりも、表現力豊かなものを作りたかったし、いいものを作れば話題にもなったので、仕事は順調に増えました。ただ起業した直後は、僕も営業として表に出ていたこともあって、京都大学附属病院や徳洲会病院といった病院関係からどんどんお仕事をいただいて。
金丸:クライアントとしては手堅いですが、表現力豊かなサイトが求められるかというと……。
澤邊:そうなんですよ。もちろん、発注いただくのはありがたいのですが、評判が広まるうちに、気がついたら半分以上が病院系のサイトになり。「ちょっと待てよ、自分の境遇と関係ないところで、実力で勝負したかったのに。これはまずいぞ」と。
金丸:そうか。「自分は障害者じゃない」と思い込もうとした、という話でしたね。
澤邊:だから「もう表に出ない」と決めたんです。
金丸:車椅子であることを隠していたというのは、そういうことだったんですね。
澤邊:その後はクライアントからひたすら逃げる日々でした。「会食に行きましょう」と誘われたら、「そうですね!」と答えつつ絶対に行かないという(笑)。「メールは返ってくるし、電話ではお話しできるけど、対面では会えない。澤邊さんって本当にいるんですか?」と疑われるまでになって。
金丸:「バーチャルなのか?」と。時代を先取りしてますね(笑)。
澤邊:下手したら、10年ぐらい会っていないクライアントもいましたよ。会社のウェブサイトには僕の顔写真は載せていたけど、車椅子という情報は出していなかったし、ググっても一切出てきません。
金丸:そこまで徹底されていたんですね。
澤邊:「社長が車椅子の会社だから頼もう」は違うし、社員にしても病院系のウェブの仕事がしたくてワントゥーテンに入ったわけじゃない。車椅子であることを隠さなくなったのは、企業としての実績ができ、会社の評価が自分の境遇を上回ったと感じたからです。ここに至るまでに、15年近くかかりました。
金丸:そして現在は、AIやVRなど最先端テクノロジーを活用したクリエイティブな事業を展開されています。
澤邊:もともと技術も芸術も好きだったとお話ししましたが、それに加えて、怪我をしたことも事業領域の拡大に関係しているように思います。
金丸:とおっしゃると?
澤邊:僕は身体の動きがある表現とか、技術開発がやたらと好きなんです。無意識のうちに、怪我をして失った部分を埋めようとしているのではないかと感じています。今のところ、われわれのコンテンツは体を動かして体験するものが多く、僕自身は体験できないというジレンマがあるのですが。
金丸:なるほど。動けなくなったからこそ、体を動かすことへの関心が一般の人よりも強く、それが武器になっていると。でも事業を展開するうちに、そこで生まれた技術が澤邊さんご自身にも還元される日が来るかもしれませんよ。
澤邊:僕は、僕自身を改造したいと思っていますからね(笑)。それにデジタル技術が進んでいくと、より身体的な機能のバリア、つまり障害はなくなっていき、結局最後は、脳内活動、知的生産の部分だけが残るんじゃないかと。
金丸:ロボットだって、今は一つひとつ指示する必要があるけど、近い将来、こちらが考えただけでその通りに動くロボットがきっと現れるでしょうね。
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