SPECIAL TALK Vol.83

~退屈をなくすために必要なのは没頭。テクノロジーの力で既存の体験をより価値のあるものへ~

東京生まれの奈良育ち、古墳にロマンを感じた少年時代

金丸:早速ですが、ご出身はどちらでしょう?

澤邊:生まれてから5歳までは東京にいましたが、そのあとは高校まで奈良、大学からは京都で、京都工芸繊維大学という国立大学に。なので、もう関西人ですね。

金丸:私は生まれたのが大阪の枚方市ですから、ご近所さんですね。澤邊さんはどんなお子さんだったのですか?

澤邊:勉強は嫌いでした(笑)。

金丸:私もです(笑)。学校に面白い先生がいなかったので。

澤邊:もちろん好きな先生もいましたけど、覚えるだけの勉強をさせる先生の授業は、退屈でしかなかったですね。

金丸:最近はYou Tuberの授業を見て勉強する子もいるそうですが、芸人のような人が算数や理科を教えたら、もっと勉強が好きになる子どもが増えるんじゃないかと思います。

澤邊:実は今、まさにそこに取り組んでいまして。感覚としては、ゲームなんだけど、いつの間にか勉強できているという。

金丸:それはいいですね。ところで、スポーツは何かされていましたか?

澤邊:小学2年生から中学3年生まで、少林寺拳法を頑張ってやってました。

金丸:何がきっかけで始めたのですか?

澤邊:男子なので、「なんとなく強くなりたい」という願望があるじゃないですか。たまたま近所に道場があったので始めたんですが、結構強くて、近畿7府県の代表にもなりました。

金丸:それはすごいですね。

澤邊:当時はそれこそ『ドラゴンボール』のクリリンのように、丸坊主で。あとは水泳やテニスも多少はやったけど、一番夢中になったのは、古墳です。

金丸:古墳ですか!?

澤邊:奈良って古墳がいっぱいあるんですよ。

金丸:もちろん知ってますよ(笑)。それこそ、私も小学校の遠足で行きました。

澤邊:祖父が小さい山を持っていて、そこに古墳があったんです。2年生の頃、そこから出てきた耳飾りのようなものを祖父からもらって。

金丸:個人所有の山に古墳があるというのが、いかにも奈良ですね。ロマンを感じます。

澤邊:ちょうどその頃、映画の『インディ・ジョーンズ』が流行っていて、奈良にも亀石や酒船石のような、誰が何のために作ったのかよくわからない遺跡がたくさんあって。それについて考えるのが、謎解きのようで、すごく楽しかったですね。

金丸:今もお好きなんですか?

澤邊:はい、いまだに好きです。毎晩、弥生時代についてのYou Tube動画も見ています。老後は弥生時代の研究をしたいですね。僕にとっては、弥生時代以降は「新しい」と感じちゃう(笑)。

金丸:澤邊さん自身は時代の最先端にいるのに、“弥生時代以降は新しい”という感覚は面白いですね(笑)。

大学入学が決まった春。人生を一変させる障害を負う

金丸:ところで、私は澤邊さんが車椅子だということは存じ上げていたのですが、手足がまったく動かないというのは初耳でした。

澤邊:無理もないです。車椅子であることすら、10年くらい前まで、ずっと隠していましたから。右手の一部がほんのちょっと動くのですが、障害を負ったのはバイク事故が原因です。

金丸:事故からどのくらい経っているんですか?

澤邊:1992年ですから、もうすぐ30年ですね。18歳のときでした。大学入試が終わって合格して、まもなく入学式という4月1日でした。友人のバイクの後ろに乗っていたら、横転してしまって。運転していた友人は後遺症もなかったのですが、まさか自分が障害を負うことになるとは思いもしませんでした。

金丸:首を負傷されたのですか?

澤邊:7本ある頚椎、つまり首の骨のうち、4番目を脱臼しました。映画『スーパーマン』の俳優、クリストファー・リーヴも僕と同じ部位を損傷しています。頚椎は部位によってどんな障害が起こるか決まります。7番目だと腕も動くのですが、1〜3番目だと、呼吸ができなくなって即死です。

金丸:少し間違えば、即死する危険すらあったんですね。

澤邊:そうですね。頭に異常がなかった代わりに、首に衝撃が来たんでしょうけど。

金丸:でも大学に入ってこれからという時期、人生でも一番元気な18歳で事故とは。

澤邊:救急病院に運ばれ、意識はあるのに1ヶ月ぐらい完全に寝たきり状態で。その後、2年半で4つの病院を転々としながら、ずっとリハビリをしていました。

金丸:ただ、頚椎のような部分は一度損傷してしまうと……。

澤邊:そう、治らないんですよ。だけど僕は「絶対に治る」と思っていて。実は入院して1ヶ月くらいで、先生から「もう一生このままです」と言われたんですが、それまでピンピンしていたのに、「そんなわけないだろう」と。

金丸:「努力すれば治るだろう」と思ったんですね。

澤邊:だから、リハビリに定評のある病院に行って、めちゃくちゃ頑張って。でも、どれだけやっても、まったく効果が出ない。

金丸:それは、神経が切れているからなのでしょうか?

澤邊:いや、僕の場合は骨折ではなく脱臼だったので、MRIで見ても、神経はつながっています。ただ、脊髄ってちょっと衝撃を受けただけで、かさぶたのような跡が残って電気信号が通らなくなり、神経としての働きを失ってしまうんです。

金丸:そのかさぶたを治すことは、できないんですか?

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